2019年。結成50年周年を迎えた頭脳警察の活動が活発になっている。「真っ先に世の中から抹殺されてもおかしくなかったのに、なぜかここまで生き長らえてしまった」と PANTA 自身が最近のライブでもよく口にしている通り、頭脳警察には暴力的で過激なイメージがつきまとう。
1969年に結成した頭脳警察は、1972年3月に1stアルバムが発売禁止、同年5月には2ndアルバムが発売1ヶ月で自主回収、同年10月の3rdアルバムがやっと何事もなく発売されるという多難のスタートをした。その頭脳警察が50年後の今も活動している。
確かに、過激さだけではとっくの昔に抹殺されていただろう。でも、僕は頭脳警察にはその過激さと同等、いやそれ以上に聴き手を包み込むような優しさや誠実さを感じてしまうのだ。それこそが50年の長きに渡り活動を続けている頭脳警察の魅力なのではないだろうか。
発売禁止になった1stアルバムに収録された「世界革命戦争宣言」にすらそれは感じられる。僕には人間愛の歌にしか聴こえない。ヒューマニズムに溢れたバラードだ。
頭脳警察解散後、PANTA はソロ活動と並行して、石川セリ、岩崎良美、堀ちえみ、チェッカーズ、ビートたけしなど、ロックというジャンルに限らず様々なアーチストに楽曲を提供している。当然、そういう人たちに過激な曲を提供するわけもなく、それどころか女性目線の歌詞も多く、PANTA のオタクな一面を垣間見れて面白い。
PANTA が提供した楽曲の中で最もシビれたのが、1991年に発売された沢田研二のアルバム『パノラマ』に収録されている「月の刃」で、人間愛どころか神の領域にまで行ってしまったように感じる曲だ。
おまえの月の刃になら
この胸を突き刺されてもいい
キリストか! この曲を初めて聴いたのは PANTA 自身の弾き語りで、背筋を伸ばして、息をするのも忘れ、宇宙の果てにぶっ飛ばされた感覚になったのを覚えている。歌が終わった途端に「もう一回歌ってくれ〜」と叫んだことも。
沢田研二の武道館コンサートを収録した DVD『ジュリーマニア』では1回目のアンコールの最後にこの「月の刃」が歌われていて、沢田研二自身もこの曲を気に入っていたことがうかがえる。
昭和から平成に元号が変わった時、頭脳警察は再結成をした。そして、平成が終わり、新しい時代を迎えようとしている今、平成生まれの親子ほど歳が離れた若者をメンバーに迎え、新生頭脳警察が動き出した。頭脳警察の若返りを期待する気持ちは全くないが、過激さと誠実さ、そこに「健康」を加え、さらに50年、生き長らえて欲しい。
2019.03.22
Apple Music
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