6月11日

梅雨に聴きたい「あじさい橋」城之内早苗はおニャン子クラブで異彩を放った演歌少女

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会員番号17番、城之内早苗はおニャン子クラブで異彩を放った演歌少女!

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会員番号17番、おニャン子メンバーとなった城之内早苗


1985年4月にスタートしたフジテレビ『夕やけニャンニャン』から生まれたアイドルグループ「おニャン子クラブ」。当初は前身となった番組『オールナイトフジ 女子高生スペシャル』の出演者を中心に構成され、番組スタート後は「ザ・スカウト アイドルを探せ!」というオーディションコーナーの合格者でメンバーを増やしていった。そこで番組開始から間もない5月に見事合格しておニャン子クラブの会員番号17番となったのが、城之内早苗だった。

1968年5月17日、茨城県神栖市生まれ。幼少の頃から民謡と三味線を習い、中学2年の時に東京12チャンネル(現・テレビ東京)と CBSソニー(現・ソニーミュージック)主催による『全日本演歌選手権』にエントリー。1984年には生まれ故郷のご当地ソング「神栖町民音頭」(作曲・寺内タケシ)をレコーディングしている。ただしこれは関係者への頒布のみのプライベート盤であった。

演歌として初のオリコンチャート初登場1位を獲得


その翌年、おニャン子クラブの一員になったことで一気に表舞台へ。演歌が得意という変わった経歴で独特な存在感を放ち、全員が参加した「会員番号の唄」でも “日本の心は演歌です” とコブシを回して歌の上手さをアピールしている。メンバーからは “お城(おじょう)” と呼ばれていたとの由。ちなみに仲が良かったメンバーは、たしか河合その子だったはずだ。

その河合その子が1985年9月にソロデビューしたのを皮切りに、グループからのソロデビューやユニットデビューが相次ぐ中、うしろゆびさされ組、吉沢秋絵、新田恵利、国生さゆり、ニャンギラス、福永恵規に続いて、城之内も1986年6月11日に「あじさい橋」でソロデビューを。

演歌としては初の、オリコンチャートで初登場での1位獲得曲となったが、演歌といっても、かつての小柳ルミ子「わたしの城下町」のような、叙情歌謡の路線が図られたことは明らか。作詞の秋元康と作曲の見岳章は、この2年後に美空ひばり「川の流れのように」を生み出すコンビである。題材こそ演歌っぽいが、「あじさい橋」はメロディもアレンジも洗練された歌謡ポップスといえる。

おニャン子卒業後は、本格歌手として演歌道に邁進


「あじさい橋」をヒットさせた後、11月に出されたセカンドシングル「流氷の手紙」の作詞は引き続き秋元康、作曲は後藤次利が担当。アレンジを手がけた若草恵によって、前作よりも演歌色の濃い仕上がりとなったが、それと対照的にカップリングの「代官山恋物語」はポップス寄りで、ダブルジャケットの片方にも洋装の写真が使われた。

当時、都内でも最もお洒落なスポットのひとつだった代官山を歌の題材にしておこうという秋元康の意図が窺われる。演歌とのカップリングでギャップを狙ったのもあるだろう。正直、B面の方はあまり話題にならなかったものの、「流氷の手紙」は『夕やけニャンニャン』内でも歌われてヒットした。



おニャン子卒業後に本格化した歌手活動で演歌道を邁進して実績を重ね、1993年には森高千里のアルバム曲のカヴァー「酔わせてよ今夜だけ」がロングヒットに。翌年の第27回日本有線大賞有線音楽優秀賞を受賞している。

これからのシーズンにぴったりな「あじさい橋」


さらに2012年には「松山しぐれ」で藤田まさと賞を受賞、ソロデビューから30周年を迎えた16年には第58回日本レコード大賞の日本作曲家協会選奨を受賞するなど、今や押しも押されもせぬ演歌界の大御所となった。おニャン子卒業生では、シングルリリースの実績は工藤静香に次ぐ枚数であるが、これまでにこなしてきたステージの数ではおそらく一番なのではないだろうか。



最初に城之内早苗の名前を聞いた時、巨人ファンの自分が思い浮かべたのは、V9時代に活躍した “エースのジョー” こと城之内邦雄投手のことであったが、珍しい苗字だけあってやはり親戚だそうで、早苗にとって大叔父にあたるとのこと。さらに邦雄の兄夫人の弟が地井武男という血縁関係もあるそうだ。

ところでおニャン子のメンバーだった当時のプロフィールの趣味欄には “ジグソーパズル” とあるのだが、わりと最近のプロフィールを見ると、趣味の “手芸” や “三味線” と並んで、ハマっていることに “段ボールを切る” というのがあって非常に気になる。手芸などに必要なものなのか? あるいはパズルを組み立てることに飽きて、今度は解体する作業が趣味になってしまったのだろうか。ともあれ、「あじさい橋」を聴くのにぴったりなシーズンは間近に迫っている。今年の梅雨時は久しぶりに鎌倉の明月院を訪ねてみたい。

※2019年5月17日、2021年5月17日に掲載された記事をアップデート

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2023.06.20
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カタリベ
1965年生まれ
鈴木啓之
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