ミュージシャンだって、親バカになる。それはいい。ただ、そんな親バカぶりをステージ上でも発揮させるとなると、話は別だ。
2015年10月、ポール・ウェラーの横浜ベイホールでのライブは、私を複雑な気持ちにさせた。ウェラーの長女と次男がステージに登場したからだ。まだローティーンの次男がドラムをたたき、アンコールでは長女のリアがウェラーと一緒に歌った。なぜ? なぜ、ウェラーは我が子をステージにあげたの?
ポール・ウェラーは私のヒーローだ。15歳のときに彼のファンになってから、30年以上の歳月が過ぎた。その昔、「子供は欲しくないのでパイプカットしたい」と言ったウェラーは、2015年の時すでに7人の子持ち。リアとは、アパレルブランドのCMで共演までしている。
おまけに冒頭、「レディース&ジェントルメン! ミスター ポール・ウェラーです」とかなんとか言って、ウェラーを紹介した謎の日本人男性がリアの彼氏だと、のちに知る。
ライブ自体はよかったのだが、娘、息子、娘の彼氏まで登場したせいで、私はなんだかモヤモヤ。この仲良しファミリーを微笑ましいと思えない私は、心が狭いのか。子煩悩でもいい。若い妻とラブラブでもいい。娘とCM出たっていい。ただ、ライブには家庭を持ち込まないでほしい。特にウェラーに対しては、そこ切実。
そんなわけで、2018年1月、3年ぶりのウェラー来日も、すんごく楽しみってわけじゃなかった。また、娘や息子をステージにあげたらどうしよう。どうもしようがないのだが、またやられたら、私のウェラー愛はほんのりしぼむだろう。
だが、そんな心配は不要だった。今回のライブ、一言で言い表すと、まさに実直。あの、まっすぐで真摯なポール・ウェラーがそこにいた。
もちろん、息子も娘も娘の彼氏も出てこない。ついでに言うと、前回の来日時、せっせと夫妻のラブラブぶりをツイッターに投稿していたウェラーの若妻ハンナも、今回は来日しなかったようだ。
ジャム、スタイル・カウンシル、ソロとやってきた自身のキャリアを総括したようなセットリストも素晴らしい。中でも、久しぶりにライブで聴いて、印象的だったのが、スタイル・カウンシル時代の曲「シャウト・トゥ・ザ・トップ」。たしか、歌詞に出てくる “Top” は、権力者のことだったはず。権力者や体制に向かって叫ぶ “Angry Young Man” だったウェラーを彷彿させるこの曲は、ファミリーが登場するようなライブで歌われても何だかシラケるが、今回はしみる。
深いシワ、光り輝く銀髪。前より少しだけ、お腹出てきたかな。でも、ポール・ウェラーはやっぱりポール・ウェラー。私のヒーローだってことを思い出させてくれた。
それにしても、ウェラーの長男ナットは、こんなカッコいいモッドファーザーが父親なのに、なんでモッズじゃなくビジュアル系なんだろ。そこはどうにも解せない。
2018.02.16
YouTube / theaceface
YouTube / TheStyleCouncilVEVO
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