手元に1本のカセットテープがある。書いてある文字は、1985年10月31日 日本青年館 DRAGON THE FESTIVAL TOUR。そう、TM NETWORKの初めての本格的なツアーを録音したものだ。
日本青年館のキャパは1400弱とその頃あった都心のホールではもっとも小さく、ここでやることはすなわちライブハウスを卒業した証だった。
残念ながら私は見には行けていない。当時の事務所の方がライン録りしたものをくれたのでありがたくいただいた。
Openingは神秘的なインストゥルメンタル。1曲目は「DRAGON THE FESTIVAL」だ。若き宇都宮隆の声がバラバラと降ってくる。2曲目は「カリビアーナハイ」で、「RAINBOW RAINBOW」と続く。笑顔で耳に手を当てるしぐさが見える。
「DRAGON THE FESTIVAL TOURへようこそ! 今日は思いっきり歌ったり踊ったり、金色の夢を一緒に過ごそうよ! オーライ?」
客席で録ったものではないので歓声はMC時にしか聴こえてこない。最後は「アクシデント」~MC~「ELECTRIC PROPHET (電気じかけの予言者)」~Endingという終わり方をする。私の好きな「YOUR SONG」はやっていない。アンコールはなし。それが決まりだった。金色の夢は覚めたらそこで終わりなのだ。
85年のTM NETWORKは前途洋々だった。ニューロマ直系の小室哲哉と宇都宮隆。デュランデュランで言えばニック・ローズとサイモン・ル・ボン(ロッド・スチュワートやポール・ヤングの面影もある)。第三の男として取材などには出てこない木根尚登は、この後パントマイムなどで場を広げていく。
クラシックとグラムロックとブラックミュージックをルーツに持ち、クールな頭脳とパーカッシヴなキーボード。いつも微笑んでいた記憶があるボーカリストの、その華とステップ。地球に落ちてきた謎の生命体が音楽を発見し、やってみることにした、というストーリーがデビュー当時にはあった。
駆け出しのポップスターと恋に落ちるのは簡単なことだ。女の子たちの嬌声が彼らを加速させる。明けて86年、TM NETWORKはひとつの造語を提示する。
FANKS。その意味を知りたければ一歩踏み出すだけでよかった。彼らはすべて準備してくれていたのだ。
2017.08.29
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