7月21日

質実剛健!硬派を貫き通す稀有なヘヴィメタルバンド ー アンセム

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アンセムのアルバム「アンセム~パワーメタル戒厳令」がリリースされた日
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photo:Discogs  

隔回で80年代に勃発したジャパニーズメタルムーブメントを取り上げているが、思えばジャパメタシーンは当初「西高東低」が顕著だった。

関西圏からはアースシェイカーをはじめ、44マグナム、マリノなど数多くの個性的でレベルの高いバンドが次々と輩出された。そんなバンド達が集結して東京に乗り込み『関西ヘヴィメタル殴り込みギグ』なんていう、物騒なタイトルのイベントも開催されていたほどで、関東のバンド達は押され気味に見えた。

そうした状況下で、関東勢の意地を見せたのがアンセムだ。彼らを知らしめたのは84年、関東のメタルバンドを中心としたコンピレーションアルバム『ヘヴィ・メタル・フォース』への参加だった。1曲目に収録された「ワーニング・アクション!」は、2バスの連打で押しまくる徹頭徹尾のメタルチューンで、コアなメタルファンの注目を集めることになる。

このアルバムは木箱に収められた特殊ジャケットで地方では入手困難であり、僕のアンセム初体験は85年のデビュー作『アンセム~パワーメタル戒厳令』を待つことになる。当時のジャパメタシーンでは、作を重ねる毎にメタル色を薄めた方向性にシフトするバンドやルックス的に女性にアピールできるバンドも意外と多かった。

しかし、アンセムはその真逆で、荒削りながらマグマが噴出するかのような熱いサウンド。男が思わずヘッドバンギングしたくなるギミック一切なしのパワーメタルだった。俺たちはメタルだ! といわんばかりのワイルドな風貌も魅力的に映った。

当時の洋楽のメタルシーンでは、デビューしたばかりのメタリカやアンスラックスなど、より激しくスピード感のあるメタルが徐々に浸透し始め、アクセプトなど硬派なメタルも支持を集めていた。

そうしたバンド達にハマっていった僕にとって、アンセムのパワーメタルは彼らと同様、いやそれ以上に新鮮な衝撃を与えてくれたのだった。また、関東にも関西勢に負けないバンドがいるという事実を教えてくれ、実際にサブラベルズやリアクションといった関東の優れたバンドに注目が集まるきっかけもつくった。

アンセムに一発でKOされた僕は、デビュー直後のライヴに向かった。地元北九州のライヴハウスにはわずか50人程度の観客しかいなかったが、彼らはそんなことはお構いなし。最前列にいた僕は、物凄い音量と音圧で繰り広げられる激しいパワーメタルとパフォーマンスに終始圧倒されていた。

初々しさの中に可能性を感じたヴォーカルの坂本英三、華やかなスター性を持ったギタリストの福田洋也、すでにリーダーの存在感を放っていたベースの柴田直人、そしてネーミング通りの野性的なドラミングで度肝を抜いた大内 “MAD” 貴雅の4人が繰り広げるステージングを見て、日本にこんな凄いメタルバンドがいるなんて! と驚きを隠せなかった。

洋楽のメタルバンドになかなか生で接する機会が少ない地方のメタルファンに対し、彼らは過酷なツアーを通じて本物のヘヴィメタルを間近でライヴ体験させる貴重な機会を与えてくれていたのだ。

86年、彼らは畳みかけるようにセカンド作『タイトロープ』をリリース。発売前後に全国各地でツアーを敢行し、再び同じ会場で彼らを見たときには入りきれないほどの観客が押し寄せ、実力に相応しい人気上昇ぶりを目の当たりにしたのだった。このラインナップで87年には『バウンド・トゥ・ブレイク』を発表。彼らは日本を飛び出し、アメリカ西海岸でのライヴも行うことになる。

その後、途中に解散期間を挟みメンバーチェンジを繰り返しながらも、今年で結成30年以上、今もライヴにアルバム制作にと精力的に活動を続け、日本のメタルシーンの最前線で活躍していることに敬服するばかりだ。あの80年代の華やかな空気に喝を入れるように、ライヴや初期3枚の名盤を通じてアンセムが与えてくれた新鮮な衝撃を、これからも忘れることはないだろう。

2017.11.02
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  YouTube / anthemfreak


  YouTube / carlos cañon
 

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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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