6月21日

絶頂期の夏アルバム!堀ちえみ「プラムクリーク」テクノやニューウェーブに急接近!

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堀ちえみの絶頂期はいつの頃だろうか?


堀ちえみのアイドルとしての活動期間は短い。両A面シングル「潮風の少女 / メルシ・ボク」でデビューしたのは1982年3月21日、15歳になったばかりの頃だった。そして、一度引退し、アイドル活動にピリオドを打ったのは20歳になった1987年のことだ。では、その約5年間において “絶頂期” といえるのはいつ頃だろうか?

レコードセールスのみで考えれば、シングルをリリースするごとにヒットチャートのトップ10圏内に送り込み、コンスタントに10数万枚のセールスを記録していた、1983年の始めから1985年の春頃までだといえる(データはオリコン調べ)。

これは、自身最大のヒットとなった「さよならの物語」(1983年1月)のリリースから、斉藤由貴、中山美穂、本田美奈子、おニャン子クラブらのデビューによりアイドル界の勢力図が大きく塗り替わる直前までということになる。主演ドラマ『スチュワーデス物語』(TBS系)もその期間に放送された。ここで取り上げる『プラムクリーク』は、その絶頂期のど真ん中、1984年6月にリリースされた堀ちえみにとって5枚目のオリジナルアルバムだ。

これぞ、80年代アイドルの夏のアルバム「プラムクリーク」


当時のアイドルはレコード制作において季節感を重視する傾向があった。堀ちえみの場合、前作『雪のコンチェルト』(1983年12月)は “冬のアルバム” だったが、『プラムクリーク』では一転して夏のイメージだ。ジャケット写真の彼女は肌を最大限に露出し、髪の毛を濡らしている。封入された歌詞カードには複数の水着写真が掲載されていた。

近年、80年代アイドルたちが豪華な作家陣、ミュージシャンを擁して作っていた意欲的なアルバムの存在がクローズアップされているが、『プラムクリーク』も再評価の対象になりうる1枚となるだろう。これぞまさに、“絶頂期の80年代アイドルが贅沢に作った夏のアルバム” なのである。そして、このたびリリースされた「40周年アニバーサリー CD / DVD-BOX」にインクルーズされている『プラムクリーク』の収録曲は下記のとおりである。

▶ 収録曲
【LPレコード A面】
01. 52週目のSummer Moon 作詞:田口 俊 / 作曲・編曲:清水信之
02. 裸足のバケーション 作詞:康 珍化 / 作曲:伊藤銀次 / 編曲:国吉良一
03. 稲妻パラダイス 作詞:康 珍化 / 作曲:林 哲司 / 編曲:萩田光雄
04. 私小説 作詞・作曲:伊藤 薫 / 編曲:馬飼野康二
05. 青春のパーティ 作詞:三浦徳子 / 作曲・編曲:清水信之

【LPレコード B面】
06. 意地悪な魔法使い 作詞:森雪之丞 / 作曲・編曲:白井良明
07. 不思議なこもりうた 作詞:吉沢久美子 / 作曲・編曲:白井良明
08. Love O.K 作詞・作曲:山口美央子 / 編曲:清水信之
09. オルフェウスの窓 作詞:田口 俊 / 作曲:林 哲司 / 編曲:萩田光雄
10. 涙をありがとう 作詞:康 珍化 / 作曲:高橋幸宏 / 編曲:白井良明

【+5/ボーナス・トラック】
11. 白いハンカチーフ 作詞:大津あきら / 作曲:網倉一也 / 編曲:矢野立美
12. Lai Lai Lai 作詞:岩里祐穂 / 作曲:岩里未央 / 編曲:鷺巣詩郎
13. 青い真珠貝 作詞:有川正沙子 / 作曲:網倉一也 / 編曲:馬飼野康二
14. 白いハンカチーフ(オリジナル・カラオケ) 作詞:大津あきら / 作曲:網倉一也 / 編曲:矢野立美
15. 稲妻パラダイス(オリジナル・カラオケ) 作詞:康 珍化 / 作曲:林 哲司 / 編曲:萩田光雄

“シティポップ” だけで語れない独特のテイスト


2023年の視点で収録曲を俯瞰すると、いわゆる “シティポップ” とされるカテゴリーに分類されるミュージシャンや、それに近いところで活動していたソングライターが多く関わっていることが分かる。これは、当時のアイドルのアルバムによくみられる傾向だ。

「52週目のSummer Moon」、「オルフェウスの窓」を作詞した田口俊は、1982年に須藤薫、麗美のアルバムより作詞家としての第一歩を踏み出した人物だ。2曲の作曲、3曲の編曲を担当した清水信之は、EPOの代表曲「DOWN TOWN」(林哲司と共同)、「う、ふ、ふ、ふ、」などのアレンジャーである。「裸足のバケーション」を作曲した伊藤銀次は、ナイアガラ・トライアングルへの参加があまりにも有名だ。「稲妻パラダイス」「オルフェウスの窓」の林哲司は、松原みきの「真夜中のドア~stay with me」を手掛けた “シティポップの権化” のような存在といえる。

「Love O.K」を作詞・作曲した山口美央子の名前にも注目したい。彼女は当時、堀ちえみと同じキャニオン・レコード(現:ポニーキャニオン)に所属していた知る人ぞ知るシンガーソングライターだった。その旧譜は長い間、注目される機会がなかったが、2010年代にシティポップの文脈で光があたり、初のCD化が実現している。CoCoのデビュー曲「EQUALロマンス」の作曲者だといえばピンと来る方もいるだろう。

ただ、“シティポップ系ミュージシャンが参加している” という一点で『プラムクリーク』を紹介するのは適切ではない。作品の大きな特徴になっている要素はほかにもある。それは、テクノやニューウェイヴの匂いだ。

このアルバムには上記の面々のほかに、イエロー・マジック・オーケストラ “散開” 後の高橋幸宏、当時はテクノ、ニューウェイヴの方向に傾倒していたムーンライダーズの白井良明の名前もあるのだ。白井が作曲・編曲を手掛けた「意地悪な魔法使い」は、ニューウェイヴを感じるなんとも先鋭的な実験作だ。ノンクレジットながら高橋幸宏がコーラスで参加している(と思われる)「涙をありがとう」は、“これぞ80年代のユキヒロサウンド” と思える曲である。また、山口美央子もテクノ色が強い作家であり、他にもシンセサイザーによる演奏が印象に残る曲が多いのである。

一方で、シングル曲の「稲妻パラダイス」のアレンジはザ・ビーチ・ボーイズ風だったりと、必ずしもすべての楽曲に一貫性があるのではない。また、当時の音楽ファンが「シティポップ系のミュージシャンが揃ったスゴいアルバムだ!」、「『プラムクリーク』はニューウェイヴだ!」と騒いでいた訳でもないだろう。そうした付加価値は、長い時が流れ、それぞれの作家たちがキャリアを重ね、リスナーの音楽を聴く環境が進化したことで熟成されるように高まったのである。



なお、「40周年アニバーサリー CD / DVD-BOX」版では、ボーナストラックとして、シングル「白いハンカチーフ」などオリジナルアルバム未収録曲など5曲が収録されている。「Lai Lai Lai」、「青い真珠貝」は、通常はとりわけ再評価されにくいシングルB面曲であり、お宝発掘の楽しさもある。さらに、これらの楽曲も含め、オリジナル・シングルとオリジナル・アルバム、ライブアルバム、ベストアルバムとして当時発表された全曲がストリーミング配信されている。

80年代の憧れの夏をストレートに描写した歌詞


次に「プラムクリーク」の歌詞に着目しよう。メロディやアレンジはエッジの効いたものだったが、詞は80年代アイドルとして正統派なのである。特にサマーソングはそれが顕著だ。

松田聖子のデビュー曲「裸足の季節」以降、80年代女性アイドルにとって夏といえばビーチリゾートだった。青い空と海、キラキラした砂浜がどこまでも広がる。ビーチサイドには白いホテルやコテージが建ち、遠くにヨットの帆が見える。午後にはスコールがあり、夜空には無数の星がきらめくーー。そんな世界が描かれる。曲の主人公は、そこに恋人と一緒にやって来る。着用する水着としてビキニをチョイスするのがよくあるパターンだ。それは当時、多くの10代の若者にとって、まったく現実的ではなかった。最寄りの海水浴場の風景とはあまりに違った。しかし、いつか体験したい憧れの夏だった。

そして当然のように『プラムクリーク』にも、それがバッチリと描写されている。各曲の歌詞に80年代アイドルのサマーソングにマストなワードが盛りだくさんなのだ。たとえば、「月夜の砂浜」「波の音」「ビキニの紐」「白い砂の上」「海のコテージ」「スコール」「ボートハウス」「ビキニ」「陽焼け」「ハンモック」「潮風」「真夜中の浜辺」といった具合である。きっと、当時を知らない世代でも『プラムクリーク』を聴けば、80年代の “憧れの夏” を感じることができるだろう。


ーー 堀ちえみ全オリジナルアルバム、ストリーミング配信がスタート!
アルバムアーティストとして、高いクオリティのアルバムを発表し続けた堀ちえみ80年代の軌跡をこの機会に存分に楽しんでみては。


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2023.02.12
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