2025年 7月2日

伊藤銀次 × GOOD BYE APRIL 倉品翔【スペシャル対談】前編 〜 カバーソングの極意とは?

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“流行りのシティポップ” の遥か先を行く本物のバンド、GOOD BYE APRILが、1970年代から音楽シーンの第一線で活躍するレジェンド、伊藤銀次を迎え、東京・丸の内のコットンクラブで一夜限りのスペシャルライブを行った(2025年6月24日)。

2011年に結成され、2023年に日本クラウンのPANAMレーベルからメジャーデビューを果たしたGOOD BYE APRILは、この7月2日に配信シングル「リ・メイク」を、さらに7月7日には「Velvet Motel」と「ピンク・シャドウ」のカップリングを8cmCDでリリースするなど、精力的に活動を続けている。ライブでの共演を経て、互いの楽曲や演奏について、またシティポップの名曲カバーの極意など、伊藤銀次とGOOD BYE APRILのリーダー・倉品翔が縦横無尽に語るスペシャル対談の前編です。



GOOD BYE APRILがカバーした「雨のステラ」


―― 今回、コットンクラブで共演することになったきっかけからお伺いします。

伊藤銀次(以下:伊藤):最初はYouTubeで、彼らが演奏する「雨のステラ」を聴いたんです。僕が1982年に作った曲だけれど、彼らの解釈やセンスがとても良くて、すごく爽やかな、今の時代の曲に聴こえました。もちろん自分の曲をカバーしてくれるのは嬉しかったので、彼らに連絡を取りたいと思ったんです。

倉品翔(以下:倉品):僕らが銀次さんのライブに伺い、銀次さんもGOOD BYE APRILのライブに来てくださって、交流がスタートしたんです。

伊藤:彼らと話をして感じたことは、大学の音楽サークルの先輩と後輩みたいな関係だなと思ったんです。だって、世代的には孫とおじいちゃんぐらいの関係でしょ?(笑)。それなのに話が合うのは、そういうことなのかなと。

倉品:ライブまでに準備期間が3ヶ月ぐらいあったので、その間にメンバーでどの曲をご一緒させていただこうか相談して、その時間がすごく楽しかった。逆にライブ当日は、1曲1曲を噛み締めながら演奏していたので、これ1回で終わっちゃうのが寂しい気持ちになりました。本当に幸せな1日でしたね。

伊藤:選曲もアレンジも彼らにお任せしました。“オリジナルの完コピでなく、GOOD BYE APRILの感覚で僕の曲がどう映るのか。そんなアレンジにして欲しい” と伝えてーー。音楽はテクニックも大事だけど、やっぱりセンスなんですよ。リハで合わせた彼らの音はとても気持ちのいいアンサンブルで、僕も衝撃的でした。昔から一緒にやっているバンドのように思えてしまった。



倉品:ありがとうございます。今夜のお酒は美味しそうです(笑)。今回は原曲に忠実にやった曲もありますが、「雨のステラ」や「BABY BLUE」は、僕がイメージした方向性があったので、一度デモを作って、バンドで共有して、そこからディスカッションを繰り返してアレンジしていきました。

伊藤:それは本人たちが意識していようと、していまいと、演奏する人がその音楽について、どう考えているのかが音になって現れているからでしょう。その空気感がすごく良かった。彼らのアレンジは、僕も全然受け入れられる解釈だったし、とっても気持ちよく歌えました。

倉品:それは嬉しいです。

伊藤:一緒にやって思ったことだけれど、このバンドには歌心があるんです。僕もソロ活動は長いけれど、本当はバンドの人間なんです。ソロでアルバムを作っている時も、自分の中ではバンドという意識が強かった。全体のアンサンブルの中に歌が入る感覚というのかな。GOOD BYE APRILの演奏からはそれが伝わってきました。メロディーの意味が感覚でわかっている演奏なんです。そういうバンドって少ないから、その感覚は大事にして欲しいと思う。

倉品:メンバーはみんな歌が好きで、特にそれが顕著なのはドラムの “つのけん” で、自分が歌いたいぐらいの人。彼とは最初、スタジオセッションで出会ったんですが、彼だけ僕の作った曲のコーラスラインを完璧に覚えてきたんです。そういう下地がある上で、バンド自体も15年目に入り、メンバー全員がポップスを目指してやっていこうと決めて、そこから “楽器は歌を支える役割” と意識を共有できたので、歌の演奏になってきたんだと思います。

伊藤:それにしてもこういうコラボレーションはいいよね。日本の音楽って、いつも縦線が繋がってこない。日本の音楽もはっぴいえんどに始まる長い歴史があるでしょ? なのにいつも横の線だけで盛り上がっているだけ。よく “音楽は世代を超える” とか言うけれど、超えられないんだよ!(笑)。でも今回、「雨のステラ」を聴いたら、超えていた。昔作ったメロディーが今の曲になっていた。音楽の魔法だよね。いいメロディーは永遠だから、時代に合わせてどういう解釈でやっていくか。その発想が、日本にはなかなかなかったんです。



伊藤銀次とライブで共演した「こぬか雨」


―― 今回のライブで共演された曲は、「雨のステラ」「こぬか雨」「BABY BLUE」のほか、ファーストステージでは「Sugar Boy Blues」と「風になれるなら」、セカンドステージでは「真冬のコパトーン」と「幸せにさよなら」。いずれも素晴らしい共演でした。特に「こぬか雨」は永遠の名曲だと改めて感じました。

伊藤:「こぬか雨」は、“ごまのはえ” の頃に作った曲です。最初、ガロの「美しすぎて」(1972年)という曲を聴いて “メジャーセブンスの綺麗な曲だなあ” と思って。で、僕にはそういう曲がなかったので、作ってみたのが「こぬか雨」でした。でも、ごまのはえは泥臭いバンドだったので、芸風と合わないからオクラにしていたんです。その後、山下達郎くんと会った時に “こんな曲があるんだ” と聴かせたら “いい曲だね、これシュガー・ベイブでやっていい?” と言われ “うん、いいよ” と。そうしたら、"テンポ変えていい?" と言うので “うん、いいよ” と。“詞も変えていい?” “う、うん、いいよ” みたいな(笑)

倉品:えーっ、そういう理由だったんですか!?

伊藤:でも嬉しかったよ。山下くんは、あの曲のコード進行を気に入ってくれたようだけど、彼はアッパーな曲が好きだから、スローな展開という発想はなかったんだよね。それで歌詞もアッパーな曲調に合わせて変えたかったみたい。元の詞は、ごまのはえが解散して行く先が見えなくなり “前にも後ろにも行けない、自分はどうしたらいいんだろう” という気持ちが書かれているんです。新宿の喫茶店で、窓の外を見ていたら霧雨が降ってきた。「♪ここにはスコールさえもない」というのは、バーッと出ていきたいけれど行けないという、その時の気持ちとリンクしているんですよ。でも山下くんは別の観点で捉えたんだね。

倉品:うーん、面白いお話ですね。

伊藤:あの時、シュガー・ベイブが解散せずに、2枚目のアルバムを出していたら「こぬか雨」は山下くんのバージョンで入っていたかもね。ちなみに、その後にカバーされたEPOのバージョンは、テンポとアレンジが僕のバージョンで、歌詞は山下くんのもの。面白いよね。



大滝詠一の「Velvet Motel」をジャジーにカバー


―― 7月にGOOD BYE APRILがリリースした、大滝詠一さんのカバー「Velvet Motel」は意外な選曲だと思ったのですが。

倉品:西寺郷太さんぐらいで、あまりカバーされてませんよね。僕らは大滝さんの作品が大好きですが、ナイアガラ・サウンドの世界は、ちゃんと表現しないとあの感じにならないから、生半可な気持ちではカバーはできないと思っていたんです。でも今年はトライしてみようとなって、最初は「夢で逢えたら」をカバーするつもりでスタジオセッションしたんですが、どうも中途半端になってしまう。

それこそ大滝さんが歌っているバージョンぐらいのことをやらないとダメだと思い、頓挫したんです。その時、「Velvet Motel」のメロディーにはジャジーなリズムがハマりそうだと急に閃いたんです。リズムパターンも原曲と変えて、その場でつのけんにジャズっぽいドラムを叩いてもらったら、うまくいくかもしれないと。大滝さんの曲はあの世界観をしっかり出すか、全然別の良さを見出すか。どっちかじゃないと出来ないと思いましたから。

伊藤:大滝さんが生きていたら喜んだと思うよ。大滝さんは “そのグループやアーティストに、どんなオリジナリティがあるかは、カバーさせればわかる” と言っていたから。あとはどの曲を選ぶかも重要。大滝さんの曲って、いい曲だからみんなイージーにカバーしようとするけれど、カバーはオリジナルより良くなきゃダメなんだよね。

倉品:本当にその通りです。同じベクトルでカバーしたら、本家の方が聴きたいなと自分でも思っちゃいますから。それじゃあ、やる意味がない。自分たちは2020年頃からカバーをする機会が増えていますが、カバーしていく上で、自分たちなりの良さをちゃんと出していかないといけないと思うようになりました。



時代を超越したエバーグリーンな「ピンク・シャドウ」


伊藤:今回、カップリングでカバーしている「ピンク・シャドウ」も、自分たちの新曲みたいだよね。ブレッド&バターのオリジナルを知っていても、カッコ良く聴こえる。

倉品:ありがとうございます。

伊藤:僕らがやり始めた頃は、こういうリズムを重視した曲ってなかなか受けなくて、やっぱり日本人ってリズムよりメロディーを聴くんだ、と実感してたんです。シュガー・ベイブはリズムが強い曲が多いので、中でも「SHOW」が象徴的だけど、当時の日比谷野音のライブでも、お客さんは踊る曲なのか、聴き入る曲なのか判断つかなかった印象がある。それが解消され始めたのはバンドブーム以降だと思う。今回、GOOD BYE APRILが「ピンク・シャドウ」をカバーしても、かっこいいと思えるようになったのは、この曲が今の時代に合った曲だからだよね。

倉品:それを言うなら銀次さんの曲も、時代を超越したエバーグリーンな曲だからこそ、僕らも昔の曲だと思わずに演奏できたと思います。あと、銀次さんの曲を演奏していて思ったことですが、曲の作りがメロディー展開も含めシンプルなんです。こねくり回す必要がないくらいの強度があるので、むしろ演奏は繊細に、曲の持つムードを活かすセンスが必要だなと思いました。言い換えれば、僕らのセンスが如実に露呈する曲だったので、シビアだなと思っています。

伊藤:それがわかるのってすごいことだよ。僕らの音楽は、歌詞だけじゃなく、演奏も、その“ムード” に参加しているんだから。言葉が演奏の力を借りる部分がある。最近のJ-POPはサウンドでムードを作っていても、歌詞だけで説明する歌が多くなっているよね。でも僕らはそれとは真逆の作り方をしているから。

倉品:でも、僕らはそういう曲が好きなんです。言葉やメロディーで説明しすぎず、余白がちゃんとあって、その余白を聴き手にも感じてもらえるようにしたいんです。

伊藤:いいこと言うねえ(笑)。でもね、それだとヒット曲を出すのが難しくなるんだよ。だから辛抱はいるけどね。だって僕なんてヒット曲といえば『森田一義アワー 笑っていいとも!』の「ウキウキWATCHING」1曲だけ。でもね、1980年代に作ったアルバムはいまだに廃盤にならず手に入る。それは嬉しいことですよ。

倉品:それは、銀次さんの曲に普遍性があるということですよね。僕らはそこをずっと意識しています。余白のある曲こそが、普遍的なものになってくれると思っていますし。

伊藤:うん。だから僕はGOOD BYE APRILもヒット曲を出して欲しいと思う。でも、君らが持っている良さは無くして欲しくない。魂を売らずに、歌の中で、たった1行、キラッと光る何かがあれば、素敵なメロディーとフレーズがマッチした何かが生まれればヒットが出せると思うよ。



後編では、バンド継続の秘訣や、プロデュース力について、そして今の音楽シーンの中でバンドはどう生き抜いていくのかを語り合います。

Live Photo by Shun Fujita(ARIGATO MUSIC)

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2025.08.16
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