2000年にリリースされた杏里のベストアルバム『ANRI the BEST』。このアルバムには杏里が1978年から2000年まで在籍したフォーライフ・レコード(現:フォーライフ ミュージックエンタテイメント)からリリースされた楽曲の中から選りすぐりの33曲が収録されている。それまでにも杏里のベストアルバムは何枚かリリースされているが、この2枚組はある意味入門編であり、それまでの杏里の集大成とも呼べる作品集だ。
『ANRI the BEST』にはデビュー曲「オリビアを聴きながら」をはじめ、大ヒット曲「CAT’S EYE」「悲しみがとまらない」はもちろん、セルフプロデュース時代の代表曲「SUMMER CANDLES」「Groove A・Go・Go」「スノーフレイクの街角」「夏の月」などの代表曲がぎっしりと収録されている。1980年代から1990年代にかけて青春時代を過ごした人にとっては、この2枚組こそが “THE 杏里” だと言っていい。
これまでのベストアルバムの概念を覆す「ANRI the BEST blue」
そんなロングセラー『ANRI the BEST』から25年の年月を経て、2025年7月2日に発売されるのが『ANRI the BEST blue』だ。前作は赤を基調にしたアロハシャツのジャケットだったが、今作は青を基調にしたアロハシャツがジャケットだ。つまり “赤盤” “青盤” という位置づけの2枚ということになる。そして、今回発売される “青盤” は、これまでのベストアルバムの概念を覆すような内容になっている部分がとても面白い。
今回発売される “青盤” には『Timely‼』から「A HOPE FROM SAD STREET」「SHYNESS BOY」「LOST LOVE IN THE RAIN」「WINDY SUMMER」の4曲がセレクトされている。中でも「A HOPE〜」と「LOST LOVE〜」は杏里の自作曲で、随所に選曲のこだわりが強く感じられる作品だ。『Timely‼』は2025年までにSpotifyで合計2億回以上聴かれており、1980年代とは違う側面で評価されているのが非常に興味深い。
『Timely‼』に続き角松敏生がプロデュースを手掛けたアルバム『COOOL』(1984年)からは「HE'S MY MUSIC」「SURPRISE OF SUMMER」がセレクトされている。特に「SURPRISE OF SUMMER」は今井優子がこの4月にリリースした話題のカバーアルバム『Reminiscence』の中で取り上げている1曲だったりもする。
“青盤” 発売直後の7月5日から全国ツアー『ANRI LIVE 2025 TIMELY』が始まる。タイトル通りアルバム『TIMELY‼』からも多く選曲されると勝手に予想しているが、ストリーミングで杏里を知った多くの若い世代も会場に足を運ぶことだろう。
2015年以降のシティポップ・ブームで、杏里を含め多くのベテランアーティストが再評価されているが、どのアーティストにも共通している点は、発売当時はそこまで注目されていなかった曲が再評価されている点かもしれない。このたび発売される『ANRI the BEST blue』はある意味、“新時代のベストアルバム” と呼べるだろう。