こんにちは。今回からこちらで連載を始めさせていただきます、スージー鈴木と申します。音楽評論家として、地味にいろいろとやっております。よろしくお願いします
(新刊『1984年の歌謡曲』 ―イースト新書―、宜しくお願いします)。テーマ的には、「80年代音楽解体新書」という感じで、懐かしいあの曲この曲の魅力を、音楽的な分析を加えながら、「解体」していきたいと思っています。その第1回は、「佐野元春のデビュー曲のどアタマの音符に込められた大発明」。
デビュー曲は、あの『アンジェリーナ』。その歌い出しの歌詞は「♪シャンデリアの~」。「どアタマの音符」は、「♪シャン」。これを画像で表現すると、こうなります。
「どこが大発明なんだ?」と思われるかもしれません。でも、ちょっと考えてください。普通の歌詞の感覚だと、こうなりませんか? 「♪シャ・ン」と。
さらに言えば、「♪シャンデリアの~」について、普通の日本語の歌詞だと、「♪シャ・ン・デ・リ」となるはずです。それを若き佐野元春は、ちょっと無理矢理に「♪シャンデリアの」まで、詰め込んだのですね。
細かく見ていくと、「シャ・ン」を「シャン」とするのはまだ分かるのですが、「デ・リ」を「デリ」とまとめるのは、なかなかにインパクトがあります。
これがデビュー曲の『アンジェリーナ』(80年)、そして9枚目のシングル『スターダスト・キッズ』(82年)には「♪本当の真実がつかめるまで」というフレーズがあります。これの歌い方は、こんな感じ。
「ほん」と「しん」を1つの音符に詰め込んでいます。さらには「つか」も詰め込んでいます。「シャンデリア」は英語(chandelier)なんで、まだ分かるのですが、「つかめる」という日本語も、詰め込んでしまう。
そしてその結果として、日本語の歌詞なのに、英語の歌詞のようなビート感が発生していると思いませんか? 実はここに、若き佐野元春のラジカリズムがあったわけですね。
では、この方法論が、80年代の音楽シーンの中で、どう広がっていったかを、後編で見ていきたいと思います。
(明日につづく)
2017.03.31