数年前、車を買い替えた時にカーディーラーの営業マンから「ナンバープレートの番号は、やっすぅさんの好きな番号を取りますよ」という申し出があった。
車のナンバーなんか何番でもいいと思っていたのだけど、そう言われると欲しくなってくるもので、「じゃあ2525にして」とお願いした。すると「ニコニコですね。お子さんも喜びそうな可愛い番号ですね」と言う。
「ニコニコ? そうじゃない、これはツーファイブ・ツーファイブと読むんだよ。PANTAの歌にこの番号が出てきてな、その番号ってのがな…」
―― と熱く説明をしても営業マンにとっては全く興味のない話だと言うことは、まぁ当然のこと。
PANTA & HALのアルバム『1980X』に収録されている曲「IDカード」。番号が個人を管理する社会を歌ったもので、今でいえば「マイナンバー制度」を指しているのだろう。
IDカードNo.2525
名前なんて捨てられた
IDカードNo.2525
この数がおれの名前さ
番号で管理される社会をイメージさせる硬質なアレンジが格好いい。そしてPANTAはそんな社会は長くは続かないぞと捨て台詞のように歌う。
IDカードNo.2525
欲しけりゃあげるぜ 持ってけ泥棒
僕にとってこの歌詞は驚きだった。このアレンジに「持ってけ泥棒」という言葉がまったく釣り合ってないと感じたのだ。ロックが使う言葉なのか?
でも聴いているうちにこれがなんだかやけに記憶に残って、つい真似して歌ってしまう。気持ちがいい!
そして、この「持ってけ泥棒」こそがPANTAからのメッセージなのだと。僕にとってこの叩き売りの煽り文句一節だけで、数多あるPANTAソングの中でも特に印象深い一曲となっているのだ。
妙にリズミカルな数字「2525」はPANTAの誕生日、昭和25年2月5日からとっているのだと言う。もしもPANTAが生まれるのが2、3日前後していたら「IDカード」はまた違った曲調になっていたかもしれない。
冒頭の僕の車(ナンバ−2525)が納車された数日後、近所の子供連れのお母さんがこのナンバーに気がつき「この車、ニコニコだって、可愛いね」と子供に言いながら、僕に挨拶をしてきた。
「これはニコニコじゃなくてツーファイブ・ツーファイブで、PANTAが管理社会を痛烈にね…」
―― と説明したところでそんな話は全く聞いちゃいないのだった。
歌詞引用:
IDカード / PANTA & HAL
2018.02.05
IDカード / PANTA&HAL
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