9月24日

デヴィッド・ボウイがイギー・ポップに差し伸べた少年ジャンプ的精神!?

25
0
 
 この日何の日? 
デヴィッド・ボウイのアルバム「トゥナイト」が英国でリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1984年のコラム 
KONTAと杏子のWボーカル、バービーボーイズのスリリングな駆け引きロック

昭和を彩った80年代男性ヴォーカル “泣ける失恋ソング” ランキング

繰り返し聞き続けた失恋ソング、ジョン・ウェイトの「ミッシング・ユー」

80年代ポールの最高傑作「ノー・モア・ロンリー・ナイツ」の不遇

英国3大ギタリスト「クラプトン、ジェフベック、ジミーペイジ」それぞれの40代

ドイツのバンド「アルファヴィル」シンセポップでメロディアス!

もっとみる≫



photo:Warner Music Japan  

デヴィッド・ボウイの没後、リリースが開始された、そのキャリアをたどる BOX セットシリーズ。この第4弾『ラヴィング・ジ・エイリアン』は1980年代中期の音源がまとめられている。

この時代はセールスの点で、もっとも華々しい成功を収めた時期だ。が、“正しいボウイファン” は、この時期のアルバムを褒めるのはためらわれるようで、「売れ線に走りやがって…」というのがその筋の見方。ボウイ自身も駄作であることを認めているアルバムばかりだから、それも致し方ない。

とはいえ、80年代にボウイに目覚めた Re:minder 世代には、どうもスッキリしない。後追いで知った70年代のアルバムは確かにどれも素晴らしいし、かなわん… というのも理解できるが、それでもリアルタイムで聴いたものは弁護しておきたい。というワケで、BOXにも納められているアルバム『トゥナイト』の話を。

1984年9月、『トゥナイト』リリース。前作『レッツ・ダンス』を聴きまくった当時高校3年の自分は、当然のように発売日にレコ屋でアルバムをゲットした。前作からわずか17か月後のリリースという点に一抹の不安を感じてはいたものの、それよりも “聴きたい” 欲が勝り、それは田舎の高校生を満足させた。化粧品の CM に使用された第一弾シングル「ブルー・ジーン」をテレビで耳にすると、お茶の間へのボウイの浸透に嬉しくなったものだ。

1曲目の「ネイバーフッド・スレット」でガツンときて「ブルー・ジーン」を挟み、「タンブル・アンド・トゥワール」の軽くスウィングするような空気を経て、ラストの「ダンシング・ウィズ・ザ・ビッグ・ボーイズ」で全部出し切る感。正直に言うと、最初は活気のないA面よりもB面の方が好きだった。

何よりも大きかったのは、ここで初めてイギー・ポップという存在を意識するようになったこと。前作に収録されていた「チャイナ・ガール」はボウイが元々イギーに提供した曲のセルフカバーである… といった程度の知識はあったが、このアルバムではそれ以上に大きな存在だ。9曲中、5曲にイギーの作曲クレジットがあるし、最後の曲ではボウイとデュエットし、低音の渋い声を聴かせてくれる。この冗談みたいな名前の人は、いったい何者なのだろうと、高校生の心は大いに刺激された。

この時期のボウイは多忙で作曲の時間がとれず、このアルバムでは2曲を除いてカバーか共作しかなかった。その共作者として名を連ねたイギーは、当時はキャリアの低迷期。ボウイがこのアルバムをつくった理由のひとつに、そんな親友に手を差し伸べることがあったという。そして『トゥナイト』は全英でナンバーワンを獲得。まさに “友情・努力・勝利” というジャンプ的精神!? 頭の悪い高校生にもわかる、いい話じゃないか。

このタッグはさらに続き、1986年イギーはボウイのプロデュースの下、アルバム『ブラー・ブラー・ブラー』を制作。これによりヒットチャートに返り咲くことに成功する。

1970年代のグラムロック期や、ベルリン時代に、すでにボウイがイギーに救いの手を差し伸べていたのは、あとになって知ること。とにかく『トゥナイト』は、エキセントリックなロックンロールの世界にも、熱いものがあることを教えてくれた。同時にイギー・ポップという、とてつもない才人の存在も。

最後に、もうひとつ弁護を。このアルバムからの3枚目のシングルとなったA面1曲目の「ラヴィング・ジ・エイリアン」は70年代の名曲を後追いしてから聴いても、すごくいい曲だ。“汝の異邦人を愛せよ” というフレーズは、今の時代にも合っている。BOX のタイトルとなったのも納得。


※2018年10月13日に掲載された記事をアップデート

2019.09.24
25
  Spotify


  Spotify
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1966年生まれ
ソウママナブ
コラムリスト≫
45
1
9
8
7
デヴィッド・ボウイ【ベルリンの壁コンサート】東ドイツに向けて歌ったあの名曲
カタリベ / 宮井 章裕
52
1
9
8
9
EPICソニー名曲列伝:佐野元春「約束の橋」が与えてくれた肯定感について
カタリベ / スージー鈴木
36
1
9
8
0
ボウイが最も製作費をかけたビデオ!?「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」
カタリベ / 宮木 宣嗣
80
1
9
8
3
ボウイとの出会い「レッツ・ダンス」は売れ線と呼ぶには余りにヘンな曲
カタリベ / 宮木 宣嗣
33
1
9
8
4
ポール・ウェラーの魅力、華やかなファッションセンスと骨太のメッセージ
カタリベ / inassey
13
1
9
8
3
伝説のギタリスト、テキサス・ハリケーンことスティーヴィー・レイ・ヴォーン
カタリベ / KazーK