1976年 9月25日

PANAMからソロデビュー!大貫妙子の原点「Grey Skies」異なる音楽性が同居する出発点

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大貫妙子のアルバム「Grey Skies」発売日
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大貫妙子、静かなソロの第一歩を刻んだ「Grey Skies」


クラウンPANAMレーベルでの、大貫妙子のソロ第1作『Grey Skies』は、1976年9月25日にリリースされた。近年では2作目の『SUNSHOWER』やRCA移籍後の3作目『MIGNONNE』が人気で、このファーストアルバムがやや陰に隠れたイメージもあるが、シュガー・ベイブ時代の面影を残しつつ、この頃彼女が傾倒していた音楽がストレートに表現された、静かなソロの第一歩を刻む内容である。

全10曲の収録曲のうち、アレンジャーによって曲ごとの世界観が分けられている。シュガー・ベイブ時代からの盟友である山下達郎のほか、坂本龍一、細野晴臣、矢野誠といった彼女のブレーンとなる面々がアレンジを担当、そのうちの何曲かは大貫自身も共同でアレンジを手がけている。

シュガー・ベイブ時代、すでにレパートリーにしていた「約束」


冒頭の「時の始まり」は山下達郎との共同編曲で、リズムセクションとブラスセクションのアレンジを山下が担っている。本人は “フィフス・アベニュー・バンドが持っていたような、シャッフルの気持ちよさの感じで作った” と語っているが、この曲などまさしくシュガー・ベイブの延長線上にある爽やかなナンバーで、ことに向井滋春のトロンボーンが間奏で爽快なソロを聴かせているのが印象深い。演奏には山下のほか寺尾次郎、上原裕といったシュガー・ベイブ時代のメンバーが参加している。

2曲目の「約束」はシュガー・ベイブ時代、すでにレパートリーにしていた曲。坂本龍一のローズ・ピアノの音で始まり、山下のギターが軽快なコードカッティングを響かせている。 さらには徳竹弘文の官能的なリードギターが印象的で、エイモス・ギャレットのような響きを持っている。当時、マリア・マルダー「真夜中のオアシス」(1973年)でのエイモスのギターがティン・パン・アレー周辺のミュージシャンたちの間で話題になっていたらしく、同じ雰囲気のギターは同時期の荒井由実や吉田美奈子の作品でも聴くことができる。



シュガー・ベイブ時代からのナンバー「愛は幻」も山下の編曲で、ここでのリードギターはセンチメンタル・シティ・ロマンスの中野督夫。エンディングでの中野のギターと坂本のピアノの掛け合いがグルーヴ感を生み出していて、この3曲はいずれもシティポップの源流と呼べる音作りだ。

シュガー・ベイブ結成前に書いていた曲だという「午后の休息」は、ドラムレスでの演奏で、斎藤ノヴがボンゴを叩き、これに寺尾のベース、磯良夫のビオラ、徳武のアコースティックギター、そしてピアノが坂本というメンバーで録音されている。1973年にデモテープ用に録音されたセッションが存在していたが、その時のサウンドに近づけたものだそう。

ティン・パン・アレー系のメンバーが勢揃い。PANAMならではの布陣


一方、細野晴臣の捻ったアレンジが耳に残る「One’s Love」は三拍子のジャズ風味。また、細野と大貫の共同アレンジに加え、大貫と坂本がコーラスアレンジを手がけた「街」は、都会で一人暮らしを始めた自身の思いが投影されたボサノバ風のナンバー。クラシックギターを細野が弾き、ベースは鈴木茂&ハックルバックの田中章弘、ドラムに林立夫、さらにローズ・ピアノを弾くのは佐藤博、パーカッションに浜口茂外也といったティン・パン・アレー系のメンバーが勢揃いしているのは、PANAMならではの布陣だ。



ジャジーなテイストの「Wander Lust」では、シュガー・ベイブ時代にできなかったタイプの楽曲を敢えて提示したという。ここでも山下、寺尾、上原といった面々が参加しているが、シュガー・ベイブ時代とは異なるサウンドに仕上がっているのは、坂本龍一アレンジのためだろう。

次の「SUNSHOWER」に連なるフュージョン指向のサウンド


終盤に配された2曲で、また少し色彩が変わる。9曲目の「When I Met The Grey Sky」は、大貫がこの世界に入るきっかけを作った矢野誠がアレンジを手がけ、矢野自身が演奏する琴をフィーチャーした異色作。大貫本人の曲想にあったのはジョニ・ミッチェルだったそうだ。ラストのインストゥルメンタル「Breakin’Blue」も坂本龍一がアレンジしており、この2曲では、次のアルバム『SUNSHOWER』に連なるフュージョン指向のサウンドが展開している。



アルバムの前半ではシュガー・ベイブ時代の世界観を踏襲したポップスを響かせ、中盤ではこの時の大貫妙子自身の指向性や心象が歌われ、そして後半では次作に繋がるサウンド指向のナンバーが配されている。まだ全体的に荒削りで、方向性も多岐にわたっているものの、どの曲もシンガーソングライターとしての原石の魅力に溢れている。そして、この1枚で大貫妙子の、この時点での過去・現在・未来を聴かせてくれていたことが、後になってわかるのだ。彼女を知る上では絶対に欠かせないアルバムである。

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2026.04.28
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