夏うたを2026年の視点で再編集 vol.10
どぉなっちゃってんだよ / 岡村靖幸
部屋でひとり悶々としている男子にメチャクチャ刺さるサマーサング
夏がアウトドアの季節なんて、いったい誰が決めた? 夏なのにどこにも行かず、一緒に出掛ける相手もなく、部屋でひとり悶々としている男子も世の中には大勢いるのだ。かくいう私も、大学生の頃はそうだった。そんなときにメチャクチャ刺さったサマーソングがある。
Hey everybody
今年の夏は誇らしいと誰からも
言われてみたい気がする
1990年リリース、岡村靖幸の傑作アルバム『家庭教師』のオープニング曲「どぉなっちゃってんだよ」。「♪誇らしい」はたぶんモテ状態を意味する岡村ちゃんならではの言い回しだ。男ならたしかに “お前、イイ女連れて、誇らしいなぁ!” と誰からも言われてみたい。でもバシッと言い切るんじゃなくて「♪言われてみたい気がする」というあたりが、なんか岡村ちゃんっぽいよね。
ねぇ 職場でとなりの席が
バカなセクハラ上司で君を撫でたら殴るの?
と、いきなり女性への問いかけ。これも勝手に解釈させてもらうと “じゃあさ、僕が撫でたらどうなの? やっぱ殴るの? それともオールOK?” だ。ヤラしいなぁ(あくまで私の解釈です)。
読んだ本は全部マンガばかりで
次の日全部忘れちゃう
だって重要なことなら誰かれ問わずに
ファッション × 2
これもわかるなぁ。今モテることが重要なんだから、人生の糧になる本なんか読んでいるヒマはないのだ。そしてメンズファッション誌を熟読して、女性ウケする流行りの服を着ることこそ、モテたい男の進む道。「♪ファッション × 2」とわざわざ繰り返しているのは、大事なことなので2度言ったのだろう。そんなモテ第一の生き方を岡村ちゃんは全肯定。“このナンパ野郎!” と言われようとどこ吹く風だ。

Hey everybody
好みのギャルもビデオばかり見てたなら
出会う機会も失せるぜ
好きだと言えないくせして
子供みたいに死ぬほど
言ってもらいたがってる そうだろ?
戦闘態勢が整ったら、即行動に移すべし。寺山修司流に言うと “ビデオを捨てよ町へ出よう” だ。このビデオはレンタルビデオのことだが、今ならYouTubeとかNetflixになるのだろう。いずれにせよ、家で動画ばかり観てたら「♪好みのギャル」はゲットできないぜ。
俺なんかもっと頑張ればきっと
女なんかジャンジャンもてまくり
やっぱマニュアル通りに見つめてそんでもって
マンション × 2
「♪俺なんかもっと頑張ればきっと」の韻の踏み方も最高だが、まだ頑張る前なのに、早くもモテまくったときの自分を妄想している俺、最高!(笑)。雑誌に載っている恋愛マニュアルを頭に叩き込み、その通りに女のコを見つめ、そんでもって自宅マンションに連れ込む。「♪マンション × 2」とわざわざ繰り返しているのは、これも大事なことなので2度言っているのだ。
どぉなっちゃってんだよ
人生がんばってんだよ
一生懸命って素敵そうじゃん
どぉなっちゃってんだよ
人生がんばってんだよ
ベランダ立って胸をはれ
この「どぉなっちゃってんだよ」は “頑張ってマニュアル通りにやっているのに、チキショー、全然モテねぇぜ。どぉなっちゃってんだよ?” と嘆いているとも取れるし、いろいろ解釈はあると思う。この歌詞を初めて聴いたとき、私の耳にはこう聴こえた。“モテようと必死で頑張ると、どぉなっちゃってんだよ、ってぐらい人生が素敵に変わるぜ”。そんでもって、お目当てのギャルとマンションでよろしくできたら「♪ベランダ立って胸をはれ」って、そういう意味だよね? これ?
ちょっと気恥ずかしいことをあけすけに言ってしまえる岡村ちゃん流の感性
岡村靖幸という人は、自分が書いた曲の意図について一切語らない人なので、実際彼がどんな気持ちでこの歌詞を書いたのかはわからない。フィーリングというか、岡村ちゃん流の感性で湧いて出てきた言葉なのだろう。“なんだかんだ言ってさ、人生って女のコにモテてナンボじゃないの?” そんなちょっと気恥ずかしいことをあけすけに言ってしまえる岡村ちゃんはとっても素敵だし、人として信頼できる……。私は当時そう思ったし、今もそう思っている。
俺たちきっとなんだかんだ言って
宿題なんぞ投げ出したい
そんで流行の雑誌で生きかた定めて
ファッション × 2
大学のレポートよりも、どうモテるかのほうが大事。自分に正直だからこそ書ける歌詞だ。このあとリピートがあって、締めのフレーズがまた素晴らしい。
どぉなっちゃってんだよ
人生がんばってんだよ
無難なロックじゃ楽しくない
“無難なロック” って、名指しはしないけれど、いっぱいあるよねぇ。この曲は真逆で、最初から最後まで “え? なになに? どゆこと?” の連続で終わる全然無難じゃないロックだ。暗に “人生も無難に生きてちゃ楽しくないぜ、ベイベ” と言ってるようで、これも岡村ちゃんらしい。あえて深読みをすると、ロック=鍵=女性側のガード、って意味なのかも。簡単にオチる女じゃ楽しくない、そんなダブルミーニングのような気もするぞ。
その後に出てくる、歌詞カードには載っていないフレーズ「♪俺は誇りにファズかけて ベッドシーツを正したい」もまったく意味不明だが、言わんとすることはなんとなく伝わってくる。 モテ男を目指せ! うまくいかなくても、そのこと自体が誇らしいと言い切る「どぉなっちゃってんだよ」は、夏だというのに部屋で悶々としているインドア男子のアンセムであり、これぞザ・サマーソングだと私は思う。
リリース当時、ロンドンで撮影されたこの曲のミュージックビデオが最高すぎるので、岡村ちゃんのキレッキレのダンスも含め、ぜひご覧いただきたい。ヒゲも最高(笑)
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2026.07.24