3月7日

80s音楽にビジネスを学ぶ:ウィ・アー・ザ・ワールドと多様性マネジメント

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USAフォー・アフリカのシングル「ウィ・アー・ザ・ワールド」が米国でリリースされた日
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「ウィ・アー・ザ・ワールド」に学ぶビジネスの問題解決


僕は以前『問題解決』というタイトルのビジネス学習本を出したことがあるのだが、先日、それを知った本サイトのファウンダーの太田秀樹さんから「80年代の音楽を題材にビジネスの問題解決について書いてみたら?」というオファーを戴いた。

そこで、せっかくの機会なので USAフォー・アフリカの「ウィ・アー・ザ・ワールド」を題材にしてお送りしたい。ご存知のようにこの曲は、バンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」を引き継ぐ形で制作された。だが、この2曲のメイキング映像を観ると、両者の間には大きな隔たりがあることが判る。スタジオの雰囲気が全く違うのだ。

バンド・エイドとUSAフォー・アフリカとの違い


まず、バンド・エイドの映像には殆ど20~30代の白人男性しか映っていない。しかもスコットランド出身のミッジ・ユーロ(ウルトラヴォックス)、アイルランド出身のボブ・ゲルドフ(ザ・ブームタウン・ラッツ)とボノ(U2)を除く殆どがイングランド出身だ。それでいて、どことなく刺々しく、殺伐とした空気感が伝わってくる。

一方の USAフォー・アフリカは、参加メンバーが老若男女白黒混合と非常に多様性が高い。にも関わらず、現場には和気あいあいとした雰囲気があり、バンド・エイドよりはるかにオーガナイズされている感じがする。しかし、よく考えてみるとちょっと不思議だ。一般的に、多様性が高くなればなるほど、場を取りまとめるのが難しくなるものである。では、なぜ「ウィ・アー・ザ・ワールド」は、あれほどのスター達が短時間でつつがなくレコーディングを終わらせることができたのか… それには、主に4つの理由が考えられる。

理由1:共通言語である「楽譜」の存在


文化的背景の異なるメンバーの間では「あうんの呼吸」が期待できないので、きちんと言語を使ってコミュニケーションを行う必要がある。だが、ここで言語と言っているのは、英語だけの話ではない。

どんな曲を歌うかを知らないで駆けつけたメンバーが、すぐにレコーディングに入っていけたのは、楽譜という世界標準のコミュニケーションツールが存在したからで、これこそが共通言語である。もちろん、音楽に限らずビジネスの世界には多くの共通言語が存在するが、それらが日本に浸透していないことも多いので要注意だ。

理由2:プロデューサー(クインシー・ジョーンズ)に権限を集約


この曲は元々「バナナ・ボート・ソング(デイ・オー)」で有名なハリー・ベラフォンテの発案に基づいて、ライオネル・リッチーとマイケル・ジャクソンが作詞作曲したものだが、レコーディングスタジオの中はクインシー・ジョーンズによって取り仕切られた。彼は名プロデューサーであり、米国ポップス界の偉人でもある。

その結果、彼の指揮によってレコーディングは順調に進められた。だが、重要なのは、彼が圧倒的なキャリアの持ち主だということではなく、彼にレコーディングに関する権限が集約されていたことである。つまり、全員が「誰の言うことを聞かなければならないか」を解っていたということだ。これが、(まるで日本の組織のような?)半端な合議制だったら、時間内に一定の品質に仕上げることなど決してできなかっただろう。

理由3:目的である「アフリカの飢餓救済」の周知徹底


この曲の目的は、もちろんアフリカの飢餓救済だ。それを周知徹底すべく、クインシーは最初に全員を集めて、エチオピアから駆けつけたばかりのボブ・ゲルドフ(バンド・エイドの発起人)にスピーチをさせている。

「Well, maybe to put you in the mood of the song you are about to sing, which hopefully would save millions of lives.」

ゲルドフはこう話し始めると、アフリカの飢餓の惨状を訴えた。

実は、このレコーディングがアメリカン・ミュージック・アワード(AMA)の直後に行われたこともあって、当初、現場はかなり緩んだ雰囲気だった。しかし、このスピーチを機に全員が「なぜ自分達がここに集められたか」を再認識し、スタジオの空気が一つになっていった。

理由4:明確に示された行動指針「Check your egos at the door」


レコーディングの数日前、クインシーは参加者全員に招待状を送ったが、その中には、

「I am most impressed and moved(中略)to accept this project with the pride and spirit of checking your ego at the door.」

… と書かれていた。そう、まさにこの「Check your egos at the door(入口であなたのエゴを預ける)」が行動指針であり、レコーディング当日にはスタジオの扉に標語として貼られていたらしい。

この意図は「レストラン入店時にコートをクロークに預けるように、エゴは入口で預けてこい」で、要は自意識を封印しろということだ。こういうメッセージは、何度も言葉にして伝えるしかなく、これ以上の良策はない。

このように「ウィ・アー・ザ・ワールド」の制作過程には、多様性マネジメントのヒントがたくさん埋まっている。曲の好き嫌いはともかく、一度振り返ってみることをお勧めしたい。


Song Data
■ We Are The World / USA For Africa
■ 作詞・作曲:Michael Jackson, Lionel Richie
■ プロデュース:Quincy Jones, Michael Omartian
■ 発売日:1985年3月7日

Billboard Chart
■ We Are The World / USA For Africa(85年4月13日1位)
■ Do They Know It‘s Christmas? / Band Aid(85年1月19日 13位)



※2017年1月13日、14日に掲載された前・後編の記事を一本化、2019年3月7日に掲載された記事をアップデート

2020.03.07
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  YouTube / USAforAfricaVEVO


  YouTube /  BandAidVEVO
 

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