2018年 12月31日
2018年の紅白は「ニューミュージック」の盛大なお葬式だった
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第69回「NHK紅白歌合戦」が開催された日
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photo:southernallstars.jp  
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昨年末の『第69回 NHK紅白歌合戦』はとても盛り上がりました。第1部の視聴率が37.7%(前年35.8%)、第2部が41.5%(同39.4%)と堅調で(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、かつ私のタイムラインでも、絶賛の声が相次ぎました。

この「成功」の要因を分析する記事が、正月早々、ネット上に色々と書かれているようですが、ここでは、音楽の視点から捉えてみたいと思います。それは、エンディングにまさかの共演を果たした、桑田佳祐と松任谷由実の貢献です。

注目すべきは、松任谷由実もサザンオールスターズも、古い曲を歌ったということです。平成最後の紅白に、昭和の歌を持ち出してきた。

松任谷由実は荒井由実時代の『ひこうき雲』(73年)と『やさしさに包まれたなら』(74年)。サザンオールスターズは『希望の轍』(90年。この曲だけギリギリ平成)と『勝手にシンドバッド』(78年)。

この中の70年代生まれの3曲=『ひこうき雲』『やさしさに包まれたなら』『勝手にシンドバッド』の先進性を改めて整理してみます。これらの曲が、エンディング近くで堂々と披露された今回の紅白は、その先進性がいよいよ、日本の音楽シーンのど真ん中に駒を進めたということだと思うので。

松任谷(荒井)由実が日本の音楽シーンにもたらしたものは、コード進行の先進性です。『ひこうき雲』は、何といってもサビ=「♪ 空に 憧れて 空を かけてゆく」のところのコード進行(原曲キー E♭ を C に移調。ちなみに今回の紅白でのキーも C)。

【C】【Em7】→【Am7】→【Em7】【Gm7】→【Fmaj7】(「→」の間が1小節。以下同)

突然の違和感をもたらす【Gm7】に注目です。歌詞では「♪(か)けていく」のところ。さらに注目すべきは、この部分の階名「♪(ミ)ラミレド」が、その【Gm7】の構成音=ソ・シ♭・レ・ファとちっとも合っていない、言わば違和感バリバリのフレーズだということ。それでも、なぜか聴き手の心にしっくり来る。この音使いでしかありえないとまで思わせてしまう。

次の『やさしさに包まれたなら』も、何気なく聴いてしまいますが、実は冒頭からして奇妙なコード進行です(こちらも原曲キー F# を C に移調。ちなみに今回の紅白でのキーは F)。

【C】→【D】→【Bm7】【Em7】→【Am7】→【F】→【Dm7】→【G】

違和感を発するのが3小節目の【Bm7】。このコードが流れる「♪ 神さまがいて」のところで、曲の世界観が少し変わる感じがしませんか? そんな違和感を、曲の冒頭3小節目にいきなり持ってきて、音楽的快感に変えてしまうのが「ユーミンマジック」なのです。

そして、サザンオールスターズ『勝手にシンドバッド』。こちらの先進性については、拙著『サザンオールスターズ 1978-1985』(新潮新書)に、かなり細かく書きました。中でも最も大きなポイントは「ロックのビートに対する日本語の乗せ方」だと考えます。

「早口ボーカル」「巻き舌ボーカル」と、当時、かなり盛んに揶揄(やゆ)されたものです。そして驚くべきは、平成も終わろうとする現代においても、桑田佳祐を超えて、より斬新な日本語発音・発声をするボーカリストが、なかなか出て来ないという事実。

―― そんな、松任谷由実と桑田佳祐が70年代に世に問うた、あれやこれやの過激な先進性が、紅白という国民的番組のエンディング近くで披露され、名実ともに日本音楽シーンのど真ん中に昇りつめた。さらには、これまでの音楽シーンを牽引してきた2人の先進性に対する「国民的喝采」こそが、紅白の視聴率をも高めたのではないでしょうか。

思えば70年代当時、松任谷(荒井)由実やサザンオールスターズは「ニューミュージック」とカテゴライズされました。既成の歌謡曲ではない、洋楽の影響を強く受けた自作自演の「新しい音楽」=「ニューミュージック」。

そう考えると、松任谷由実と桑田佳祐の先進性が、名実ともに認められたかたちとなった今回の紅白は、「ニューミュージック」の盛大なお葬式だったのかもしれません。2人の過激な「ニュー」が、日本音楽シーンの標準となったことで葬り去られ、まごうことなき「ミュージック」に昇華された夜。

「ニューミュージックの葬式」というフレーズは、松任谷由実、サザンオールスターズを含む、日本の大物音楽家が一同に会した1985年のコンサート=『オール・トゥゲザー・ナウ』に対して、細野晴臣が形容したものと言われています。

しかし本質的には、今回の紅白の方がそれにふさわしいでしょう。平成最後の大みそかに、松任谷由実のコード進行と桑田佳祐の発音・発声に国民が喝采することで、「ニューミュージック」の「ニュー」がやっと正しく葬り去られた―― 私は、今回の紅白をそう見ました。

2019.01.06
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1971年生まれ
海老沼 大輔
"ニューミュージックのお葬式"は、大瀧詠一のコメントです。"all together now"もそうでしたが、今回の紅白のラストは、グラミー賞の"ホールオブフェイム枠"のような形で、来年以降も残っていったら紅白が生き残る核に間違いなくなると感じました。
2019/01/06 14:03
1
返信
カタリベ
1966年生まれ
スージー鈴木
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