共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.63
Keep Your Hands To Yourself/Georgia Sattelites
今の洋楽シーンと比べると、共有感高いヒットソングの絶対数が断然多い1980年代。日本のメジャー・メディアがこぞって紹介していたり、バブリーな時代に向かっていく時代の雰囲気も後押ししていたり、その要因はいくつか挙げられるだろう。確実に言えるのは、その大半は英米のヒット・チャートを飾った “キラキラまぶしく輝く” きわめて80年代的なゴージャスなポップソングが占めていたということだ。
第2次ブリティッシュ・インベイジョン、ド派手なサントラブーム、産業ロック、AOR / ブラコン、ポスト・ディスコ期に突入したダンスミュージック、英米ハードロック… 様々な印象的現象が80年代洋楽シーンを彩っていたのだが、表面的なド派手さへの揺り戻しかのように、渋~いジャンルの音楽が突発的に脚光を浴びることもあった。そのひとつがアメリカン・ロックンロールの良心ともいえるだろう、サザン・ロックだ。
そもそもは60年代終盤から70年代前半にかけてオールマン・ブラザーズ・バンドやレイナード・スキナードらが具現化した、ブギウギやスワンプをルーツとする広大な大地を想起させるイナカ臭い土着的ロックであり、南部の白人のオジさんたちはカントリーと共にサザン・ロックが大好きなわけだ。
80年代後半、ボン・ジョヴィ、マドンナ、シンディ・ローパー等がひしめくヒットチャートに、サザン・ロックを標榜する活きのいい若いグループが殴り込んできた。それが80年代61番目に誕生したナンバー2ソング、ジョージア・サテライツ「キープ・ユア・ハンズ(Keep Your Hands To Yourself)」(87年2月2位)。
彼らの大ヒットソングは、後にも先にもこの1曲だけ、いわゆる一発ヒット屋である。普通の格好をした普通のにいちゃんが、シンプルな3コード・ロックでヒットチャートを席巻、バブリーなキラキラポップからの揺り戻したるアメリカン・ロックンロールの良心の証明は、1曲だけで充分だったのかもしれない。まあ、この大ヒットにいちばん驚いたのは、何を隠そう本人たちだったろうけど。
しかし80年代以降ジョージア・サテライツ以前、38スペシャル、トム・ペティ、ジョン・クーガー、ボブ・シーガー、ZZトップといった、サザン・ロックをベースとする先人たちの存在を忘れてはいけない。彼らが切り開いた道があったからこそ、「キープ・ユア・ハンズ」のヒットが実現したのだから。
ジョージア・サテライツは、この後サントラ『カクテル』(88年)に参加、米ロックンロール・スター、チャン・ロメロのカバー「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」(88年45位)(英スウィンギング・ブルー・ジーンズやビートルズもカバー)が小ヒット。さらなる先人へのリスペクトを示していた。
2019.07.29
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