チェッカーズVS安全地帯の二本立て
チェッカーズ2作目の主演映画『チェッカーズ SONG FOR U.S.A.』が公開されたのは1986年7月26日。そのサウンドトラック盤となる『SONG FOR U.S.A.オリジナル・ソング・アルバム』は映画公開日に少しだけ先行して、7月21日にリリースされた。同年3月リリースの4枚目のオリジナルアルバム『FLOWER』と、1987年5月リリースの5枚目のオリジナルアルバム『GO』との間に出された企画アルバムということになる。
最初の主演映画『CHECKERS IN TAN TAN たぬき』と同じように、チェッカーズのメンバーが実名で登場する青春映画ではあったが、前作がコミカルな要素もある冒険SFファンタジーだったのに対し、2作目はかなりスタイリッシュな作りとなった。当時の通例だった同時上映作品は玉置浩二の初出演映画『プルシアンブルーの肖像』で、つまりはチェッカーズVS安全地帯の二本立てだったのだ。
全編に流れるオリジナルソング、音楽監督は芹澤廣明
映画は、作品の完成披露パーティーで藤井郁弥(現:藤井フミヤ)が冗談半分の解散宣言をするシーンから始まる。そこから大騒動となった後、ニューヨーク出身の黒人ミュージシャンとの出逢いをきっかけに、自分たちがやってきた音楽を再び見つめ直すメンバーたち。彼らの動揺、葛藤といったストレートな心情が赤裸々に描かれ、全篇で随所にチェッカーズのオリジナルソングが流れる。音楽監督は主題歌「SONG FOR U.S.A.」の作曲を担当した芹澤廣明が務めた。
チェッカーズの全アルバムの中でも相当の異色作といえるアルバムは、芹澤を含めて5人の作曲家が担当し、作詞も売野雅勇をはじめ4人が参加。アレンジも芹澤以外に、大村憲司、川上了、Light house projectと、他のオリジナルアルバムにはないくらい多くの作家が関わっていることもあり、全8曲の収録作品は実にバラエティーに富んでいる。
アルバムの冒頭は「ロールオーバー・チェッカーズ」
アルバムの冒頭は売野×芹澤によるプロローグ的な1曲「ロールオーバー・チェッカーズ」から。同コンビの作品「愛と哀しみのラストショー」は、いかにも脂が乗っていた頃のチェッカーズらしい、哀愁を帯びた楽曲。そして藤井郁弥自身の作詞による「Shadow Train」は根岸孝旨が作曲している。ベーシストとして活躍する一方で、楽曲提供やアレンジも展開してきた音楽プロデューサーでもあり、ソロになってからの藤井のツアーにも参加していた。
アルバムはさらに、PANTAの作詞、中崎英也の作曲による名バラード「裏どおりの天使たち」、秋元康の作詞、福島邦子の作曲による「Uターン ダウンタウン」と、映画のストーリーに則したスタイリッシュな楽曲が連なる。物語の山場で流れる「悲しみよ腕の中へ」は藤井郁弥の作詞で、作曲は林敏怡。TBSのドラマ『うちの子にかぎって』のスペシャル版で挿入歌に使用されたこともあった。郁弥のボーカルが際立った、子守唄のような優しいメロディが光る。躍動感に満ちた「ローリング・ダイヤモンド」はやはり売野×芹澤の作。“チャック・ベリー” が登場する詞が印象的で、悲しいシーンもある映画の救いになっている佳曲である。
フルメンバーによる最後の主演作品
そしてラストは主題歌「Song for U.S.A.」のロングバージョンで締め括られる。一連のシングルヒットの1曲として聴く「Song for U.S.A.」もたしかに名曲だが、このサントラ盤で聴くとさらに一味も二味も違う深い味わいがある。
斎藤光正監督がメガホンをとった映画は単なるアイドル映画の一本として語られるだけではもったいない良作だし、このアルバムもチェッカーズのメンバーは演奏していないにせよ、特に当時映画館へ足を運んだファンにとって愛着のあるアルバムではないかと察せられる。結果的にこの映画がフルメンバーによる最後の主演作品となったことにおいても。
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2023.09.15