50年以上に渡ってPANAMから作品をリリースし続けるイルカ
1974年のソロデビューシングル「あの頃のぼくは」以降、イルカは今日までクラウンレコードの “PANAMレーベル” から作品をリリースし続けている。おそらく50年以上に渡ってひとつのレーベルから作品を発表し続けているアーティストは極めて珍しいのではないだろうか。
彼女がPANAMで発表してきた作品は多くのリスナーに親しまれてきた。しかし最近増えてきた “昔買ったアナログレコードをもう聴く作ことができない” といった声に応えて、イルカが心を込めて送り出してきた作品たちを、改めて体系立てて聴いてもらえるようにしたいとスタートさせたのが『イルカ アーカイブシリーズ』だ。
イルカの50年にも及ぶソロ活動の足跡を、それぞれの時期を俯瞰する形でアーカイブしたこのシリーズを振り返っていくと、いまだに「なごり雪」や、優しくてかわいい歌、というイメージで見られがちないイルカの世界が、実はきわめて広大で深い味わいをもっていること、そして同時に一貫した志に貫かれていることが感じられてくる。
▶ イルカ アーカイブ Vol.1(2013年)
「イルカの世界」「夢の人」「幻のイルカ・ライヴ パート1&幻のスタジオテイク1」イルカのアーカイブシリーズがスタートしたのは2013年。Vol.1は1975年に発表されたファーストアルバム『イルカの世界』、同年のセカンドアルバム『夢の人』、そして1976年の『イルカ・ライヴ』の未発表曲や初期アルバムのアウトテイクを収めた3枚のCDで構成されている。最初期のイルカの魅力を全37曲で確認できるアイテムだ。
▶ イルカ アーカイブ Vol.2(2013年)
「イルカ・ライヴ」「植物誌」「幻のイルカ・ライヴ パート2&幻のスタジオテイク2」Vol.2は、『イルカ・ライヴ』の本編、そして1977年に発表された初のアメリカレコーディングによるサードアルバム『植物誌』に加え、ライブやアルバムのアウトテイクを収録した未発表音源集を含む全36曲を収録。イルカのアーティストとしてのセカンドステップの記録となっている。
▶ イルカ アーカイブ Vol.3(2016年)
「我が心の友へ」「FOLLOW ME」「セレクション 1980-1983」Vol.3は、小田和正のプロデュースによってロサンゼルスでレコーディングされ、1980年に7枚目のアルバムとしてリリースされたイルカのエレキサウンドの決定版『我が心の友へ』。そして、1981年の8枚目のアルバム『FOLLOW ME』、さらにはシングルとして発表された「FOLLOW ME」「十九の春に」「枯葉のシーズン」「渚にて」の4曲と、1983年に公開されたアニメーション映画『ノエルの不思議な冒険』のサウンドトラックから5曲が収録され、1980年代初頭の活動がパッケージされている。
▶ イルカ アーカイブ Vol.4(2016年)
「ノエルの不思議な冒険」 Vol.4に関しては、アニメーション映画『ノエルの不思議な冒険』の初DVD化というフォーマットで、音楽だけには留まらないイルカの表現の広がりを象徴する作品になっている。
▶ イルカ アーカイブ Vol.5(2018年)
「いつか冷たい雨が」「あしたの君へ」Vol.5は、少し歴史を遡る形になっている。1978年に入って出産のために活動をセーブしていたイルカは、長男出産後の1979年に6枚目のアルバム『いつか冷たい雨が』を発表して本格的に復帰。このアルバムは、ソロ活動を始める前のシュリークス時代に発表した曲「いつか冷たい雨が」を母となって歌い直したことで、イルカの人生における第2の原点が確認できる作品となっている。これに1979年のコンサートを収録したライブアルバム『あしたの君へ』をセットすることで、母としてのイルカの新たな出発をスタジオワークとライブの両面から記録したものになっている。
▶ イルカ アーカイブ Vol.6(2019年)
「BIG CHALLENGE」Vol.6は、1983年に行われた武道館コンサート『BIG CHALLANGE』を完全収録。1980年に女性シンガーソングライターとして初の武道館コンサートを行って以来、イルカは毎年武道館でライブを行ってきた。ここに収録されている1983年のコンサートは、ラス・カンケル(ds)、リーランド・スカラー(b)、クレイグ・ダーギー(key)、フレッド・タケット(g)、石川鷹彦(g)といった日米トップミュージシャンとの共演で、ライブアーティストとしてのイルカの神髄が確認できる。今回のリマスターでは、イルカのこだわりによって、これまでのアルバムからは省かれていた曲、さらにはトーク部分も実際のライブの順番通りに再現されている。
▶ イルカ アーカイブ Vol.7(2021年)
「冬の贈り物」Vol.7は、1977年に発表したクリスマスアルバム『ボヘミアの森から』と、1990年の『Noël ファンタスティックな冬物語』という2枚のクリスマスアルバムにそれぞれボーナストラックを追加。さらに、1980年に発表した絵本「ジェレミーの木」から制作された短編アニメーションのDVDをセットしたものだ。
▶ イルカ アーカイブ Vol.8(2023年)Vol.8は、1982年に発表した9作目の『JULIA』、1983年の11作目『LOOP CHILD』、そして1985年の12作目『Heart Land』の3作を最新リマスタリングでコンパイル。鈴木茂が全面的にアレンジを手掛けた『JULIA』、井上鑑、伊藤銀次などを起用してサウンド的なアプローチをさらに進めた『LOOP CHILD』、そして自作曲以外の楽曲を大幅に取り入れた『Heart Land』と、1980年代のイルカが行っていった多彩なアプローチが楽しめる。
▶ イルカ アーカイブ Vol.9(2024年)そして Vol.9では、1986年の『ESSAY』、1989年の『けさらん ぱさらん』、1990年の『Delfina』の3枚のアルバムがボーナストラックを加えた形でまとめられており、1980年代後半のイルカの活動を追うことができる。
『イルカ アーカイブシリーズ』はまだまだ終わりではない。いま、シリーズはやっと1990年代に入ろうとしているに過ぎない。ここから先に描かれていくイルカの豊かな世界をゆっくりと味わいたいと改めて思う。
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2026.01.20