1976年 3月5日

四畳半フォークを覆す南こうせつの多彩なる音楽性!神田川だけじゃないJ-POPの先駆け ①

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クラウンの名門PANAMレーベル設立55周年


日本クラウンのポップス系レーベルであるPANAMは、2025年に設立55周年を迎えた。今年3月にはPANAMレーベルの楽曲、全133曲を収録したアルバム『PANAM Archives 55th Anniversary』が配信リリースされ、さらに同レーベルの名曲を、様々なアーティストがリメイクカバーする企画『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』もスタートするなど、にわかに活気づいている。

そして今月から、1970年代のPANAMで活躍したレジェンド級のビッグアーティストを紹介していく企画がRe:minderでスタートする。その第1弾としてピックアップするのはもちろん南こうせつ。“かぐや姫” からソロになって以降、現在も現役で活躍を続ける南こうせつのPANAM時代を、前後2回にわたって紹介していきたい。

PANAMから登場した新進フォークシンガー、南こうせつ


南こうせつは大分県出身。1970年4月に南高節の名で「最後の世界 / むなしいうた」で、クラウンPANAMレーベルからソロデビューを果たしている。PANAMが正式にレーベルとして立ち上がったのは同年の3月であり、南こうせつは最初期のPANAMから登場した新進フォークシンガーだった。

同年10月に “南高節とかぐや姫” を結成するが、のちにメンバーを変えて、伊勢正三、山田パンダと共に “南こうせつとかぐや姫” を名乗り、1971年9月25日に「青春」で再デビュー。もちろんこの時もPANAMの所属である。彼らは1973年に発表した「神田川」を大ヒットさせ大人気グループとなるが、1975年4月に解散。南はソロ活動をスタートさせた。

ソロアルバム第1弾「かえり道」はティン・パン・アレーも参加


南こうせつはかぐや姫時代のイメージからフォークのアーティストという印象が強く、実際その通りなのだが、ソロに転向した第1弾のアルバム『かえり道』では、フォークに限ることなく、音楽性の幅を大きく広げていった。本作は1975年7月15日発売で、全13曲すべてこうせつの作曲。作詞はこうせつと喜多条忠に加え、かぐや姫のメンバーだった伊勢正三と山田パンダ(山田つぐと名義)も1曲ずつ提供している。

それ以上に変化の大きさを感じさせるのはアレンジャーで、鈴木茂、細野晴臣、高中正義、水谷公生、渋井博といったロック系ミュージシャンにアレンジを委ねている。加えて「マイダーリン」ほか数曲で、細野、鈴木、林立夫と、松任谷正隆を除くティン・パン・アレーのメンバーが演奏に参加している。南こうせつとティン・パン・アレーがPANAMのレーベルメイトだったことから実現した組み合わせであろうが、ことに「マイダーリン」は動き回る細野のベース、細かいフレーズを連打する林のドラム、間奏での鈴木のファンキーなソロフレーズなどが楽しめる、意表を突くファンクナンバーとなっているのだ。



「僕のこの足がも少し長ければ」は軽快なカントリータッチの曲で、ティン・パン・アレーのファニーな演奏に加え、吉田美奈子もコーラスで参加。鈴木茂編曲のシティポップ風「昨日にさようなら」では佐藤博による爽快なエレピの音色と、鈴木のスライドギターが印象的で、少し力を抜いた南のボーカルと見事なマッチングである。同じく鈴木茂編曲の「海になりたい」もトロピカル風ナンバーで、間奏の佐野正明によるソプラノサックスが爽快な印象を持たせている。



本作で最もロック色の濃い「嵐の航海」には水谷公生、武部秀明、渋井博らが参加。この3名にドラムの田中清司を加え全員がスタジオミュージシャンで結成された “DIG IT” は、南こうせつのバックバンドとして活動していた。いずれの曲も南の持ち味である暖かみにあふれたボーカルの魅力と、柔らかなソングライティングが存分に活かされており、その上でアレンジや演奏面では幅広い音楽性を提示している。もちろん、表題曲や「コンサートが終って」など南自身のアコギによるアコースティックなナンバーも収録されている。



1976年2月には、ソロシングル第1作となる「今日は雨」を発売。AORテイストで作られた楽曲は水谷公生のアレンジで、水谷自身によるプログレ風のギターソロがクールかつ艶やかな印象を与えている。B面「たぬき囃子」はコミカルで寓話的な歌詞に加え、レゲエのリズムに乗せたレイドバック感が心地よいほっこり系ナンバーで、ファンの間でも人気の高い1曲。AB面でかなり性格の異なる楽曲となっており、南こうせつの音楽性の幅広さを感じさせた。



その翌月には2作目のソロアルバム『ねがい』を発表。前述のこうせつのバックバンド “DIG IT" が全面参加しており、楽曲のバリエーションも前作同様に豊かなものとなっている。ロックテイストの「朝が来るまで」はまさに水谷らしいアレンジに仕上がっているが、一方で、日本人の琴線に響く大正ロマン風のメロディーラインを持つ「恋唄」では、尺八の名手・村岡実をフィーチャーし、ディープなエレジーを聴かせている。



日本人のシンガーソングライターとして初の日本武道館公演


そしてなんと言っても、南こうせつは『ねがい』を発表した同じ1976年3月に、日本人のシンガーソングライターとして初の日本武道館公演を成功させている。演奏メンバーはもちろん “DIG IT” が務め、その模様は同年7月にリリースされたライブアルバム『GOOD VIBRATION Mr.Kohsetsu in 武道館』に収録された。

このアルバムには、かぐや姫時代のナンバー「妹」なども歌われているが、全体にサウンド面はロック色が強調され、ソロ活動に入り、新たな音楽性に挑戦する姿がみえる。会場の熱気も存分に反映されており、まるでロックの観客を思わせる熱狂ぶりが収録されていることにも触れておきたい。

南こうせつは、どうしてもかぐや姫時代の「神田川」のイメージで捉えられがちだが、フォーク的な感性をベースにしながらも、サウンド面では多彩な方向性を模索していた。そんなPANAM時代のソロ作品群。後編は1977年以降の作品について紹介していこう。

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2025.12.20
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馬飼野元宏
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