2017年6月1日、ザ・ビートルズの歴史的アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』が発表されてから満50周年を迎えた。
僕がこのアルバムを初めて聴いたのはリリースから14年後の1981年7月11日。青盤『1967-1970』と赤盤『1962-1966』の2枚のベスト盤を聞きビートルズの全曲(当時)の4分の1を聞いたことになり十分かとも思ったのだが、やはり最高傑作を聞いてみようと『サージェント・ペパーズ』の日本盤LPを購入した。
溢れんばかりのアイディア、曲の豊かなバリエーション、録音の良さ、そしてあまりにスムースな流れに僕は一発でノックアウトされてしまった。
青盤で既に1~3曲めと13曲めは聴いていたのだが、13曲めの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」もアルバム最後という正しい場所に置かれると、その劇的且つ衝撃的なエンディングに一層迫力が増した。この一枚で僕はビートルズのオリジナルアルバムへの道を歩もうと決意したのだった。
しかしこの時僕が聴いたこのアルバムは、実はオリジナルとは異なるものだったのである。
イギリスでのオリジナル盤では「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の後に、犬にしか聞こえないという高周波音が数秒流れ、その後LPの送り溝に2秒、後に ‘サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ’ と便宜的に名付けられるメンバーの声のコラージュが刻まれていた。レコード針が上がらないとこのコラージュが延々続くという凝った趣向である。
しかしこの2つの “遊び” はアメリカ盤には収録されず、日本盤でも当初は送り溝ではない所に刻まれていて1回は聞こえる様になっていたらしいのだが、僕が購入した1976年からの再々発盤にはアメリカ盤同様、収められていなかった。
僕は暫くの間、ビートルズが意図したものと異なるものを聴いていたのである。それを解消してくれたのが、今から30年前にリリースされたCDであった。
1987年6月1日、オリジナルアルバムのリリースからちょうど20年後に『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は初CD化された。この年からビートルズのアルバムのCD化が始まったのだが、ここまで4枚、3枚とまとめてリリースされた中でこのアルバムは単独でのリリース。
CDのプラスチックケースも、28ページにも及ぶカラーのブックレットと共に更に厚手の紙のケースに収められる等やはり特別感があった。(家出中で余裕の無かった)当時大学3年の僕も発売日に購入した。
そして「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の最後に、ヒトにも聞こえる様少々周波を落としたらしい高周波音と ‘インナー・グルーヴ’ が加えられたのである。
‘インナー・グルーヴ’ は12回繰り返されフェイドアウトされていた。確かにレコード針をどのタイミングで上げるかは人によって違うのでカットアウトというわけにはいかなかったのだろう。オリジナルアルバムもプロデュースしたジョージ・マーティンによる好判断であった。
こうして1987年に新たな『サージェント・ペパーズ』の終わり方が誕生した。
日本盤ではこれが正真正銘初めての、ビートルズが意図した終わり方でもあった。2009年にビートルズの全オリジナルアルバムがリマスターされ再発されたのだが、『サージェント・ペパーズ』の終わり方は1987年版を継承していた。
そしてリリース50周年間近の2017年5月26日、昨年亡くなったジョージ・マーティンの遺児ジャイルズによる『サージェント・ペパーズ』リミックスが新たにリリースされ、ここでも ‘インナー・グルーヴ’ は12回繰り返されフェイドアウトされていた。ジャイルズも父の遺志を継いだのである。
それにしても今回の50周年盤、やはりちょうど満50周年の6月1日にリリースすべきではなかっただろうか。
30年前のCDも6月1日だったのだから。
というか、初CD化からもう30年も経っていて、LPから初CD化の20年よりも長いことに今、軽いめまいを感じている。
2017.06.03
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