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何度聴いても新発見!ブライアン・イーノ&デヴィッド・バーンの悪ふざけ精神

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ブライアン・イーノとデヴィッド・バーンのアルバム『ブッシュ・オブ・ゴースツ』がリリースされた月
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衝撃的な発見! ブライアン・イーノ&デヴィッド・バーン


音楽体験というものは、子供の頃こそその全てが新鮮だったものの、哀しいかな、何でも数をこなせばそんな感動も薄れていくというものだ。それは誰でも経験があるだろう。

若造のくせに、いきなり偉そうなことを書いて申し訳ない。しかし、浅く広く世界の音楽を聴いてみた今でもまだ、マンネリを超えた新たな感動と出会える機会はもちろんあって、半年に一回くらいは椅子から転げ落ちるくらいの衝撃的な発見をすることができる。自分にとってその一つがこの、ブライアン・イーノとデヴィッド・バーン(トーキング・ヘッズ)による『ブッシュ・オブ・ゴースツ(My Life in the Bush of Ghosts)』(1981年)であった。

2人のコラボアルバム「ブッシュ・オブ・ゴースツ」


このアルバムを初めて聴いたのは、自分の最も好きなジャンルの音楽がニューウェーヴというものだと自覚した後だった。ブライアン・イーノが、『モア・ソングス(More Songs About Buildings and Food)』(1978年)、『フィア・オブ・ミュージック』(1979年)、『リメイン・イン・ライト』(1980年)といったトーキング・ヘッズの名盤3作のプロデューサーであったという前情報も知らずに、「へぇ、アンビエントの元祖とあのオーバーサイズのスーツで気持ち悪い動きしながらアフロファンクを歌うバーンが一緒にやってたのか、さぞかしアヴァンギャルドな音なんだろうなぁ」くらいの軽いテンションで買ったレコードである。

しかし針を落とした瞬間、そんなヤワな想像をはるかに凌ぐ勢いで畳みかける騒々しいスクラッチにギターのカッティング、そして不気味な朗読をループさせたような人の声(出元不明なラジオDJの声らしい)のサンプリング… といった、ガラクタも同然なノイズの数々をコラージュさせてファンキービートに乗せた1曲目「アメリカ・イズ・ウェイティング」で、それはもう、白目を剥くほどノックアウトされてしまった。

決して、インテリぶったような捻くれた音じゃない、しかし、ただ、とにかく狂っている。しかも超踊れてハイになれる… なんてカッコいいんだ!! …完全にやられた。コラージュを用いた音楽はそれ以前にも聴いていたが、そのどれにも無かった “心地よいアナログ感” というのだろうか。とにかく、手作りの暖かみと、何より二人の “過ぎた悪ふざけ” のテンションがそのまま冷凍保存されてるような匂いがしたのである。

アフロビートを大胆に導入、イーノとトーキング・ヘッズの共同作業


トーキング・ヘッズとブライアン・イーノの共同作業は、先述の通り1978年から行われていて、特に『フィア・オブ・ミュージック』においては、バーンがこの頃から傾倒していたアフロビートを、ファンクやディスコの枠組みで大胆に取り入れ始めた。

ご存知の通り、ブライアン・イーノがアンビエント(環境音楽)の提唱者として、エリック・サティの現代的解釈とも(個人的には)受け取れる『アンビエント1 / ミュージック・フォー・エアポーツ』(1978年)を発表した頃のことである。と同時に、彼はディスコミュージックなどといった、当時シンセサイザーを導入したりして進化の過程にあった新たなジャンルにもいち早く反応しており、そのミーハーぶりを独特の感覚でプロデュース業に活かしていった。

『フィア・オブ・ミュージック』の1曲目、コンガの音が印象的なアフロファンク「イ・ズィンブラ」はバーンとイーノの共作だが、思いっきりサルソウル・レコードを彷彿とさせるガラージュ風ディスコに仕上がっている。そして次作、トーキング・ヘッズ史上最大の名盤とされる『リメイン・イン・ライト』でその世界観は全篇を彩り、“トーキング・ヘッズ=アフロビート” のイメージはここに成立した。

歴史的名盤「リメイン・イン・ライト」以前に完成していた作品


以上を踏まえて『ブッシュ・オブ・ゴースツ』に話を戻そう。実のところ本作は『リメイン・イン・ライト』以前にはもう完成していたそうなのだが、使い過ぎたサンプリングソースの権利問題などにより一年以上リリースが遅れていたようだ。しかし時系列的に考えると、『リメイン・イン・ライト』の完成度は本作の実験がもたらした功績であることは間違いないだろう。

バーン自身はボーカリストとしての顔は一切見せておらず、イーノとともにひたすら切り貼り(アナログ時代のサンプリング手法)に徹しているわけだが、彼のアフリカ音楽や文化に対する良い意味での “素人感” が、本作の最大の魅力である不気味な浮遊感や狂騒といった空気に繋がっているのだと思う。

素人感、と書いたが、これが意味するところは、他言語を理解しない外国人がその言語がもつリズムや雰囲気からそれをひとつの音楽、つまりノイズミュージックと捉え、ある種無邪気に行った実験性である(そういう些細なきっかけがノイズというジャンルの始まりなのかもしれないが)。

意味不明な言語の “リズム感” とファンキービートの汎用性


しかしこういった実験は往々にして、言語を理解できる現地人からするとアウトだったりする事があるから手痛い。収録曲の「コーラン」はタイトル通りイスラム教のコーランをサンプリングしたものだが、この内容に対してイギリスのイスラム教協議会が異議を呈し、その後のアルバムからは外される結果となった。そんな曰く付きなこともあり、ぜひ本作は初版のレコードで聴くことをおすすめしたい。

むしろ、それでしか彼らの真髄は堪能できないだろう。イスラムの言語が持つ独特の抑揚、浮遊するリズムにファンキービートを混ぜればそれはもう不思議、一瞬にして異国情緒漂うダンスナンバーになってしまうのだ。なんだか意味不明だけど、ぶっ飛んでてカッコいいトライバル感。そんな印象がレコードからダイレクトに伝わるのである。なんとも知性に欠ける感想だが、音楽なんて結局雰囲気がすべてなのだから良いではないか。同時に、人の声だろうが生活感のある雑音だろうが、とりあえずファンクのビートを乗せれば踊れてしまうという、ファンクが持つ無数の汎用性までも証明してしまった。

そしてB面では、それまでのファンクから打って変わって、イーノらしいシンセ音のレイヤーからなるアンビエントが展開される。同じノイズ(サンプリング)を使いながらも、イーノとバーン二人の異文化へのアプローチ、感性の違いが手に取るように分かるところが面白い。ここでは90年代テクノのアーティストたちが影響を公言しているように、その後のクラブミュージックのインスピレーションともなった。サンプリング手法は多くのヒップホップ勢にオマージュされているし、まさにワールドミュージックのごった煮な玉手箱なのだ。

B面はアンビエント、悪ふざけ精神こそニューウェーヴの真骨頂


思うに、こういった時代の何年も先を行く作品を作るアーティストというのは大概飽きっぽいのだと思う。飽きっぽくて、誰もやったことのないものをやりたがる進取の気性。そして彼らはいつでもやり過ぎる。そもそもノイズミュージック自体、メロディを用いた既存の音楽体系では満足できなくなった人々が最後にたどりつく音楽哲学の境地なのではないだろうか。

今の時代、新たな境地を見つけることは難しいかもしれないが、この『ブッシュ・オブ・ゴースツ』にはそういったやり過ぎな気概が思いきり堪能でき、何度聴いても新しい発見ができる楽しい “悪ふざけ” に満ちている。そんな悪ふざけ精神こそがニューウェーヴの真骨頂であり、ニューウェーヴのいちばん面白いところなのだ。

2020.07.07
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  YouTube / Brian Eno


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カタリベ
1990年生まれ
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