音楽シーンにおいていつの時代も “お騒がせネタ” としてあるのがパクリ疑惑。訴訟問題にまで発展することが現在でもありますよね。しかしこのケースは曲が似ているくらいの論争ではなく、そのシーンにおいてはかなりセンセーショナルなものでした。
88年、ラジオから流れてきたある楽曲に衝撃を受けました。
「何これ、もろツェッペリン!っていうか『最終楽章(コーダ)』(レッド・ツェッペリンの未発表楽曲を集めたアルバム)以降にまだあった未発表曲やろか?」
バンド名はキングダム・カム、曲名は「ゲット・イット・オン」と紹介されました。ヴォーカルの声はもろロバート・プラント、曲のリフはもろ「カシミール」(あと「ブラック・ドッグ」っぽいリフも)。
「パロディーか何かかな? そうでなければもろパクやなー」
そう思いながらも曲としてはかなり良い出来映えでした。当然、話題になります。音楽誌のニュースなどでも「ツェッペリンの真の継承者」といった絶賛もあれば「パクリ野郎」「クローン・ツェッペリン」といった批判もあって評価はまっぷたつ。というか批判のほうが多かった記憶があります。しかしながら曲としては完成度の高い「ゲット・イット・オン」。何度も聴きたい衝動にかられました。迷った挙句アルバムを購入することに。
ロバート・プラントに似ているとはいえ、あのハイトーンを全盛期のプラント並みに歌いこなすこと自体相当レベルが高い。曲の構成もしっかりしている。当然アルバムもいいんです。「カリフォルニア」っぽいツェッペリンライクな曲はあるものの、それほどツェッペリン臭がしない曲も結構あって割とバラエティに富んだ楽曲群。オールドスタイルのハードロックがうまく80年代風に昇華されており、かなりいいアルバムです。全米でも12位まで上がるヒットを記録しました。
キングダム・カムはドイツ出身のヴォーカリスト、レニー・ウルフによるグループ。レニー・ウルフはアメリカでストーン・フューリーというバンドを結成し、84年に「ブレイクダウン・ザ・ウォール」(これも名曲! 必聴!)をヒットさせ86年に解散。一度ドイツに戻ったあと、再度アメリカに渡って結成したのがキングダム・カムです。その後、ツェッペリン臭をなるべく消してセカンドアルバム『イン・ユア・フェイス』を89年に発表しますが、前作のバッシングのせいか思ったほど伸びずそのままバンドは解散となりました。
批判のもとになった「ゲット・イット・オン」。しかしこの「ゲット・イット・オン」が収録されてなければやっぱり物足りない。複雑な気持ちになりますが、アルバム『キングダム・カム』は私の中ではやっぱり名盤です。
80年代は、こうした「もろツェッペリン」なバンドがいくつか登場しました。なかでもおススメはモーターヘッドのファスト・エディ・クラークとUFOのピート・ウェイが結成したファストウェイ。収録曲「イージー・リヴィン」はもろ「ロックン・ロール」な名曲です。「ゲット・イット・オン」同様いろんな意味で楽しんでいただけると思います(笑)。あとは、グレイト・ホワイトというのがありますが、これはまた別項で。
ちなみにツェッペリンサイドがこれらのバンドを訴えたことはありません。逆に最近、「天国への階段」がパクリということで訴えられ、ジミー・ペイジが証言台に上がるっていうことはありましたが。
2017.11.09
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