2月27日

昭和を代表する歌姫が10人登場!秋に聴きたい【アイドル・ラブバラード】ベストテン

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秋の日に聴く音楽は、ラブバラードがふさわしい


樹々が色づき、枯葉が舞う秋の風景を見ていると、時に切なく、感傷的な気分に襲われる。そんな秋の日に聴く音楽は、テンポが穏やかでボーカルをじっくり聴かせるバラードがふさわしい。

そこで、昭和を代表する女性アイドル10名の作品(シングルとアルバムの曲)から、秋に聴きたいと思えるラブバラードを1名につき1曲選び、順位を付けてみた。感傷に浸れる秋の歌を中心に選んだが、王道だけでなくマイナーな曲も含めている。

ただ、10名の作品全てを聴いたわけではないので、取りこぼしや異論もあるはず。バラードの定義も曖昧なので、昭和アイドルファンが作ったプレイリストとして読み流していただければと思う。では10位から。

第10位:バンブー・ボート / 薬師丸ひろ子


1985年発売のアルバム『夢十話』収録曲。作曲は来生たかお、作詞は吉田美奈子。

薬師丸ひろ子は、「Woman ~Wの悲劇より~」、「時代」というユーミン、中島みゆきの2大バラードを筆頭に、シングル曲にバラードが多い。清らかな声で情念や感傷を超越したように歌うのが特徴で、聴くうちに心が澄んでいくようだ。

「バンブー・ボート」は初期のアルバム曲だが、今はいない彼との夏の思い出を振り切るように、明るく優しい声で歌い上げている。歌詞からは、秋の深まりにつれて夏の思い出が遠ざかる哀しみが感じられ、優しい声のなかに秋の切なさが垣間見える。

ちなみに、1988年発売のベストアルバム『セ・ン・テ・ン・ス』には、アレンジをシンプルにした別バージョンが収録されている。こちらはボーカルに感情が込もっているので、聴き比べてみてほしい。

第9位:愛されたいの / 松田聖子


1982年発売のシングル「野ばらのエチュード」B面。作曲は財津和夫、作詞は松本隆。

キャリアが長い松田聖子にはバラードの名曲が多い。『LOVE BALLADE』、『Ballad~20th Anniversary』という、アイドルのラブバラードの手本のような2つのベスト盤もある。秋にふさわしい聖子のバラードといえば「ガラスの林檎」や「瞳はダイアモンド」が思い浮かぶが、あまり知られていない初期の作品をここでは選んでみた。

歌詞はタイトルの通りで、いかにも聖子らしい ”愛されたいソング” の典型。あなたの愛が見えないことへの不安が、秋から冬への変化に重ねて歌われる。

この曲の聴きどころは転調。甘いメロディーがマイナーコードに一転し、心に秘めた悲しみが歌われる。急に哀愁が漂いはじめ、秋の冷たい風が身にしみる錯覚を覚える。



第8位:神様がいない月 / 南野陽子


1987年発売のアルバム『GARLAND』収録曲。作曲は岸正之、作詞は小倉めぐみ。

ナンノには秋の歌がよく似合う。それは「秋のIndication」と「秋からも、そばにいて」の2作品の印象が強いからだが、萩田光雄氏のエレガントで感傷的なアレンジが、物悲しい秋にピタリとハマるのも大きい。ということで、萩田氏の極上のアレンジが味わえる秋のバラードを、アルバムから選んでみた。

「神様がいない月」とは神無月、つまり10月。物悲しいメロディーに乗せて、海辺で別れるシーンが歌われる。特に2番のサビの歌詞は、胸につまされる。

 幸せなんかにならないで
 すぐに誰か みつけないで
 夕暮れが さみしくて
 悔やんだりしてね あなたも

別れが悲しすぎて、彼にはしばらく不幸でいてほしい、さみしさを悔やんでほしいと願う心。物悲しさを通り越して深い感傷に浸れること間違いない。



第7位:あなたがいた季節 / 小泉今日子


1991年発売のアルバム『afropia』収録曲。作曲は鈴木祥子、作詞は小泉今日子。

キョンキョンには、バラード曲を集めた『Ballad Classics』、『Ballad Classics Ⅱ』という2枚のベスト盤がある。ただ秋を感じる曲がなく、「木枯しに抱かれて」も定番すぎるので、これら以外から探した結果、この曲に行き当たった。

 あなたがいた あの季節に
 負けないほど輝いて
 もっと強い女の子に
 なれるように誓ったの

これは2番のサビの歌詞。夏の終わりに恋人と過ごした季節を思い出し、あの頃に負けないくらい輝いて強い女の子になれるよう誓う少女。恋人との記憶を「季節」という言葉に封じ込め、未来に活かそうとするいじらしさが、たまらなく切ない。

第6位:ハーフムーン・セレナーデ / 河合奈保子


1986年発売のシングル曲。作曲は河合奈保子、作詞は吉元由美。

河合奈保子が自ら作曲(作詞でないのがすごい)した初のシングルで、アイドルからアーティストに変化を遂げるターニングポイントとなった曲。それまで奈保子は「けんかをやめて」、「疑問符」など、秋のシングルにバラードが多かった。この曲も、アルバム『スカーレット』から11月にシングルカットされたもので、琥珀の枯れ葉が水面に散る秋に恋人への思いを歌い上げた王道のバラード。前半は美しい声、後半のサビでは迫力ある歌唱が存分に味わえる。特にサビは圧巻。「誰もみんなひとりぼっちだから~」の部分は、何度聴いても胸が詰まる。ピアノの弾き語りで歌う姿は、アイドルではなくアーティストの風貌だった。

なお、翌年3月発売のシングル「十六夜物語」もバラードの名曲。あまり知られていないが、この時期の奈保子には名作が多い。



第5位:曼殊沙華(マンジューシャカ) / 山口百恵


1978年発売の同名アルバム『曼殊沙華』収録曲。翌年にシングル「美・サイレント」のB面にも収録された。作曲は宇崎竜童、作詞は阿木燿子。

山口百恵の秋のバラードといえば「秋桜」が鉄板だが、ここではもう一つの定番バラードを選曲した。

曼珠沙華とは、秋に真っ赤な花を咲かせる彼岸花のことで、仏教では天界に咲く花とされる。百恵をプロデュースした酒井正利氏によれば、阿修羅像のイメージが百恵に重なり、アルバムタイトルを仏教辞典から探して名付けたらしい。この表題曲からは、神がかった歌唱と女の情念が伝わってくる。

歌は静かに始まるが、あなたへの思いを歌いつつ盛り上がり、伴奏もロックに変わる。サビでは盛大に鳴り響くエレキをバックに、百恵の叫ぶような歌声が炸裂する。アルバムのジャケ写も、女神のように神々しい。それでいて、レコーディング時点での百恵は19歳だったというから驚きだ。

第4位:めちゃくちゃに泣いてしまいたい / 工藤静香


1992年発売のシングル曲。作曲は後藤次利、作詞は松井五郎。

工藤静香は、バラードがよく似合うアイドルだと思う。デビューからわずか半年でスローバラード「抱いてくれたらいいのに」をシングルで出し、翌年の「恋一夜」では、歌詞の主人公に憑依したような熱唱を見せた。他のアイドルと比べバラード曲が多く、90年代の中盤から後半には「きらら」などの名曲が揃っている。

彼女はバラードのベスト盤も2枚出しているが、両方に収録された唯一の歌がこの曲。歌詞に秋の要素はないが、味わい深い三拍子のメロディーと歌声が素晴らしく、重くなく聴きやすいので選曲した。

特に、さまざまな表情に変化する歌声は必聴。少し甘えたような鼻声に強弱のメリハリが加わり、優しさの中にも哀しみが潜んでいるように聴こえるのがこの曲最大の魅力である。



第3位:リ・フ・レ・イ・ン / 中森明菜


1984年発売のアルバム『POSSIBILITY』収録曲。同年12月に特別盤シングル「北ウイング / リ・フ・レ・イ・ン」としても発売された。作曲は松田良、作詞は松井五郎。

明菜の代表的なバラードといえば「難破船」だが、秋のバラードといえばこの曲。

 セピア色の風に ことばをさらわれて
 枯れ葉のコサージュ ふるえながらはずす

出だしの歌詞から感傷的で、萩田光雄氏のストリングスとハープを多用したアレンジからは、吹きすさぶ秋の風を感じる。曲構成も凝っていて、AメロとBメロが2回続いてからサビで一気に盛り上がり、再びAメロ、Bメロが繰り返されて終わる。

聴きどころは、Aメロ、Bメロの明菜の歌唱。途切れ途切れに発声し、かすれる寸前の声を駆使して哀しみを表現している。とても18歳のアイドルの声とは思えず、百恵同様に神がかっていると感じる。



第2位:思秋期 / 岩崎宏美


1977年発売のシングル曲。作曲は三木たかし、作詞は阿久悠。

秋のアイドルバラードというテーマで真っ先に思い浮かんだのが、この曲。昭和を代表する阿久悠氏の歌詞は、高校を卒業した秋の日に学生時代の恋をあれこれ思い出し、涙を流すという感傷的な内容。思春期と対比させたタイトルも素晴らしい。

聴きどころはサビの歌唱だ。

 青春はこわれもの 愛しても傷つき
 青春は忘れもの 過ぎてから気がつく

韻を踏んだ美しい詞を歌う岩崎宏美の声は、歌詞の主人公に憑依しているかのよう。それもそのはずで、主人公と同じく高校を卒業して18歳だった当時の彼女に当てて詞が書かれたようなのだ。レコーディングの際の彼女が感情移入しすぎて泣いてしまったのも頷ける。サビがリフレインされるたびに音程が半音ずつ上がるのも聴きどころだ。

一方で、紅茶を飲んだり絵葉書を書いたりと、昭和の女子学生の生活様式が歌詞から垣間見えるのも興味深い。

第1位:You're My Only Shinin' Star / 中山美穂


1988年発売のシングル曲。作曲、作詞、編曲すべて角松敏生が担当。

最後はやはり、アイドルラブバラードの王道とも言えるこの曲になった。ミポリンからは、「ただ泣きたくなるの」とこの曲で迷ったが、月明かりが歌詞で重要な役割を果たしている点に秋を感じ、こちらを選んだ。90年代にバラードシンガーとしても名を馳せたミポリンの端緒になった記念すべきバラードである。個人的には、出だしの歌詞「月が波間に浮かぶと あたたかい夜がしのんでくる」と、2番の後にメロディーが一瞬止まる部分が大好きだ。

元々この曲は、1986年のアルバム『SUMMER BREEZE』の一曲で、再レコーディングを経てシングルカットされた。アルバムバージョンと聴き比べると、ミポリンの声が変化していて興味深い。リマインダーにも複数のコラムが掲載されているが、スージー鈴木氏の『中山美穂「You're My Only Shinin' Star」その歌詞に込められた伏線と回収』では歌詞を精密に分析していて、この曲の隠れた魅力を発見できる。

アイドルにとってバラードとは?


―― ということで、(第4位を除き)秋の歌にこだわり、昭和を代表する歌姫10名から選曲してみた。アイドルにとってバラードは、歌手として成長する上で必ず通る道であり、ターニングポイントになることが多い。そのせいか、バラードを歌うアイドルの声には表情が感じられ、普段は発しない声が聴けて興味深い。

今の時代、冗長なバラードはサブスクで飛ばして聴かれやすい。しかし、じっくり聴けば聴くほど、歌唱、メロディー、アレンジが一体で心に迫ってきて、聴いた後には余韻が残る。このリストをきっかけに、アイドルのバラードを味わってもらえたら幸いだ。

▶ 中山美穂のコラム一覧はこちら!



2022.10.24
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カタリベ
1966年生まれ
松林建
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