11月21日

なめ猫は死なない、M-BANDが作り出す日活映画さながらの世界観

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photo:Amazon  

レトロという言葉が一般的に使われ始めたのは、おそらく80年代後半だと思うが、それ以前のアーリー80sにも、その兆候があった。その顕著なものが50sブームなのだが、要するに、古いものが新しいという価値観は、80年代に生まれたものだと思う。

僕が高校1年だった84年に日活が70周年を迎えた。その記念に、往年の日活映画をダイジェストで編集した『アゲイン』が公開され、石原裕次郎、赤木圭一郎、小林旭、宍戸錠といった大スターが無国籍感溢れる、時には荒唐無稽な物語の中で暴れまわるその姿に夢中になった。

その中でも、登場人物の不良然としたしゃべり方や、マンボズボンにアロハシャツ、ダブルのズートスーツというスタイルに夢中になり、実際のところ、ストーリ―よりも彼らの服装ばかり目で追っていたように記憶している。

スクリーンの中で暴れまわるスターたちは、僕にとってレトロなんかではなく、まさしくニューウェイヴだった。

この日活映画の雰囲気をそのままに82年にデビューしたのがM-BANDだ。この時期は、「キッスは目にして」のヴィーナスや、原宿クリームソーダの店員が結成したブラックキャッツなど、フィフティーズの匂いをふんだんにちりばめたバンドが数多く活躍していたが、日本の50年代、60年代をコンセプトにしたバンドはM-BANDだけだろう。

このバンドの作詞作曲を手掛け、プロデュースしたのが津田覚氏。80年のツッパリブームの象徴的なキャラクターともいえる「なめ猫」の仕掛け人でもある。

猫にボンタン、中ランのような改造学生服や革ジャンを着せ、「死ぬまで有効」「なめられたら無効」と書かれた免許書は爆発的な大ヒットとなった。そして、このなめ猫の名前が「又吉」だったことを記憶している人も多いだろう。

ここでお気づきの方もいるかもしれないが、このM-BANDのMは又吉のMなのである。

しかし。甘いルックスと、60年代のエレキインストを基盤にリバーブを効かせた、いわば懐かしさを超えたサウンドがウリの彼らが、活動期間中このようなことは一切公言していなかった。

M-BAND解散後、津田覚氏がこのようなことを述懐している記事を読み、当時大ファンだった僕は大きな衝撃を受けた。


 みゆき通りは横丁曲がると
 マンボズボンの気取り屋娘
 恋の大穴見つけにきたぜ
 さがしにきたぜ
 いかすこの街へ

(3rd.シングル「GO! GO! 銀座」)


こんな、日活映画の雰囲気そのままの歌詞を、白い揃いのズートスーツというスタイルもそのままに、ロカビリーでお馴染みのヒーカップ唱法(エルヴィス・プレスリーの歌い方でお馴染みのしゃくりあげるような歌い方)で歌うその姿は、映画のワンシーンのようにイカしていた。

バンドマンとして生まれ変わった「なめ猫」たちは、銀幕の中のスターのようにアルバムごとに彼らが主人公のドラマを作り上げ、通算6枚のアルバムを発表。88年に一度解散している。

ボーカルの藤タカシ氏は、解散後は役者として、原田知世主演の角川映画『黒いドレスの女』など、数多くの映画やテレビに出演。90年代後半にM-BANDを復活させた後も精力的に音楽活動を行い、2005年には、自主レーベルを発足。現在も当時の世界観をそのままに活動中。

まさに A CAT HAS NINE LIVES(なめ猫は死なない)なのだ。

2017.05.15
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