10月5日

岡田有希子の変化、7枚目のシングル「Love Fair」の謎めき具合

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 1985年のコラム 
1986年12月21日 — 武道館を包む、渡辺美里の向こう見ずでまっすぐな声

都立松原高校出身「清水信之 / EPO / 佐橋佳幸 / 渡辺美里」つながる音楽のDNA

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岡田有希子から受けるイメージは?


岡田有希子から受けるイメージというと「真面目」「几帳面」「上品」… そういうキーワードばかりが浮かぶ。それは楽曲にも反映されていて、この人の曲からダーティーなイメージを受けるものはなかった。

デビュー曲「ファースト・デイト」をバックに出演していたグリコ「カフェゼリー」のCMを見て、「おとなしそうなお嬢さんだなぁ。芸能界でやっていけるのかな」といらぬ心配をしたのを覚えている。

当時は中森明菜の「少女A」のヒット以降、挑発的な女の子を主人公にしたアイドルソングがだんだん主流になっていた気がする。松本明子「♂×♀×Kiss」や桑田靖子「脱・プラトニック」、加藤香子「偽名」など、明らかに初体験を連想させるような… 個人的に “喪失歌謡” と呼んでいるけれど、そんな作品もあったりして、大胆な女の子が増えたなぁ… と思ったりしたものである。

竹内まりやの三部作は、ピュアなティーンエイジラブ


そんな中で竹内まりやが提供したデビュー曲からの三部作、すなわち「ファースト・デイト」「リトル・プリンセス」「Dreaming Girl 恋 はじめまして」は、ピュアなティーンエイジラブが描かれていてとても新鮮だった。このあたりの作品については、リマインダーのカタリベでもある指南役さんが熱く語られているので、ぜひそちらをお読みいただきたい

その後、「二人だけのセレモニー」、「Summer Beach」と、少しずつ恋がステップアップする様子を表現。「哀しい予感」では彼氏に裏切られてしまう切ない女心を歌うまでに至り、短期間で歌手としても女性としても成長していく過程が見られた。

7枚目のシングル「Love Fair」それまでのユッコとは違う独特の雰囲気


同世代の女の子の気持ちを等身大で表現できる貴重な存在だと思っていたのだが、次にリリースされた7枚目のシングル「Love Fair」(作詞・作曲:かしぶち哲郎)を聴いて私はかなり驚くのである。

イントロなしでユッコのファルセットから静かに始まるこの曲は、それまでの彼女の作品とは違う、独特の雰囲気に溢れていた。

 Love Fair 花束を添えて
 Secret あなたのお部屋に
 Love Fair 私のすべてを
 Secret そっと届けるわ

一見メルヘンテイストに思えるフレーズではあるが、このあとに続くのが

 花びら摘み取る いけない子
 やめて No No No…
 不思議な電波を放つのは誰の瞳?

である。2コーラス目に至っては、

 ときどきハードに責めてくる
 ダメよ No No No…
 身体のバランス 失って
 少し め・ま・い

「おいおい、何を言い出すのか、ユッコ!」と咎めたくなるような、淫靡とも取れるフレーズが続く。それまでの彼女のイメージとはあまりにもかけ離れているではないか。その上、この曲を歌っているときのユッコは、どこか空(くう)を見ているような視線で、振り付けもまるで宇宙と交信しているような変わった動きに見えて、この曲の奇妙さをより際立たせていた。

大人びたヴォーカルと、松任谷正隆の上質なアレンジ


 さぁ 熱いラブ・フェア
 Now 甘いキュートライン
 さぁ 恋は ハリー・アップ
 あなた 誘惑ドリーマー

そもそも「Love Fair」とは何なのか。イベントを意味する “フェア”? 男女の恋愛における大人への儀式をイベントとするならば、それが “ラブ・フェア”? 当時18歳だった私にはそうとしか考えられなかった。

ただ、そのようなフレーズがたくさん入っているにもかかわらず、全くエロチックに聞こえなかったのは、ユッコの真面目なキャラクターと松任谷正隆の上質なアレンジによるものなのだろう。

松任谷正隆はこのシングルの少し前にリリースされたサードアルバム『十月の人魚』でも全曲編曲を手掛けていて、竹内まりや、財津和夫、かしぶち哲郎、杉真理、そして小室哲哉といった作家陣による、ニューミュージック色の非常に強い作品となっている。ユッコのヴォーカルも表現力が増し、とても大人びていて、リアルな女性像を表現するヴォーカリストとして成長していくのかな、と思っていた。

「くちびるNetwork」でオリコン1位、さぁこれから!というときに…


しかし、「Love Fair」の謎めき具合と、同時期に放送された主演ドラマ『禁じられたマリコ』でのオカルトなイメージにより、ここから彼女がどういう方向に進んでいくのかわからなくなった。と同時に、我々の予想を裏切る展開で進んでいくのかもしれない、という期待も大きくなった。

囁くような歌い方に高音のファルセット、当時のマドンナあたりを下敷きにしたと思われるアレンジにファンタジー感あふれる歌詞… 何度も聴いているうちに癖になり、気がつけば「Love Fair」は彼女がリリースしたシングル曲の中で一番好きな曲になっていた。

ところがその後リリースしたシングル「くちびるNetwork」でオリコンシングルチャート1位を獲得し、さぁこれから! というときにユッコは私たちの前から永遠に姿を消してしまったのである。

姿が見えなくなっても彼女の歌声は永遠に残る。私はいつまでもユッコの歌声と素晴らしい作品の数々を忘れない。そして彼女がリリースしたシングルやアルバムが、あの事件によりスキャンダラスに扱われることなく、作品として純粋に再評価されることを強く望む。




2020.10.05
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カタリベ
1966年生まれ
不自然なししゃも
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