12月21日

アズテック・カメラの脱力バージョン、ヴァン・ヘイレン「ジャンプ」の弾き語り

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アズテック・カメラのシングル「オール・アイ・ニード・イズ・エヴリシング」が日本でリリースされた日(ジャンプ収録)
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アズテック・カメラと冬の思い出、ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター!


アズテック・カメラに「ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター」という名曲があるのはご存じの通りだが、“冬へと歩き出そう” と歌われたとき、あなたの歩く道は、どんな道だろう? 秋田育ちの自分は、やはり雪が積もった道だ。

ファーストアルバム『ハイ・ランド、ハード・レイン』を雪の降る大晦日に購入したのは以前のコラム(北国からの主張、10代のメンタリティに刺さったアズテック・カメラ)で記したとおり。このときもそうだったが、雪道を転ばずに歩くには、ちょっとしたコツが要る。うまく説明できないけれど、腿の内側に軽く力を入れる。そうすると姿勢はスキー初心者のような内股スタイルと化し、歩みが慎重に、なおかつ小刻みになる。20年近く、そういう歩き方をしていたせいか、東京暮らしが長くなった現在、たまに雪が降っても、ほとんど転ばない。むしろ雨の日の方が滑って転ぶ率が高い。

ヴァン・ヘイレン「ジャンプ」のカバーはアコギ脱力バージョン


アズテック・カメラのセカンドアルバム『ナイフ』が出たのも、やはり冬で、高3の自分は予約し、雪道をかき分け、発売日前日のフラゲ目当てでレコ屋に向かった。むちゃくちゃ寒い日だったけれど、レコが目の前にぶら下がると、不思議と寒さも気にならない。

このとき、『ナイフ』からシングルカットされた「オール・アイ・ニード・イズ・エヴリシング」も一緒にゲットした。というのも、タイトル曲がアルバムバージョンと違ってエディットされているうえに、B面はアルバム未収録、ヴァン・ヘイレン「ジャンプ」のカバーだったから。

アステック・カメラバージョンの「ジャンプ」はアコギの弾き語りスタイルで、原曲に比べれば完全に脱力バージョン。自分の記憶が正しければ、ヘヴィーメタル評論家の伊藤政則氏は、この曲のレビューに10点満点で0点を点けていた。“メタル好きに、この良さはわからんだろう” と、アズテック版「ジャンプ」に和んでいた自分は、このレコを聴きながら、窓のヒサシからぶら下がったつららを眺める日々。

レコードを買うと “貸して!” と言われる当時の常


レコを買ったことを友人に話すと、“貸して!” と言われるのが当時の常だったが、ここら辺の UKインディーズモノは “貸して!” と言われるケースはレアだ。田舎の “貸して!” 格付けでは、マドンナやシンディ・ローパーの方がずっと、ずっと上なのだ。が、この「ジャンプ」に関しては違った。“貸して!” 率が高かったのだが、それはこの曲の知名度の高さ、ひいては北国の人間のメンタルに響いたからではないだろうか?

「よかったら、俺にも貸してよー」―― 同学年のM君も、そのひとり。M君はマイペースを全身で体現したようなお人で、どこかヌボーっとしており、授業中はほぼほぼ寝ていた。洋楽の知識に長けているのは間違いないが、そんな性格だから、たまにしか話す機会がなかった。近隣の雪深い町から汽車で学校に通っていたが、住んでいる町のリズムがこんな感じなのだろうか、、、と思ったりもした。ともかく、“貸してー” と言われたら、断る理由はないし、多くの人に聴いてもらえるなら嬉しい。「明日返すー」と間延びした声でM君は去って行った。

で、翌日、M君がモジモジとやってきて、「実は…」と切り出した。「あのシングル、雪道に落として、なくしちゃって…」と……。探しても見つからず、弁償しようと慌てて汽車に乗って高校付近に戻り、レコ屋に戻ったが、店頭にはなくて注文したので、もうちょっと待って…… ということだった。M君らしいなぁと思いつつ、誠実な面が見られたことが、なんだか嬉しかった。ヌボーっな一面で、人を判断してはいけない、という教訓を得た高3の冬。

チャンスもレコードもまぶしい雪の中に埋まっている?


「ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター」には「♪ チャンスは、まさにまぶしい雪の中に埋まっている」という詩があるが、あのレコも雪の中に埋まってしまったのだろう。とりあえず、自分は教訓というチャンスを得た。弁償レコを受け取ったあとは受験やら卒業やらで、お互いに忙しく、その後、M君とは会っていない。

ここで告知!アズテック・カメラも絶対にかけるRe:minder主催のクラブイベント『好き好き UK 80’s』でレコ回しをします。1月19日(日)は真冬日の可能性大だけれど、春に向けて熱いイベントになれば、と。

最後に補足しておこう。春になり、アズテック・カメラの「ジャンプ」は12インチバージョンも国内盤で発表された。7インチバージョンはユルいままフェードアウトされるが、12インチバージョンはその後、ハードロッキンな展開となり、ロディ・フレイムが超絶ギターソロを聴かせる。伊藤政則先生は、このバージョンには一転して10点満点を付けてくれた。

2019.12.17
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カタリベ
1966年生まれ
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