11月1日

究極のラブソング、松任谷由実の「A HAPPY NEW YEAR」

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photo:Yumi Matsutoya Official Site  

松任谷由実の「A HAPPY NEW YEAR」は、1981年11月1日に発売された12枚目のオリジナルアルバム『昨晩お会いしましょう』に収録された曲で、同時に発売された18枚目のシングル「夕闇をひとり」のB面にもカップリングされている。

名曲「夕闇をひとり」のB面として発売にはなっているものの、メイン曲ではない単なるアルバム収録曲が、今や日本の年末年始を代表する曲になっているのだから “松任谷由実、恐るべし” だと思いませんか。

ちょっと話はズレるけど、正確に言うと「A HAPPY NEW YEAR」は「あけましておめでとう」という意味ではない。“A” が付いているので、「よいお年をお迎えください」が正しい意味で、新年を迎える前の段階で使うのが一般的だ。だから、年賀状に「A HAPPY NEW YEAR」と書くのは間違いで、「HAPPY NEW YEAR」と書くのが正解。この勘違いが日本で蔓延しているのは、クリスマスの定番表現である「Merry Christmas and a Happy New Year」(メリークリスマス、そしてよいお年を)が原因で、「A HAPPY NEW YEAR」が、単独で新年の挨拶として使えるのだと誤解したからだと言われている。“A” があると挨拶で、“A” がなければ祈り(想い)となるわけだ。

そんなことは松任谷由実だってもちろんわかっているわけで、この「A HAPPY NEW YEAR」という曲は、”新年おめでとう” と歌っているわけではない。“よい年になりますように” と大切な人への想いを込めた祈りの曲なのだ。

「今年も最初に合う人が、あなたであるように」
「今年も沢山いいことが、あなたにあるように」
「こうしてもうひとつ年をとり、あなたを愛したい、ずっとずっと」

とてもやさしい気持ちになれる詞である。そして、とても美しい曲だと思う。愛と恋は似ているようで違う。愛という字は真心(まごろこ)で、恋という字は下心(したごころ)と、桑田佳祐が「SEA SIDE WOMAN BLUES」で歌っているように、恋とは自分中心の気持ちで、愛とは相手を想う気持ちなのだ。

本当に人を愛したら、その人が、いつまでも元気で、幸せでいて欲しいと願うようになる。心から愛するあの人だけは、いつも笑顔で、幸せでいて欲しい。そういうピュアな気持ちを、松任谷由実が、年が変わる特別な瞬間で切り取って表現したのが「A HAPPY NEW YEAR」という曲だ。あくまで僕の自論だけど、この曲は究極のラブソングと言ってもいいのではないだろうか。

初めてこの曲を聴いた時は、正直ちょっと地味な曲だなと思ったことを覚えている。なるほどそういうことかと、この曲の本当の意味を僕が理解したのは「私をスキーに連れてって」の劇中歌としてこの曲を聴いた時のこと。

「5時間かけて振られに行くんじゃバカだな、バカだよな、、、」と言いながらも、矢野文男(三上博史)が池上優(原田知世)に想いを伝えるために、志賀高原から万座温泉に車を走らせるシーンをこの曲は見事に演出している。馬場監督は、この曲のためにこのシーンをわざわざ作ったのではないかと思うほどだ。今、あらためて観てみても、このシーンは色褪せていない。

このコラムを読んで、久しぶりに「A HAPPY NEW YEAR」を聴いてみたくなった方がいらしたらとてもうれしいです。2017年が、皆さんにとってよい年になりますように。

2017.01.03
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  YouTube / 松任谷由実


  YouTube / jincyoge
 

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カタリベ
1965年生まれ
藤澤一雅
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