ちょっと話はズレるけど、正確に言うと「A HAPPY NEW YEAR」は「あけましておめでとう」という意味ではない。“A” が付いているので、「よいお年をお迎えください」が正しい意味で、新年を迎える前の段階で使うのが一般的だ。だから、年賀状に「A HAPPY NEW YEAR」と書くのは間違いで、「HAPPY NEW YEAR」と書くのが正解。この勘違いが日本で蔓延しているのは、クリスマスの定番表現である「Merry Christmas and a Happy New Year」(メリークリスマス、そしてよいお年を)が原因で、「A HAPPY NEW YEAR」が、単独で新年の挨拶として使えるのだと誤解したからだと言われている。“A” があると挨拶で、“A” がなければ祈り(想い)となるわけだ。
そんなことは松任谷由実だってもちろんわかっているわけで、この「A HAPPY NEW YEAR」という曲は、”新年おめでとう” と歌っているわけではない。“よい年になりますように” と大切な人への想いを込めた祈りの曲なのだ。
とてもやさしい気持ちになれる詞である。そして、とても美しい曲だと思う。愛と恋は似ているようで違う。愛という字は真心(まごろこ)で、恋という字は下心(したごころ)と、桑田佳祐が「SEA SIDE WOMAN BLUES」で歌っているように、恋とは自分中心の気持ちで、愛とは相手を想う気持ちなのだ。
本当に人を愛したら、その人が、いつまでも元気で、幸せでいて欲しいと願うようになる。心から愛するあの人だけは、いつも笑顔で、幸せでいて欲しい。そういうピュアな気持ちを、松任谷由実が、年が変わる特別な瞬間で切り取って表現したのが「A HAPPY NEW YEAR」という曲だ。あくまで僕の自論だけど、この曲は究極のラブソングと言ってもいいのではないだろうか。