先日、昔ながらの瓶入りコーラを飲む機会があった。犬の散歩路途中に駄菓子屋があり、なにげなく覗くと隅の冷蔵庫から「だれか俺を買ってくれー」という叫び声が聞こえた。その声の主が瓶入りコーラだったのである。
瓶入りコーラは他のコーラと違って「うまい」理由が三つある。
一つ目はその形状と保冷性である。瓶が氷の役割をするので最後まで薄まらない。二つ目は値段の割に量が少ないので、その希少性ゆえ何故かうまく感じる。そして三つ目の理由としては「思い出」という調味料が加味されるからである。
私の場合、一口飲んだときに「I feel Coke」(井上大輔作曲:’87~’89)のメロディーと、瓶入りコーラを飲む松本孝美の映像が目の前に現れた。鼻の頭にポチッとした小さなホクロがかわいい娘だった。初代CMの女王とまで言われ、番組途中にCMが4本流れれば、その内1本には彼女が登場していたように思う。
「I feel Coke」シリーズは、ちょうど私の大学時代に流れていたCMだが、その音と映像から学生時代の思い出が連想され、走馬灯のように次々に頭に浮かぶ。「あんな事もあったな、こんな事もしたなあ」と。みんな青春のど真ん中であった。
瓶入りコーラを飲み終えると頭の中のスライドも終わり、犬が足下で暇そうにしている現実に引き戻された。
たぶん10年後に瓶入りコーラを飲んでも、同じ情景を思い浮かべることだろう。まさに人は世に連れ、世はCMに連れである。
編集注:
コカコーラのCM「I feel Coke」は、Sing Like Talkingの佐藤竹善はじめ、上田正樹などが歌っています。
2016.03.28
YouTube / VWOP07
YouTube / soikll5
Information