1987年はバンド・ブーム元年と言ってもいいだろう。ブルーハーツ、ユニコーン、レピッシュ、バクチクなどが次々にデビューし、音楽雑誌の数も一気に増えた。そんな中にコレクターズがいる。東京モッズ・シーンの中心にいた彼らだったが、チャンスが浮上してきたのは少し違った畑からだった。
86年~87年にファントムギフト、ヒッピーヒッピーシェイクスを中心としたネオGSブームがあり、ファンの女の子たちは60'sテイストのファッションに身を包んでいた(渋谷系の源流はここだとも言われる)。87年4月にリリースされた『Attack of… Mushroom People!』というオムニバスアルバムにコレクターズは「COLLECTOR」(「僕はコレクター」の初期音源)で参加していて、これが注目を集めたことによってレコード会社から声がかかった。
しかしこの括りに入れられたことを「イヤだったよ~。俺らはモッズなのにさ」と加藤ひさしは今も言う。他にもストライクス、レッド・カーテン(オリジナルラブの前身)、ワウワウヒッピーズ、ブラボー小松、沖山優司などが参加しているが、やはりキワモノ感、B級感が強いネオGSブームは実質的に1年ももたなかった(その後も好事家たちには愛され続けた)。
加藤ひさしのこだわり話を、高校時代から師事していたGREAT3の片寄明人に聞いたことがある。「加藤さんちにレコードを持っていくと、これアメリカ? イギリス? って聞くの。アメリカのアーティストのレコードは絶対にかけさせてくれなかった」。家でもタイトなモッズ・スーツを着ていたというから相当なものだ。
コレクターズの面白武勇伝はキリがないが、そのほとんどがギタリストの古市コータローに縁るものだ。面倒見がいい親分肌の彼を慕うミュージシャンも多く、かつてローディーを務めたエルマロのアイゴンは「俺がステージで倒れたら続きはおまえが弾くんだぞ」と言われ真に受けていたという。
80年代の東京では、こんな風に後に名を成すことになるミュージシャンたちがもつれ合って日々を過ごしていた。ヒロトとマーシーの物語も、草野マサムネの物語もここに重なる。「30年も続くなんて思っていなかったねぇ」と笑うコレクターズは、2017年3月1日に初めて武道館のステージに立つ。30年かけてたどり着いた夢の舞台を、たくさんのバンドマンが祝福するはずだ。
2016.11.22
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