筋肉少女帯のセカンドアルバムが出たのは1988年12月21日。この時代はバンドブーム直前であるがインディーズブームはすでに訪れていた。
インディーズ御三家と呼ばれた有頂天、ラフィンノーズ、ウィラードは動員がうなぎ登りだった。その時虎視眈々とブレイクを狙っていたのは大槻ケンヂであろう。インディーズチャートでは自主制作盤「高木ブー伝説」がブルーハーツとトップ争いするなどの実力見せていた。
インディーズブームも相まって、地下では人気バンドであった筋肉少女帯だが鳴り物入りで表に出たわけではなく、むしろメジャーデビューアルバムはひっそりと発売された記憶がある。
勿論名曲揃いなのだが、宣伝費をかけてもらえなかったらしいのとメンバーが流動的すぎて活動がままならなかったようだ。そんなバンドブーム前夜、大槻ケンヂはなんと『オールナイトニッポン』のパーソナリティに抜擢される。この時期に筋肉少女帯を知った人は多いだろう。
『オールナイトニッポン』ではまともなトークをせず、2時間下ネタと奇声を発していた大槻ケンヂだが、ラジオから流れる筋少の曲を耳にしてびっくりしたリスナーも多かったのではないだろうか。セカンドアルバム『SISTER STRAWBERRY』がリリースされ、ラジオから何曲か流れてくるわけだが、激しく、美しく、暗く、下らなく、演劇的… それは、一言では語れないものばかりだった。
バンドブームが訪れると「日本印度化計画」や「元祖高木ブー伝説」、「踊るダメ人間」などを発表、バンドとしての知名度があがっていく。
だが、私が押したいこのセカンドアルバムは今で言うところのメンヘラ向け要素が満載であり、当時のイロモノ的なイメージとは真逆の作品だったように思う。笑いの要素として「日本の米」が入っているが、この曲が入っているからこそ暗い曲が映えるようになっている。
後に続々とヒット曲を生み出す筋肉少女帯だが、当時はバンドブーム以降のファンとそれ以前からのファンとの意識の差が顕著に現れはじめていた。
筋肉少女帯は、お笑い要素の強いコミックバンドとして一般層に認知されていくが、セカンドアルバムまでのファンは「たまに笑いの要素が入っているだけで、本当はシリアスなバンド」だと思っていたはずである。今思うと何のプライドかわからないが、とにかく初期ファンには「自分は筋肉少女帯のファンだ」と言えない空気が蔓延していた。
この頃、表舞台でヒットしていたのは長渕剛、光 GENJI、工藤静香、中山美穂、久保田利伸あたりの曲だった。そんな時代に、このセカンドアルバムは確かにわけがわからないシロモノだったかもしれない。
歌詞が難解でプログレ的な「いくじなし」が、音楽ファンというよりも一部の演劇・サブカル系の人たちに受けまくっていたが、アルバム発売当時はそれほど話題にも上らなかったと思う。
普通、曲や歌詞というものは、「時代」を現しているものだが、このアルバムの歌詞は「時代」とはあまり関係ない気がする。
難解な歌詞と複雑な曲展開だが、素晴らしい演奏、素晴らしい曲、激しくキャッチー。今、この時代に聴いてもまったく飽きることがない。アルバムの評価は変わってきて、今や名盤と言えるだろう。
『SISTER STRAWBERRY』
若い人達に是非聴かせたいロックアルバムである。
2018.11.09
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