2001年11月29日。
ジョージ・ハリスンの訃報を知ったのは、翌朝の朝刊だった。
ジョンの時はまだ小学6年生だったので、ジョン・レノンという人物がこの世にいたことも知らなかった。だから、ジョージの時に初めて、これで本当にビートルズはなくなっちゃったんだなという思いになって、自然と涙が流れた。
ジョン・レノンのことを知るようになったのは、『ロッキング・オン』に寄稿されていた作家の松村雄策さんの文章からだ。それまで僕にとってジョンは、ビートルズのロックンロール担当というイメージ。「ツイスト・アンド・シャウト」でガニ股気味でリッケンバッカーを抱きかかえるようにシャウトする姿はロックンロールの象徴だった。
しかし、僕は、松村さんの文章を通じて、ジョン・レノンという人を深く知るようになる。松村さんは、ジョンが亡くなる直前にリリースされた『ダブル・ファンタジー』を持っていないという。欲しいとも思っていない。生涯手に入れるつもりもないという。それは、このアルバムを手にすることで、ジョンのアルバムがすべて揃ってしまうから――
僕は松村さんのそうした文章を通じて、『ビートルズを指針として生きてきた人たちが、どんな思いでジョンの死を受け入れたのか?』などと考えるようになった。多分それがジョージの時に流した僕の涙の理由だったと思う。
チャック・ベリーに憧れる不良少年だったジョン。その彼が常に苦悩し、世の中と向き合っていく姿を知り、いつしか僕も「こんな時、ジョンだったら、どんな答えを出すだろう」と考えるようになった。
だから、「ビー・バップ・ア・ルーラ」をシャウトするジョンも白いピアノを前に「イマジン」を歌うジョンも同じジョン・レノンとして、僕の心の中にある。不良少年は絶えず深化し、音楽は自身の鏡である。ジョンのロックンロールの根底は揺らがないまま変化して、自らの分身であるかのような音楽を残した。
ブランキ―・ジェット・シティは「ジョン・レノン」という楽曲の中でこんな風に歌っている。
音楽って不思議だよ
全てが見える その人が
抱いてる全ての世界が まるで
いつまでも押し寄せる波のように
そして、真心ブラザーズは「拝啓、ジョン・レノン」で――
拝啓、ジョン・レノン
僕もあなたも大して変わりはしない
そんな気持ちであなたを見ていたい
雨も雲も太陽も時間も目一杯
感じながら僕は進む
―― と歌った。僕が音楽に夢中になった頃、すでにジョンはいなかった。
しかし、ジョンが望んでいたすべての人類が共存する世界、理想を少しずつ理解できるようになってきた。そして、この世界はいまも繋がっている。「イマジン」の中で「僕たちの上にはただ空があるだけ」と歌っているように。
世界一のロックンロールフォトグラファー、ボブ・グルーエン氏の撮った、般若心経が刺繍されたスカジャンを着ているジョンの写真が好きだ。「イマジン」は般若心経に書かれている「色即是空」からインスピレーションを得たものではないかとも思ったりする。本当に大切なものは目に見えない。絶えず変化する世の中で、ジョンはいつも音楽の力を信じているすべての人の側にいてくれる。
ジョンの命日、12月8日がやってきて、クリスマスが訪れる。街に「ハッピー・クリスマス - 戦争は終った(Happy Xmas - War Is Over)」が鳴り響く季節。ジョンの歌声が街の喧噪にかき消される前に、僕もまた新たな一歩を踏み出さなきゃいけないと毎年強く思う。
※2017年12月8日に掲載された記事をアップデート
2018.12.08
YouTube / johnlennon
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