12月8日
小さなスタジオで聞いたジョンの訃報、そして形にできなかった音たち
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photo:@yokoono  

音楽ファンの間では既に何度も語られてきた1980年12月8日。つまりジョン・レノンの死。ビートルズの解散によって60年代が終わり、ジョン・レノンの死によって70年代が幕を閉じたという人もいます。

しかし私個人にとっては、ビートルズは正に奇跡&神がかり、ビートルズがなければこれほど音楽を好きにならなかったかもと思うほどですが、ジョンもポールもビートルズ以後は、まあ、優れたミュージシャンのひとり、でしかありません。なのでジョンの死は、もちろん早すぎる、そしてファンに銃で打たれるという衝撃的なものでしたが、正直言って、私には大きなできごとではありませんでした。ただそれを知ったときのことはよく覚えています。私は大阪の小さなレコーディング・スタジオにいたからです。

1978年に渡辺プロに入社し、79年から山下久美子の音楽制作アシスタント・ディレクターとしてバタバタ働いていた私ですが、一応、久美子以外にもいくつか動いてはいて、児島鉄兵、金森幸介、GASといったアーティストたちと交流していました。

児島鉄兵はかのSHOWBOATレーベルでアルバムを1枚出していた、ディランを思わせるフォーク・シンガー。金森幸介は元 ”都会の村人”、大阪のフォーク・シンガー。GASは石田長生が ”SOO BAAD REVUE” 解散後に、藤井裕 (bass)、松本照夫 (drums)、近藤達郎 (keyboards)とともに結成したバンド。いずれもいつでもレコードを出せる実力を持った人たちでしたが、なかなかことはスムーズには進みませんでした。

GASは、サンライズ音楽出版(今ある同名の会社とは別)と共同で制作する方向で、80年の3月にはレコーディング・スタジオのスケジュールまで押さえていたのですが、その直前、石やん(石田長生)から、「よんどころない理由でバンドを解散することになった。申し訳ないけど白紙に戻してほしい」と言われました。具体的な理由は聞いてくれるなということでしたが、メンバー間の目指すものの違いだったかと推測しています。

金森幸介は5曲ほどデモ・テープを作りました。それを録音したのが、前述の大阪の小さなスタジオです。80年12月9日、午前に大阪に入って翌日の昼には東京に戻るという1日だけの作業でした。ジョンの訃報を聞いたのは昼過ぎだったと思います。コントロール・ルームにいた私に、誰かが「ジョン・レノンが死んだで!」と大阪弁で伝えてくれました。ジョンが撃たれた12月8日の22:50は日本では9日の12:50ですから、ニュースは即刻世界に伝わったということですね。

児島鉄兵もやはりデモ・テープを作り、彼らの音を持って、いくつかのレコード会社にアプローチしましたが、結局ウンと言ってくれるところはありませんでした。単純に私の力不足も要因だったと思いますが、今考えると彼らはいずれも、70年代の影を(意識せずとも)背負いすぎていたのかもしれません。そして、80年代になって時代は違うものを求め出していたのだと思います。

金森さんは今もどこかで元気に歌っておられると思いますが、児島君、そして石やん、ベースの藤井裕ちゃんも、すでに天界へ行ってしまいました。

私が関わる少し前、1976年にリリースされた金森幸介のアルバム『少年』は、石田長生がプロデュースし、”SOO BAAD REVUE” が演奏しています。メンフィス・サウンドの質感に似たナチュラルで温かい演奏に、金森さんの顔に似合わない(笑)美声が映える名盤です。

2017.03.10
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カタリベ
1954年生まれ
福岡智彦
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