1月22日

時代を超えた名曲:渡辺美里「My Revolution」80年代の革命とはいったい何だったのか?

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渡辺美里を支えたアーティストたち


これまでの人生でこの曲を何度聴いてきただろう。初めてこの曲を聴いた少女時代から今に至るまで、最も聴いた曲といえば間違いなく渡辺美里の「My Revolution」だ。自転車を漕ぎながら口ずさんだ中学時代も、授業中に先生の話も聞かず外を眺めていた時も、社会に出てくじけそうになり悔しくて泣いた日も、いつも支えてくれたのは「My Revolution」だった。

1985年に「I'm Free」でデビューした渡辺美里。80年代の彼女の曲を作ったのは、言わずと知れた面々。小室哲哉、岡村靖幸、大江千里、木根尚登、佐橋佳幸、伊秩弘将などなど、ソングライティングのクレジットには素晴らしいアーティストたちが並ぶ。

特に1985年リリースのデビューアルバム『eyes』からセカンドアルバム『Lovin' you』までは、小室哲哉と岡村靖幸の名前が数多くクレジットされている。当時はコンペで曲の採用が決められていて、とにかく2人が競い合うように曲を書いていたという。

小室がピアノを弾き聴かせてくれた時、「鳥肌が立った」


この頃、すでに小室哲哉は、TM NETWORKでデビューを果たしていた。ちょうどセカンドアルバムをリリースした頃だった。小室の中でも、「このあたりでヒット曲を…」という焦りがあったと聞く。そんな1986年に「My Revolution」は生まれた。

渡辺美里は、初めてこの曲を聴いたときの印象をこう語っている。

ーー「私は当時、カセットテープで(デモ)をもらっていたんですが、この時は小室さんがスタジオに来てピアノを弾いてくれて、ピアノに併せて歌って、 “うわー、いいね!!” と鳥肌が立ったことを今でもはっきり覚えています」
(「Player 別冊 Respect EPIC」より)

小室自身もこの曲が生まれたときに確かな手応えを感じたことがうかがえる、そんなエピソードだ。

「My Revolution」アレンジと歌詞の素晴らしさ


この曲は、ディオンヌ・ワーウィックの「ハート・ブレイカー」にインスパイアされた曲でもある。のちに小室哲哉が「Stand by Meのようにイントロと歌メロが違うことにこだわった」と振り返っており、印象的なイントロから歌へと流れ込む構成は、思わず口ずさみたくなる。そしてイントロの “ふーう” という美里自身による浮遊感のあるコーラスが、まるでメロディーという物語へのイントロダクションの役割を演じているようでもあり、ますます曲に深みを与えている。

アレンジは美里サウンドには欠かせない大村雅朗が担当。デモの段階では、もの悲しくせつなかった曲に、“明るさ” を加えたのが大村のアレンジだったといわれている。小室哲哉と大村雅朗の名クリエーターの愛と情熱が詰まった曲に、渡辺美里の力強い歌声が、“希望” というメッセージを吹き込んだ。

また、川村真澄の歌詞も秀逸だった。「Revolution」というタイトルとテーマが、80年代の空気感によくマッチしている。多感な頃の悩みや葛藤に対して、自分なりの答えを見つけだしたことを「Revolution」と革命になぞらえたことは、もう見事としか言いようがない。

心の葛藤をテーマに歌った尾崎豊と、美里の力強さと凜々しさ


ちょうどこの時代を思い返すと、社会や大人による子供への支配や抑圧が強かった。自分を含め、思春期頃の子供たちの多くは “自分らしく生きること” を求めて、葛藤を繰り返していたように思う。そんな生きづらさを、これでもかとテーマにして歌っていたのが当時の尾崎豊ではなかっただろうか。

一方、渡辺美里は「My Revolution」の中で、そんな心の葛藤をこう歌った。

 わかり始めた my revolution
 明日を乱すことさ
 
 夢を追いかけるなら
 たやすく泣いちゃダメさ
 
 自分だけの生き方
 誰にも決められない

どんな混沌とした時代の中にあっても、“夢” や “希望” は時代の中に落ちているのではなく、自分の中にあるんだよ… と語りかける美里の歌声のひたむきさがとてもいい。自分なりの答えを見つけ、きりりと前を向く姿と輝くような真っ直ぐな瞳が、力強い歌声から伝わってくる。

「My Revolution」がリリースされた、3年前の1983年に尾崎豊は「15の夜」の中で、“盗んだバイクで走り出す” という名フレーズを生み出している。そして、まるで呼応するかのように「My Revolution」の中にも “バイク” という言葉が登場する。

 空き地のすみに 倒れたバイク 
 壁の落書き 見上げてるよ
 きっと本当の 悲しみなんて 
 自分ひとりで癒すものさ

―― そう。常に目線は上を向いているのが、この曲の持つ強さだ。

尾崎が「15の夜」の中で歌った “自由になれた気がした” という少しの含みを持たせた答えに対して、「My Revolution」では、自分なりの答えをはっきりと導き出し、その気持ちを断言している。



どちらの曲も表現は違えど、“自分らしさ” が奪われてしまいそうな時代の中、自分なりの答えを見つけ出そうとする人々の姿が描かれている。そんな “ひたむきな姿” こそが、時代を超えて、聴く人たちに力を与えてくれるのではないだろうか。

―― 時は流れ2000年代になっても「My Revolution」はドラマの主題歌やCM曲として起用され続けている。

松任谷由実は常々、「いつの日か私の名前が消え去られても、私の歌だけが “詠み人知らず” として残っていくことが理想」と話しているが、「My Revolution」もまた同じように語り継がれていく日が来るように思う。どの時代にあっても、人の悩みや葛藤はつきないものだから… きっとこれからも「My Revolution」は懸命に日々を生きる人々の背中を押してくれるだろう。人々の心に希望と力を与えながら…。

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2023.01.22
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