80年代が空前のディスコブームであったことに異論はないであろう。
いやいや何もマハラジャやレキシントンクイーンの話をするつもりはない。あくまで身の回りにあった話をしたい。
当時の大学学園祭といえば、未成年の飲酒などどこ吹く風で飲めや歌えやの乱痴気騒ぎ、女性蔑視などどこ吹く風のミスコン三昧であった。私の通っていた田舎の大学でさえ、普段授業に出てこない学生や近隣の高校生、短大生が大挙して押し寄せ、学園祭期間中はキャンパス中が人で溢れかえっていた。
各クラブやサークルが知恵を絞って出す模擬店が華やか。基本は食べ物系が多かったが、私のクラブは伝統的にディスコを運営していた―― ディスコ運営といっても特に音楽に造詣があるクラブではなく、むしろガチの体育会系クラブであったのだが、その活動費を稼ぐためにローコストでハイリターンが望める商材を選んでいただけである。
模擬店チケットの相場はせいぜい200~300円くらいであろう。しかし我々はディスコに出入り自由なワンデイパスを800円という高値で販売していたのだが、これが飛ぶように売れたのであった。
仕掛けはこうだ。ちょっと可愛い女子高生や近隣の女子短大生に無料でチケットを配る。「見に来るだけでいいよ。カクテルも一杯ご馳走するからさ」などと言葉巧みに誘導する。後は馬鹿な男子学生がそれを目当てに高価な800円チケットを買いに来るのを、耳垢をほじりながら座して待つだけである。このシステムを考え出した先輩は天才と言っていいだろう。もしかしたらその先輩が現在の出会い系サイト運営の元祖かもしれない。
さて、そんなディスコ運営だが選曲にも秘密があった。それは10曲に1曲の割合でチークを入れるのである。
まず、ボニーMの「ハッピー・ソング」あたりから始まり、次はマイアミ・サウンド・マシーン「コンガ」へ。さらに、ホット・ゴシップ「ブレイク・ミー(Break Me Into Little Pieces)」などを経由して10曲目に、ハイお待ちかね。ジョージ・マイケル「ケアレス・ウィスパー」へ突入させる。
1曲3分として9曲で27分、そこに3分のチークが入る。つまり1時、1時半、2時、2時半と30分おきに馬鹿な男子学生が大挙して押し寄せ、チークタイムが終わると潮が引くように去っていく。満潮と干潮が30分置きに起こるのが特徴のディスコであった。
そして、一日の最後は定番のボーイズ・タウン・ギャング「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」で締める。それが我々クラブのしきたりであった。
2018.05.13
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