7月15日

考えるな! 感じろ! 陣内孝則率いる「ザ・ロッカーズ」の本質

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日比谷野外大音楽堂で「AGE OF THUNDER ROAD SPECIAL 野音の地響き」が開催された日
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photo:Discogs  

1989年7月15日。日比谷野外音楽堂で、僕にとって日本のロックを語るうえで欠かせない大事件が起こった。『AGE OF THUNDER ROAD SPECIAL 野音の地響き』と題されたこのイベントには、ポニーキャニオンに所属するアーティストが一大集結した。

出演者は、「翼の折れたエンジェル」のソングライター高橋研。

現在TVのバラエティ番組で大人気のYOU率いるフェアチャイルド。

惜しくも夭逝した天性のロッカー川村カオリ。

元CCBの関口誠人。

80年代初期のロックンロールを独自の世界観でポップに昇華させたゴーバンズ。

当時確実に動員数を伸ばし、確固たる地位を築き上げたローグなど錚々たる面々。

そして、この日僕が心躍らせたのは、陣内孝則率いるザ・ロッカーズのオリジナルメンバーによる再結成だ。

ザ・ロッカーズは1976年福岡で結成。ザ・モッズ、ザ・ルースターズと並び、めんたいロックとも称されたシーンの顔役として80年代初頭を席巻した。

彼ら福岡出身のバンドの特徴としてまず挙げられることは、60年代のブリティッシュビート、70年代のパブロック、パンクロックを通過した、洋楽志向のサウンドにあった。アメリカのロックンロールを吸収し独自に昇華させたビートルズが港町リヴァプール出身であるように、同じく港町の福岡には、海を渡った音楽を洗練されたスタイルでオリジナルとして反映させる不思議な力があるのかもしれない。

ザ・モッズ、ザ・ルースターズがブルースを踏襲した湿り気のある60年代の大英帝国ならではのサウンドにこだわりを見せていたのに対し、ザ・ロッカーズは、ザ・ミュージック・エクスプロージョンや50年代のリアルロッカー、エディ・コクランからインスパイアされた楽曲からもわかるとおり、より初期衝動に傾倒したポップでシンプルなロックンロールがウリであった。

彼らのファーストアルバム『WHO TH eROCKERS』の帯に記されたキャッチコピー、「このスピードについてこれるか!」の一言が彼らのすべてを物語っていた。

80年にデビューしたザ・ロッカーズは約3年という短い活動期間を経て82年に解散している。89年当時、ザ・モッズはもちろん現役続行中、ザ・ルースターズの解散にも何とか間に合いライブも目撃している僕にとって、現役当時を見逃していたザ・ロッカーズの再結成は、まさに「待ちわびた時」だったのだ。

当日、15時スタートということで、昼過ぎに野音周辺に到着すると、出演バンドそれぞれの個性と同じように、様々なタイプのファンが集結していた。その中に混じって、いかにもな不良が目立つ。

もうすぐ夏も盛りを迎えるというのに、革ジャンにブラックジーンズ、陣内孝則のステージ衣装のようなシルクシャンタンの玉虫色をしたコンテンポラリースーツ、ラバーソウルや白いシャープシューズ。金髪のリーゼント。明らかにガラの悪い面々は僕と同じように「待ちわびた時」を目前に様々な思いを胸に秘めていたと思う。

ほとんどのアーティストがパフォーマンスを終わらせ、野音が漆黒の闇に包まれた19時過ぎ。ザ・ロッカーズが登場した。真っ赤なスーツで登場した陣内孝則。谷信雄のギターが前のめりに走りまくる。曲は「キャデラック」だ!


 Uターン禁止の片道切符
 後にはもう引けない 危険なドライブ
 俺はオンボロキャデラック


ロックンロールを体現したシンプルな歌詞。まさに「考えるな!感じろ!」だ。陣内のシャウトが身体じゅうを駆け巡る。

野音の地響きというイベント名どおり、観客席が大きなうねりを見せる。頭の中は真っ白になり、僕は柵を飛び越えた瞬間、警備員に胸を鷲掴みにされ弾き飛ばされそうになった。しかし、そんなこと問題じゃない。なんとか体勢を立て直し最前列に走ると、ギターの間奏で、背を向けた陣内がリーゼントに櫛を入れていた。

この瞬間、僕はここにいる。カッコイイことに上も下も右も左もなかった。理屈なんてどうでもいいということを思い知った。そんなロックンロールを全身全霊で感じた瞬間だった。

89年といえば、陣内孝則は俳優としてのキャリアを着々と積み上げてきていた時期だったと思う。しかし、このザ・ロッカーズの再結成は、そんな第一線の俳優が昔を思い出す懐古的な趣は一切なく、ロックンロールを生き方としたオトナたちが、おそらく1時間に満たない演奏時間で、初期騒動を昇華させた完膚なきまでのステージングだった。
  
ロックンロールは時には現実と対峙させ、時には僕らを違う世界に連れてってくれる極上の乗り物だ。そこには理屈がない。「考えるな! 感じろ!」だ。そしてこれが、ザ・ロッカーズの本質だ。



歌詞引用:
キャデラック / 山部善次郎

2017.09.26
25
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  YouTube / SuperGoodRide
 

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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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