ピンク・レディー伝説
Legend 08「モンスター」作詞:阿久悠
作曲:都倉俊一
編曲:都倉俊一
発売:1978年6月25日
ピンク・レディーの楽曲は作詞家:阿久悠の巨大遊園地
ピンク・レディーの歌は、ビックリ箱だ。私は当時小学生だったが、新曲が出るたび “さあ、とんでもない展開が来るぞ!” とブラウン管の前でワクワクしたものだ。作詞家:阿久悠が巨大遊園地をイメージしてピンク・レディーの楽曲を作ったというエピソードを知ったのは、30を超えてから。
けれど、子どもの頃なにも知らずとも、私はまさにジェットコースターに乗るがごとく、彼女たちの歌を聴いていた。なんだかわけのわからない名前の「ペッパー警部」、アラブの大富豪が出てくる「ウォンテッド(指名手配)」、宇宙人と恋する「UFO」……。子どもの頃は歌詞の世界観なんて深読みせず、ただただ変わった単語に反応して楽しんだ。ワケがわからないことが、最高に面白かったのだ。
「モンスター」はその中でも特にエキサイティング。いきなり男性の「ワッハッハッハ……」という笑い声(作曲家:都倉俊一の声だったとは!)を受けて “キャー!” と叫び、顔を隠し怖がる振り付けをするミイとケイ。この曲も振り付けを真似て、小学校で友達と歌い踊りまくった。今でも「♪モンスター」と聴くと、手の指を歪め、前に出してからぐいーんと引っ込めるダンスが自動的に出る。
「UFO」「サウスポー」に続く勝負曲「モンスター」
この曲が発売された1978年は、まさにピンク・レディー全盛期。デビューから2年目でシングルは右肩上がりの売れ行きを見せ、同年末には「UFO」で『日本レコード大賞』の大賞受賞、「サウスポー」で『日本歌謡大賞受賞』の大賞受賞。押しも押されもせぬ歌謡界のトップに立った。こんな短期間でアイドルが大賞を獲るというのは前代未聞だった。
「モンスター」は、「UFO」「サウスポー」といったメガヒットに続く勝負曲。まさに時代のモンスターになった彼女たちが「モンスター」を歌うという図式だ。ただ、データ的に見ると「モンスター」は折り返し地点。前作「サウスポー」の約146万枚に比べ売上は約110万枚、ミリオンセラーはこれが最後となっている。オリコンチャートでは週間1位を記録したものの『ザ・ベストテン』(TBS系)では1位をとれていない。ちなみにそれを阻んだのは、同じ作詞家:阿久悠による沢田研二の「ダーリング」だった。
けれど、当時の動画を見ると「モンスター」のパフォーマンスをする2人は、過熱のさらにその上をいくような異様なパワーを感じる。多忙も多忙、超多忙を極めていた頃で、体力気力もピークを超えた時期だっただろう。そのためかなり疲れている様子も見える。ただ、どこかランナーズハイというか、見えない何かに動かされているような不思議な迫力に満ちている。
1976年のデビュー曲「ペッパー警部」から実に3か月スパンで新曲を出し、恐ろしい勢いで売れていった彼女たち。周囲からの嫉妬も凄かったに違いない。加えて上下関係がはっきりしていた昭和の歌謡界では、ヒットを連発しても “出たばかりのアイドル” という立場のまま。委縮することも多かったはずだ。秒刻みのスケジュールの中で、まだ新人である自分たちのために多くの人を待たせてしまうことへの罪悪感もあっただろう。
モンスター もうお前は優しすぎて
モンスター ぼろぼろなのね
エキサイティングなパフォーマンスの裏側で、誰よりも自分の置かれた状況に驚き、震えていたのは、若くして時代の寵児となった彼女たち自身だったのではないだろうか。この歌詞に登場する “気弱なモンスター” はまさにピンク・レディーそのもの。実際、阿久悠がそんな彼女たちの姿を重ねて書いたという話をどこかで読んだことがあるが、なるほど納得である。
「モンスター」に込められたエール
また、この「モンスター」には、SF的、マンガ的な謎の歌詞が多かったそれまでのピンクレディーの歌とはちょっと異質な、メッセージ性が強い歌詞がひょんと出てくる。
顔に縫い目があったって
こわいひとと限らない
爪がキリキリとがっても
悪いひとと限らない
阿久悠からピンク・レディーの2人へのエールと同時に、価値観が偏っていた昭和の時代、そこから外れてしまった人たちへのエールも強く強く感じるのだ。いろんな個性があるし、いろんな愛し方がある。
モンスター さあ勇気を出してごらん
モンスター 大いばりでね
モンスター ふるえていちゃ駄目じゃないの
モンスター 手をあげるのよ
自信を持って。そう肩を叩いてくれているような言葉ばかり。私が子どもの頃 “ビックリ箱や!” と楽しんだ不思議な言葉には、そんな素晴らしく強く美しい魔法がかけられていた。古くなるはずがない。さあ、振り付けとともに何度も楽しもう。ワーオ!ワォワォワォ!
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2026.08.31