念願の初チーク、リチャード・マークスのバラードで一夜限りのシンデレラ

ブラジルでは、女の子が15歳になると「デビュタント」と言って、社交界へデビューをするという意味で盛大なパーティが行われます。招待される女の子は全員ピンクのドレスを着るのが常識です。

私が15歳の時、当時通っていた学校の創立者の孫がクラスメイトで、彼女は大人っぽく、リッチで、ホームドラマに出てくるようなセレブでした。彼女がデビュタントパーティを開くという噂になり、地味でブサイクな私は当たり前のようにパーティには誘われないと思っていました。しかし、イメージとは違い、彼女はとても謙虚で優しく、クラスメイト全員をパーティに誘ってくれたのです。

困ったのは私の方。ピンクのドレス！！！持ってない！！そんなセレブなパーティに呼ばれたことがない私は、一つ年上のいとこに相談し、１サイズ下のいとこのピンクのドレスを何とか着て、人生初めてのメイクをして、人生初めてのストッキングとヒールを履いて、主役の友だちだった近所の仲間と一緒に車に乗り、パーティ会場に向かいました。

普段とは違う私を見て、「今日は綺麗だね！！」「すごく素敵よ！」と、いつも全く私に関心をみせない女の子も男の子からも褒められ、私は初めて「綺麗になる」喜びを味わい、シンデレラのようになった気分になりました。当然ながらも、パーティは「儀式のワルツ」が終わるとやがてダンスパーティに変わり、みんなはドレスを着ていても構わずに踊って、はしゃいでいました。

チークダンスタイムになると、いつものように私はフロアの隅で休憩をし、次々と誘われていく友達を見送っていました。突然「一緒に踊らない？」という声が聞こえてきたので、顔を見上げると、そこにクラス一番の嫌われ者（コリンチャンスの大ファンでちょっと強引な不良男子）がいました。初めてチークダンスに誘われたこと、相手が彼であることに動揺し、思わず「ごめんなさい」と断ってしまいました。

その時、かかっていたのが、リチャード・マークスの「Right Here Waiting」。当時はとてもヒットしていた大好きな曲で、ピアノのイントロを耳コピーしていたことを思い出します。そしてなんとなんと、この曲の最後のワンコーラス部分で、憧れていたクラスメイトからダンスに誘われ、トキメク胸をこらえながら念願の初チークをぎこちなく踊ることができたのです！ 今ではとても良い思い出の曲、それが「Right Here Waiting」です。


Right Here Waiting / Richard Marx
作詞・作曲：Richard Marx
プロデューサー：Richard Marx / David Cole
発売（US）：1989年（平成元年）6月29日

2016.05.11