80’s Idols Remind Me Of… Vol.19 石川ひとみ / まちぶせ
石川ひとみ「まちぶせ」満場一致の大ヒットソング!
アイドルシンガー石川ひとみの最大ヒットといえば、それはもう「まちぶせ」で満場一致だろう。そう、言い方を変えて “石川ひとみのヒット曲といえば?” と問われれば、おおかたの人々が「まちぶせ」を挙げざるをえないほどに、彼女にとって唯一の大ヒットソングになっている。
デビュー以来80年代のうちに24枚のシングルをリリースしていた石川ひとみだが、一般的に知られるのがこの作品のみであり、結果として彼女の代表作として語り継がれ、歌い継がれてきたのが「まちぶせ」だったのだ。
歌手デビューは1978年、決定的ヒットソングは生み出せず…
石川ひとみの歌手デビューは78年5月、ひと足先にデビューしていた石野真子、そして前年デビューしていた榊原郁恵を2トップとして、フレッシュなアイドルシーンは彩られていた。コンスタントにヒットを輩出していたピンクレディーや山口百恵といった既存組を除いて77~78年に出現したフレッシュなアイドルたち―― 大場久美子、秋ひとみ、五十嵐夕紀、桂木文、金井夕子、天馬ルミ子、トライアングルらと同じ土俵で戦うことになった石川ひとみ… 実は結構なアイドル群雄割拠時代でもあったのだ。
榊原郁恵や石野真子が一般層に訴求するヒットを出していく中、石川ひとみは誰もが知る決定的ヒットソングを生み出せずにいた。80年代に突入すると華やかな “80年代アイドル” 時代が訪れ、松田聖子、河合奈保子、柏原芳恵ら後輩たちの後塵を拝する…。彼女の忸怩たる思いは我々の想像以上だったのではないだろうか。
不退転の覚悟で臨んだ「まちぶせ」リリース
デビューから丸3年を経過しようかという1981年に入った頃、本人自らから「まちぶせ」のカバーを願い出て11枚目のシングルとしてリリースさせたという。所属事務所の先輩であった三木聖子の楽曲(76年発売)であり、デビュー前のオーディションで歌っていた、まさしく本人肝いりの作品だったわけだ。この曲を最後のシングルにするつもりで、これぞ不退転の覚悟で臨んだのが「まちぶせ」(81年4月21日発売)だった。
基本的に作者荒井由実自ら歌唱指導した三木聖子バージョンを踏襲したストレートカバーではあるが、あえて歌謡曲風アレンジを崩さず、世に蔓延した “80年代風アイドル歌唱” から距離を置いたり、とにかく真っすぐで透き通った彼女のきれいな歌声を100%活かしきった仕上がりになっている。
作品に対する執念、歌うことの喜び!
なによりも3年以上 “待ちぶせ” してようやく歌えた楽曲だっただけに、作品に対する執念みたいなものや、ひいては “歌うことの喜び” のような歌手が本来保持している根本的な魅力が、聴き手側にじわじわと伝わっていったのだろう。石川ひとみの「まちぶせ」は、周知のとおり大きなヒットとなった。彼女の歌手生命は延命されたのだ。
「まちぶせ」は、オリコン週間シングルランキング6位を記録、81年末の『紅白歌合戦』でも歌われた。これぞ石川ひとみの “代表曲” が誕生した瞬間である。「まちぶせ」が老若男女に知られるのは、明らかに三木聖子ではなく、石川ひとみバージョンがあったからこそ。ちなみに、続く石川ひとみの12枚目のシングル「三枚の写真」(81年10月)も三木聖子のカバーだった。
※ KARL南澤の連載「80's Idols Remind Me Of…」
80年代の幕開けとともに、新たなアイドルシーンが増幅・形成されていった。文字通り偶像(アイドル)を追い求めた80年代を、女性アイドルと、そのヒットソングで紐解く大好評連載。
■ 堀ちえみ「待ちぼうけ」竹内まりやから女性アイドルへの楽曲提供第1号
■ 80年代最大の問題作!おニャン子クラブ「セーラー服を脱がさないで」
■ 岡田有希子と竹内まりや、80年代の革新が普遍化した「ファースト・デイト」
etc…
2020.03.10