何年か前のこと。会社女子と飲みながら青春ドラマについて語っていた時に、ふと「『青が散る』は知ってる?」と聞いてみた。ひと回り近く年下だし、マイナーなドラマだったし、知らないだろうな。
そうしたら彼女はニヤッと笑って言った。「親王塚さん、青散るフリークだったの?」。やだ、彼女もファンだったとは!
確か金曜ドラマだった。有名人の二世俳優をたくさんフィーチャーして話題を呼ぶ。出演は石黒賢や二谷友里恵、佐藤浩市、遠藤憲一、川上麻衣子など。今考えると贅沢なメンツである。新設大学のテニスサークルを舞台に、恋愛模様やモラトリアム感がきらきらと描かれていく。
まさにガラスのリンゴ達! 女子高生の私は暗い目をした遠藤憲一が大好きで、貝谷浅海役の彼に恋をしていた。佐藤浩市は片思いに揺れる男子学生を、粗っぽくも情感豊かに演じていた。
そんな胸キュンドラマの主題歌だったのが松田聖子の「蒼いフォトグラフ」だ。「青い」じゃなくて「蒼い」である。
ああ、切なさが脈を打つ! 萌え死に必至! 目が覚めるような淡さとまぶしさに満ちたイントロに導かれ、青春の光と影があの舌っ足らずなボーカルで綴られる。作詞は松本隆、作曲は呉田軽穂(松任谷由実)のゴールデンコンビ。完敗だ。私は身もだえしながら、この歌世界に全身を委ねたのだった。
今は皆一緒だけれど、この日々は確実に終わるというどこか冷めた視点が切なさに拍車をかける。未来への憧憬をぼんやりと重ねつつ、カセットが擦り切れるくらい何度も聴いた。
実はこの曲、最初は15thシングル「瞳はダイアモンド」のB面で、ほどなく、ジャケットタイトルの文字フォントを上げ、両A面として販売されるようになったそうだ。
今もこの曲を聖子のナンバー1として挙げるファンは多いと聞く。ああわかる、本当にわかるよ。と、もう会わなくなった青散るフリークの彼女を思い出し、元気かななんて思っている。
蒼いフォトグラフ
作詞:松本隆
作曲:呉田軽穂
発売:1983年10月28日
2016.01.31
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