聴き慣れたBGM、メン・アット・ワークのヒット曲「オーバーキル」
日常がコロナ前に少しづつ戻りつつある今日この頃、シドニーに行ってまいりました。オーストラリアにはなんだか惹かれるものがあります。
観光だけでなく、広大な自然や美味しい食材や、ワイン、ビールも楽しみ。コンパクトに楽しめるのがシドニーの魅力だと思います。日中観光した後に、ホテルでその日の振り返りをしながら飲むワインは最高です。オーストラリアはワインが美味しくて、街中の酒屋さんで日本であまり見ないようなワインを買って飲むのも楽しみの一つです。
ホテルのすぐそばにあった酒屋さんで、白ワインを探していたら見つけた「ヘッド・オーバー・ヒールズ」という銘柄。迷わずジャケ買いならぬ、ラベル買い。頭の中はすっかり、ティアーズ・フォー・フィアーズ。「ヘッド・オーヴァー・ヒールズ」を口ずさみながら店内を引き続き物色していると、お店のBGMが聴き慣れたイントロに。「あ! オーバーキルだ!」オーストラリアのバンド、メン・アット・ワークのヒット曲ですね。
もう、イントロでわかるわかる! ウキウキしながらレジの方に「これ、メン・アット・ワークだね、大好き!」と話しかけたらニヤリと笑って「1981〜!」と返されました。
世界的に大ヒットした「ノックは夜中に」
旅をしていると突然、その場所が異次元に飛ばされたような不思議な感覚になったりします。手に入れたワインといい「1981」というワードにしてもそう。え? どういうこと? 今、どこだっけ? いつだっけ? と、頭の中にいろんな思いが一瞬で交錯する。
「オーストラリアでは有名だよ」とか「いい曲だよね」とかでなく、いきなりの「1981」って――。わかった!この人、絶対80年代が好きだ。日本人だったら、Re:minderを読み漁ってるタイプじゃん。俺は、彼らが1981年ってことを知ってるという意図なのか、もしかしたら、80年代は最高って意味かも?
「じゃあ、良い夜を」でそのまま別れてホテルでワインを飲みながらニヤニヤ。しかし、さっきかかっていた「オーバーキル」は今からちょうど40年前の1983年リリースですよね。
1981年と言ったのは、日本でもお馴染みの「ノックは夜中に(Who Can It Be Now?)」がオーストラリアでリリースされた年を示したのか、それとも、もしかしたら、メン・アット・ワーク=80年代 で、1981年はレジの彼にとって思い出深い年なのかと深読みしたり。旅の神様にプレゼントしてもらった良い出来事でした。
オーストラリア人の気骨に合うメン・アット・ワークの魅力
さて、メン・アット・ワークの「オーバーキル」はこれまでリリースしたシングルと同様の彼らの魅力が溢れている明るい曲調ではありますが、すこーし寂しさを感じずにいられません。
1982年、世界的に大ヒットを記録した「ノックは夜中に」、そしてこれに続く「ダウン・アンダー」で国民的スターとなり、生活が変わりすぎてしまったことをむしろ嘆いているような曲に感じます。
この「オーバーキル」がリリースされた1983年の前年は、彼らが世界進出した年でもあり、グラミー賞最優秀新人賞に輝いた年でもありました。彼らを取り巻く環境が一気に変わっていったことも想像できますよね。
MVは、彼らの故郷であるメルボルンで撮影されています。マジックアワーとも言える紫色の空と、街の灯火。メルボルンの夜景が寂しくも感じます。ヒットを飛ばして、自分たちの生活はあまりにも変わりすぎた、それでいいのだろうか?と愛するメルボルンで問いかけているように見えてきます。
今回は、オーストラリア囚人遺跡や、シドニーのニュー・サウス・ウェールズ州立美術館の新館を訪問し、国を作り上げた先人たちや、先住民たちへのリスペクトが近年高まっていることを肌で感じてきました。
メン・アット・ワークがオーストラリアでいまでも、愛される理由は ”ダウン・アンダー” であることの誇りを感じさせてくれるからではないでしょうか。そんな気持ちが、「オーバーキル」のMVでも強く感じることができます。
”ダウン・アンダー” とは、オーストラリアやニュージーランドはイギリスから見ると地球の下にあるという意味ですが、あえて、こういう出自を誇るオーストラリア人の気骨に、この曲が合っているのかもしれません。
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2023.05.18