スライダーズを初めて聴いたときの体験は、映画『BLOW THE NIGHT!夜をぶっ飛ばせ』の劇中歌として。しかし、スライダーズの存在自体を知ったのは、それより少し前、1983年の初夏ぐらいだったと思う。正直、記憶があやふやなのだが、『ロッキング・オン』誌に載った小さな記事。そこにデビューしたばかりのスライダーズが紹介されており、ライブ中、オーディエンスに “つまんねえ客” という言葉を吐いた… というようなことが記されていた。
こういう反抗的なものが、妙にかっこよく映るのは、ティーンエイジャーの脳内フィルターがなせる技だろう。当時、高校2年だった自分の心に刺さり、いつかこの人たちの音を聴いてみたいと思い、それが『BLOW THE NIGHT!夜をぶっとばせ』でかなった。この映画は本物の非行少女=高田奈美恵が、そのままの非行少女を演じるということで話題になっていた。つまり、映画の内容そのものが、とても反抗的であったのだ。
そんな映画の中での、スライダーズだ。劇中では『SLIDER JOINT』から、タイトルに引用された 「Blow The Night!」をはじめ数曲が使用されている。何と言ってもオープニングの 「マスターベイション」でぶっ飛ばされる。この場面は彼らのライブがとらえられているが、メンバーは4人ともふてぶてしい感じ。とりわけ、ルーズなビートに乗ってシャウトするボーカル、村越弘明=ハリーに目が釘付けになる。劇中でほぼフルコーラス使用される「すれちがい」が流れる場面でも、ステージで歌うハリーの姿が挿入され、河合かずみの着替えの場面も重なったことで、妙に忘れられないシーンとなった。
そんな流行りの曲の耳当たりの良さに比べると、スライダーズのサウンドの主役というべきギターのささくれた音は、耳に刺さってくるような感じ。イントロだけで持っていかれる「Blow The Night!」から、ノリのよい「Let It Roll」まで、鋭利なギターの音が響き渡る。2本のギターの絡みでいうと、しばしば例に出されるローリング・ストーンズ、とりわけミック・テイラー在籍時のストーンズのように泥臭くてブルージー。「あんたがいないよる」のズルズルと引きずるようなルーズな雰囲気も最高だ。この時代にこういう音を出していた日本のメジャーバンドは、パッとは思いつかない。