ところが、ビートルズが「I Want To Hold Your Hand」で米国上陸を果たすと、雪崩を打つように英国のアーティスト達が流入し、瞬く間に米国の音楽市場は「米英のアーティストが世界に発信」する場へと進化した。70年代に入ると英国以外の外国人アーティストも増え、そのトレンドは80年代にピークを迎える。具体的に言うと、80年代全522週のシングルチャートのうち、米英以外のアーティスト15組が21曲で45週もの間、No.1の座を奪ったのだ(全体の9%)。
中でも、80年代前半のオーストラリア勢の活躍には目を見張るものがあった。ビルボードによると、80年代に最もヒットしたシングルはオーストラリア出身の女性シンガー、オリビア・ニュートン-ジョンの「フィジカル」である。更に、2004年に出版された『100 Best Selling Albums of the 80's』によると、マイケル・ジャクソンの『スリラー』に次ぐヒットアルバムは、オーストラリアのハードロックバンド、AC/DCの『バック・イン・ブラック』であった。この後も、エア・サプライ、リック・スプリングフィールド、メン・アット・ワーク、インエクセスなどが続いた。
それにしても、当時のオーストラリアは人口が1,500万人程度で、その中からこれだけのアーティストを輩出したのだから大したものだ。その一方で、オーストラリアは旧宗主国である英国の人々から「地図の下の方」「地球の裏側」の意で「ダウン・アンダー」と呼ばれてきたが、少なからず蔑視的な意図も込められていたのではないかと思う。現地では「No Longer Down Under」と書かれた南北逆さまの世界地図が売られている。
Down Under / Men At Work 作詞・作曲:Colin Hay / Ron Strykert プロデュース:Peter McIan 発売:1981年10月
脚注: 「I Want To Hold Your Hand」(1964年2月1日1位) 「Physical」(81年11月21日1位) 『Thriller』(82年12月25日1位)※アルバム 『Back in Black』(80年8月23日4位)※アルバム 2016.04.14