クリスマスが過ぎれば大晦日は駆け足でやってくる。大晦日と言えば、紅白歌合戦。
普段ほとんどテレビは見ない僕でも、昭和から続くこの大晦日の恒例行事に参加することで、今年も無事に終わったなと、しみじみ実感できるのだ。かつてはこの紅白で、出場歌手の楽曲テロップと共に、出身地が表記されていた。諸般の事情で、このテロップは近年なくなってしまったようだが、それでも同じ時代を過ごした馴染みの深いアーティストが出場するのは嬉しい限りである。そして、今年、我が東京都出身のエレファントカシマシが初出場を果たす。
僕は中三の時に、当時高校生だったエレカシのライブを観たことがある。彼らはふたつ年上なので、高二のエレカシだ。
場所は、渋谷の南口。もう名前は忘れてしまったが、駅に隣接する歩道橋のすぐ真下にあったライブハウス。50人も入れば満員になってしまうような小さな場所だ。ここに同級生の兄貴が出演するというので、誘われて出かけた。この日偶然にもアマチュア時代のエレカシが出演していたのだ。当時の高校生の大半は、ハードロック系のコピーバンドだった。その兄貴のバンドもレインボーのコピーをやっていたように記憶している。
80年代には、高校生が気軽に出演できるライブハウスが都心にはいくつもあった。新宿のヘッドパワー、代々木のステップ、渋谷のラママの昼の部や、今年惜しくも閉店してしまう新宿のジャムなんかも気軽に出演できた。チケットのノルマも高校生でも賄える範囲で、誰でもいっぱしのロッカーとしてステージに立つことができた。今の高校生で、バンドやっているヤツってどのくらいいるのだろうか?
閑話休題。
そんなハードロック系ばかりのバンドの中で登場したエレカシの異彩は今でもはっきりと覚えている。メンバー全員がスーツで登場。確か女性のキーボードもいたように記憶している。ラプソティの頃のRCサクセションやストーンズを彷彿とさせるツインギターの横ノリのロックンロール。
フロアに食らいつくようなミヤジの太々しさも相まってそのインパクトに魅了された。高校生とは思えない圧倒的なステージだった。
彼らは、それから5年後の88年3月21日エピック・ソニーよりアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』、シングル「デーデ」でデビューを飾る。その時は、「あの時のバンドだ!」と感激もひとしおであった。そして、すぐに渋谷のライブハウスでの残像へと繋がった。
デビュー後のエレカシは、アマチュア時代の贅肉をすべて削ぎ落し、デビュー曲「デーデ」では「心も体も売り渡せ 金があればいい」とあるように、生きる根源にある真理を時にはシニカルに言い放ち、そして時には、己の道を突き進む明日への希望を見出してくれた。
くだらねえとつぶやいて
醒めたつらして歩く
いつの日か輝くだろう
あふれる熱い涙
いつまでも続くのか
吐きすてて寝転んだ
俺もまた輝くだろう
今宵の月のように
97年に発売された名曲「今宵の月のように」の包み込まれるような優しさで、当時仕事にプライベートに行き詰っていた僕は何度助けられたか分からない。
そんな個人的な物語を経てエレカシが紅白歌合戦に出場する。初めてライブを観てから34年。あの時の高校生バンドが、2017年を締めくくる檜舞台に上がるのだ。
ミヤジの佇まい、細やかな表情はあれから少しも変わっていない。しかし、その変わらない佇まいの背景にある、ブレずに深化を遂げたバンドの歴史、時の流れの重みを感じずにはいられない。
大晦日には、当時の渋谷の風景を思い出しながら、そんな彼らの姿を堪能したいと思う。
歌詞引用:
デーデ
今宵の月のように / エレファントカシマシ
2017.12.29
AppleMusic
YouTube / LesBeat2014
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