2026年5月、私たちのもとに信じたくない報せが飛び込んできた。伝説の特撮ヒーロー番組『宇宙刑事ギャバン』で、主人公・ギャバンこと一条寺烈役を演じた大葉健二さんが天に召されたのだ。リアルタイムで大葉さんに魅了されてきた世代の私たちとしては、とてもギャバンオープニング曲の歌詞のように「♪ギャバン! あばよ涙」とはまだ言えない心境だが、せめて今は大葉さんの元気なお姿を偲びつつ、本稿をしたためたい。
令和の世に蘇った伝説の宇宙刑事
遡ること今年の2月、あの伝説の宇宙刑事が、令和の世に蘇った。2026年、新たな特撮シリーズ『PROJECT R.E.D.』が始動。その第1弾作品として『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』の放送がスタートし、大好評を博している。そこで1982年当時、年少者のみならず中学生すら夢中にさせる新しさのあった、伝説の『宇宙刑事ギャバン』とはいったいどのような作品だったのか振り返ってみたい。当時、級友が発した何げないひと言が今でも忘れられないのだ。
―― あの『宇宙刑事ギャバン』ゆーやつ、おもろいな。
その頃は、今ほどオタク文化が確立されておらず、中学2年にもなって変身ヒーロー番組を欠かさず見ているのはクラスでも私ぐらいなものだった。ただ、マニアではなかったその級友にとっても興味を惹かれるほど、『宇宙刑事ギャバン』は新しく、そして面白かった。
『宇宙刑事ギャバン』がスタートした1982年の時点で、特撮テレビ界には『ウルトラマン』と『仮面ライダー』という不動の2大ヒーローが既に存在していた。それに続くのが『スーパー戦隊シリーズ』ということで、以降に誕生する特撮ヒーローも、先行するこれら3シリーズの何らかの発展形になると思われた。しかし、そんな予想を裏切り、全く新しいヒーローが生まれたのだ。特撮が魅力の『ウルトラマン』、アクションが魅力の『仮面ライダー』と『スーパー戦隊シリーズ』。そしてその両方を兼ね備えたスペースオペラの魅力に溢れた『宇宙刑事ギャバン』。面白くないわけがない。
大葉健二、命知らずの切れ味鋭いアクションが炸裂
主人公のギャバンこと一条寺烈を演じたのは、千葉真一が率いるJAC(ジャパン・アクション・クラブ)に所属していた大葉健二。『仮面ライダー』『人造人間キカイダー』などのスタントマンから、『バトルフィーバーJ』『電子戦隊デンジマン』での戦隊メンバー役を経て、この『宇宙刑事ギャバン』でついに主役の座を射止めた。大葉は東映のプロデューサーからこの話を受けた際、視聴率2ケタに届かなければクビだと言われていたらしい。
「私は確信しました。私の血を燃え上がらせるコツをよく知っているプロデューサー達だなと。そして私が一番燃えた決定打は!この一言です。『大葉くん、ギャバンのメインテーマは愛、愛なんだよ!』……背筋に勇気が走りました。首を賭けて来るんだったら、こっちは得意のアクションで命を賭けてやるぜ!って、本当に素直にそう心血からそう思いました」
大都社・STコミックス『宇宙刑事ギャバン』所収のインタビューより
そんな大葉の演技は冴えに冴え、二枚目半的な役柄をユーモラスに演じつつ、命知らずの切れ味鋭いアクションが炸裂した。ちなみに、プロデューサーが力説したメインテーマ “愛” が見事に結実したのは、ギャバンが行方不明だった父とついに再会を果たす第43話「再会」。涙なしには見ることができない名編である。
巨匠、渡辺宙明と「宇宙刑事ギャバン」の出会い
そして、『宇宙刑事ギャバン』をはじめとする宇宙刑事3部作全ての音楽を担当したのは、アニソン・特ソンの巨匠、渡辺宙明。渡辺は後のインタビューで『ギャバン』との出会いを次のように語っている。
「画期的でしたよ。宇宙刑事というネーミングが良かった。(中略)スケールの大きな、面白いものになりそうだって思った。もちろんそれまでも一生懸命やってきたんですが、『宇宙刑事ギャバン』は一段とガンバって、さらに意欲的なものを作りたいと奮起しましたね。歌も、劇伴も」
(日本コロムビア「メタルヒーロー全主題歌集 SHINING SPIRITS」ブックレットより
そう、それまでにも数多のヒーローは存在したが、宇宙という壮大なイメージと刑事という身近なイメージをひとつにした “宇宙刑事” という、ありそうでなかったネーミングは実に新鮮であった。さらに目を引いたのは、銀色と黒色を主体とするギャバンの色調。華やかさを前面に押し出したスーパー戦隊の対極にあるような、派手さを抑えた渋いデザイン。そしてまばゆい光の中、0.05秒でコンバットスーツの蒸着を完了する鮮烈さ。戦いに臨み目が赤く発光することも、悪に対する怒りを表現して効果的であった。
また、全44話中、実に38話を担当した上原正三の、奔放でありながらヒーロー物のツボを押さえたベテランならではの脚本。そしてそれを映像化した幻想性豊かな作風の小林義明監督や、後に『スケバン刑事』3部作でも辣腕をふるうアクション派の田中秀夫監督など、個性あふれるスタッフの持ち味が存分に活かされている。
新たな伝説「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」
このように、新しいヒーロー像を作り出そうとする出演者とスタッフの熱意が画面にほとばしり、平均視聴率13%を記録、後々まで語り継がれる鮮烈な印象を残す作品となった。前述のとおり、この宇宙刑事シリーズは、続く『宇宙刑事シャリバン』『宇宙刑事シャイダー』をもって3部作の幕を下ろすが、それ以降の『巨獣特捜ジャスピオン』『時空戦士スピルバン』といった作品群と共にメタルヒーローシリーズと呼ばれ、その後紆余曲折を経て誕生した平成ライダー第1作『仮面ライダークウガ』へと繋がっていることは明記しておきたい。
2026年2月、令和の世に登場したギャバンは『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』。単なるリメイクにとどまらない、数々の新機軸が盛り込まれた作品世界からは全く目が離せない。天国から偉大な先達・大葉健二が見守る中、新たな伝説が始まっている。
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2026.05.23