ノーザンソウルがベース、スウィング・アウト・シスター「ブレイクアウト」
スウィング・アウト・シスターの「ブレイクアウト」は、80年代における最も良質なヒット曲のひとつだ。
ノーザンソウルをベースに、様々な音楽ジャンルを華やかに散りばめたこの歌は、当時のどのヒット曲よりもカラフルで、ファッショナブルで、ポップだった。
50年代のハリウッドや60年代のスウィンギンロンドンをさらりとオマージュしてみせたレトロ感覚は本当に新鮮だったし、その魅力は30年以上がたった今も色褪せていない。
ヴォーカルのコリーン・ドリューリーは、一見してモデル出身とわかる長身の女性で、天真爛漫な笑顔が魅力的だった。ミュージックビデオの中で、男性メンバーふたりにはさまれて目を左右にキョロキョロと動かすときの表情の豊かさといったら、さながらオードリー・ヘプバーンのようである。
広がるポジティヴな空気、申し分のないコリーン・ドリューリーのヴォーカル
どことなく不穏なイントロから、コリーンが曲のタイトルを口にした瞬間、明るい音色のホーンが鳴り響き、メロディーがはじけ出す。すると、ポジティヴな空気がいっぱいに広がっていくのだ。
シンセサイザーがセンス良く使われ、ベースラインが曲をひっぱる。転がるように韻を踏みながら歌うコリーンも楽しそうである。
だから、こんなに前向きな歌詞もすんなりと胸に届くのだろう。
迷って立ち止まったりしないで
今やっと突破口を見つけたんだから
自信をもって
言いたいことを言って
ここから抜け出すの
やはりこういう歌は女性に歌ってほしい。男が歌うとどうも暑苦しくていけない。その点、コリーンのヴォーカルは申し分ない。気品があり、とてもチャーミングだ。
本国イギリスではヒットチャート4位
「ブレイクアウト」は、1986年の秋に本国イギリスでリリースされ、ヒットチャートの4位まで上がるヒットとなった。アメリカでは随分後になってからヒットしたので、当時は「なにを今さら」と思ったりもしたが、久しぶりに聴く「ブレイクアウト」はやっぱり楽しく、本当にいい曲なんだなぁと感心したのを覚えている。
長く音楽を聴いていると、時々こうした曲と巡り会う。僕にとって「ブレイクアウト」は、ジャクソン5の「帰ってほしいの(I Want You Back)」や、ニック・ロウの「恋するふたり(Cruel to Be Kind)」みたいなものだ。いつ聴いても気持ちを明るくしてくれる。街角から聴こえてくれば、思わず顔を上げて微笑んでしまう。
※2017年7月12日に掲載された記事のタイトルと見出しを変更
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2021.10.03