岡村ちゃんは最初からチャーミングな天才だった。武道館で開演を40分待たされたり、インタビュー中ニコリともしてくれなかったこともあったりしたけれど、チャーミングな天才だから仕方がない。
高校は3年生で中退。レコード会社に持参したデモテープにはサイケなペイントがしてあったという。19歳で渡辺美里の1stアルバムに曲が採用されたときはまったく無名で、そのコーラス録りの空き時間に踊っていたらディレクターに見初められてデビューが決まった。
80年代の岡村ちゃんはプリンスと松田聖子が大好きだった。ステージにベッドを置いてセクシーなパフォーマンスをしたこともあった。自分が楽に出せるいちばん高い音のもうひとつ上を出そうとするから松田聖子のボーカルは切ない、という話も聞いた(好きな曲は「ガラスの林檎」)。
アルバム1枚ごとに急速にパワーアップしていき、音質やアレンジは時代に寄り添いつつも楽曲に普遍性があった。「カルアミルク」や「イケナイコトカイ」は今やスタンダードナンバーだし、現在もライブの本編ラストは「だいすき」と「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」だ。イントロが鳴るだけで鼓動が速くなる、世界の色が変わる、そんな経験をまださせてくれる人はとても少ない。名盤『家庭教師』が出たときの ”聴いた? 聴いた?” というザワザワ感も懐かしい。
岡村靖幸と吉川晃司と尾崎豊は仲がよかった、と聞いて驚く人は多いだろうか。私は遭遇したことがないが、六本木~西麻布あたりでつるんでいるところを何度も目撃されている。3人とも長身だからさぞや目立っただろう。尾崎豊の逝去後もふたりで旅行に行ったりしていた。
完全主義者で、なかなか新作が出ない。ミステリアスに見えてもライブの後の楽屋ではスマートににこやかに応対してくれる。自分のことを話すのは苦手で、人の話を聞くのが好き。そして私が知る範囲ではとても真面目な人だ。50歳を過ぎてもなおあのダンスを踊り続けるには相当の覚悟が必要なはずだ。私の好きな「Dog Days」をリクエストすると「あぁ、すぐできますよ」と言うくせに復活後はまだ一度もやってくれない。焦らされるのもベイベの大事な役割と心得て待っていよう。
2016.11.13
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