2023年 4月19日

【未唯mie インタビュー】ピンク・レディー時代とソロ活動のちょうど良いバランス

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『【未唯mie インタビュー】世界で最も完璧な曲「ハレルヤ」をカバーした理由とは?』からのつづきからのつづき

ピンク・レディー時代の貴重映像を集大成「Pink Lady Chronicle TBS Special Edition」


今回は、編集盤『MIE to未唯mie 1981-2023 ALL TIME BEST』のリリースタイミングを合わせるかのように、ピンク・レディー時代の貴重映像を集大成したDVD6枚組『Pink Lady Chronicle TBS Special Edition』も、4月に発売が控えているので、ここからは、現在の未唯mieに、ピンク・レディー時代の自分を振り返ってもらうと…。

未唯mie:何かもう、ひたすら頑張っていたみたいで、何をどうしたかったというよりは、まずシンガーとして生き延びたいという気持ちがベースにありました。何でもイイからヒットを飛ばして人気者になればいい、そんな感覚ではまったくなくて、「歌い続けていくためにはどうしたらイイの?」という気持ちで、すごく頑張っていたと思うんです。だからデビューした年なんて、早くヒットを出さないと、何か賞を取らないと翌年に残れないって一生懸命だったし、2年目は “2年目のジンクス” があるから、「この曲が終わったら倒れてもいいつもりで精魂込めて歌おうね」みたいに気合いを入れていました。メチャクチャ忙しい中だったけれど、そうやって本当に大事に精一杯歌っていた。そんな健気さの集約ですね。

ーー 主な収録は、『8時だヨ! 全員集合』『ザ・ベストテン』『日本レコード大賞』『サウンド・イン“S”』などの出演映像に、日本武道館や田園コロシアム、渋谷公会堂などのライヴ映像、ギリシャ旅行でのオフショットなど、初DVD化を含むお宝ショットが盛り沢山。



未唯mie:曲は都倉(俊一)先生、歌詞の世界観は阿久(悠)先生というように、ピンク・レディーにはかっちりプロジェクトチームが付いていました。だから衣装も明確なモノが出てくるし、振り付けもキメキメ。そうやってプロジェクトチームが作り上げたイメージをどう体現していくか。私たちはそこを強く意識していました。

ーー 当時をリアルタイムで知る方には、まさに垂涎の映像集だろうし、昭和歌謡に再評価のスポットが向きつつある今、当時を知りたい若い世代も “ピンク・レディー伝説” を追体験できる。

未唯mie:あの頃はとにかく時間がなかった…。それでもプロですから、「覚える時間がありませんでした、練習する時間がありませんでした、だからこれしかできませんーー」は、あり得ません。本当に少しの時間しかなくても、自分が皆さんの前に立てる状況をギリギリまで作っていく。その気持ちは自分たちやスタッフみんなが大事に共有していましたし、みんな相当に鍛えられたと思います。

未唯mieと日本屈指の名ドラマー、村上 ”ポンタ” 秀一との関係性


ーー ピンク・レディー時代に育まれたこのプロ意識の高さは、現在の活動でもそのまま維持されている。単にシンガーとして、だけではなく、人に見られる仕事をしているが故のモチヴェーションを保っているのだ。

マネージャー氏は言う。「最近のライヴとかで無理難題を背負わされても、かなり高いレヴェルでシッカリ答えを出してくる」と。難易度が高ければ高いほど燃えてしまうようなチャレンジ精神は、もはや崇高と言いたいほどだ。若い世代はこの熱いスピリットやプロ意識の高さを大いに学ぶべきなのだ。どんな素晴ら70〜80年を生き抜いてきたアーティストは、とにかくメンタルが強い。

例えば、村上 ”ポンタ” 秀一氏との関係性。彼は生前、日本屈指の名ドラマーとして名を馳せると同時に、若い頃は大きい声では言えぬような数々の武勇伝を持つ、とてもやんちゃな人物だった。そのポンタ氏とのデュオを演った数少ないシンガーが、未唯mieである。

ジャズシンガーならいざ知らず、元アイドルでそのステージに立ったのは、間違いなく彼女だけだろう。そもそもドラムとのデュオでまず尻込み、相手がポンタ氏でさらに尻込みーー が普通のリアクションである。そして中途半端な取り組み方では、「帰れ!」とドヤされるのがオチ。でも全力で取り組めば、温かく受け入れてくれる懐の深さを持つ人でもあった。

未唯mie:裏話になってしまいますけど、ポンタさん、私のライヴに関しては一流ミュージシャンを集めたり、いろいろサポートしてくださったんですけど、ご自分のライヴでは、なかなかお声を掛けていただけなかったんです。私より若いジャズシンガーが先に呼ばれたりしてね。「あぁ、私はそこには呼ばれないんだ。私じゃダメなんだ…」と、辛い思いをしました。でもそれでポンタさんに「アイツを引き入れたいと思われるシンガーにならなくちゃ」って奮起できた。そういう時期がありました。だからようやく呼んでもらえた時は、飛び上がるほど嬉しかったし、全身でぶつかりました。



“日テレ生まれTBS育ち” なんて囁かれるピンク・レディー


ーー そういう今の未唯mieのスピリットを形成した礎が、ピンク・レディーとして駆け抜けた4年半に詰まっている。

未唯mie:逆に40年以上も過ぎた今だから、良かったのかも知れませんね。まだ20代とか30代前半にこの映像集が出てきたら、何処かまだ生々しいというか、当時の思いが甦ってきて、観てて自分で苦しくなっちゃうことがあったかもしれない。でも今なら「よく頑張ってたよね」とか、「こんなことまでしてたんだ〜」って記憶にないようなことが映し出されて、自分でも驚いてしまう感覚があります。今なら素直に観られるし、客観視して昔の自分を愛おしく思える。そういう風に思い出に変わった頃に出してくれてありがとう、そんな気持ちですね。

ーー テレビ的には “日テレ生まれTBS育ち” なんて囁かれるピンク・レディーだから、TBSにはもっと多くの映像が眠っているのでは? という推察も。でも保存状態や著作権上の問題を含め、今も世に出せるモノには限りがあるのかもしれない。それでもDVD6枚の映像集を集成できたことは、このご時世、奇跡的なことと言えそうだ。

そして『MIE to未唯mie 1981-2023 ALL TIME BEST』の新録曲「Hallelujah《ハレルヤ》」に呼応するように、2017〜18年の最新型ピンク・レディーでDVDのエピローグを迎えるあたりも、なかなかニクイ演出である。

未唯mie:約40年の振り幅で答えが入っている感じ。それが良かった。17年のレコード大賞は都倉先生が指揮して下さったんですけど、リハーサルではアレンジの方が(指揮)棒を振ってくれたんです。でも当時のアレンジ、譜面も同じはずなのに、あの頃のノリが出てこない。70年代の独特な8ビートのドライヴ感といいますか。それなのに先生に振っていただくと、途端にあのグルーヴ、ピンク・レディー独特のキレ、サウンドになるんです。どちらも同じクリックが鳴っていて、メンバーも同じなのに、指揮だけで変わってしまう。それがすご〜く不思議でした。都倉先生の気が、ミュージシャンの皆さんに乗り移ったとしか思えない。まさに都倉マジックでした。



ーー それを成熟した今のオトナの耳で聴き比べるのも一興だろう。番組ごとに入れ替わるビッグバンドサウンドの今昔の違いを楽しめるのも、トリビア的な楽しみ方だ。

未唯mie:今の私の耳で聴いていると、そういうところばかりに意識が行ってしまいます。昔からピンク・レディー親衛隊として聴いてくれていた方々が、現在の成長した耳で、そうした違いを分かってくれたらサイコーに面白いんと思うんですよ。今も私のライヴに継続的に集まってくれているファンは、もうだいぶ耳が肥えてきていて、その辺の聴き分けができて、好みも分かれてくるんじゃないかな?

ーー 音楽的には、とうの昔にピンク・レディーを振り切っているのに、世間はまだその呪縛に囚われている。しかし、年齢とキャリアを重ねてきた中で、未唯mieはピンク・レディーとソロ活動のちょうど良いバランス感を探り当て、プロの自覚と弛まぬスピリットで前進を続けている。“心を伝えたい” を願う彼女の前では、我々リスナーの感性こそが試されているのではないか。

「Hallelujah《ハレルヤ》」感動を呼んだライブパフォーマンス!


最後に3月1日=未唯mieの日に開催された『MIE to 未唯mie 1981-2023 ALL TIME BEST』リリース・ライヴ(@目黒BLUES ALLEY JAPAN)の模様を簡単に。

いつも趣向を凝らしたライヴを観せる彼女だが、ベスト盤リリース当日のショウだけあって、セットリストはすべて『MIE to 未唯mie』からで、構成はシンプル。ただ以前の曲をそのまま再現するのではなく、彼女をよく知り、今作の新録曲「Hallelujah《ハレルヤ》」にも携わった名匠:井上鑑のプロデュース&アレンジで、現在進行形の表現にアップデイトされている。例えばオープニング「ブラームスはロックがお好き」では実際にブラームスのフレーズを交え、ヒット曲「Never」ではダイナミックなヴォーカルをフィーチャーし、サンリオとのタイアップ曲「キティとダンス!」はカッコ良い都市型ファンクに変貌。ポップな「Eternal Gift」は、先ごろ急逝した基台の作曲家バート・バカラックを意識し、というように。

しかしやはり一番の聴きモノは、本編ラストに置かれた「Hallelujah《ハレルヤ》」だ。珍しくアコースティック・ギターを手に言葉を噛みしめるように歌って、まさに感動を呼ぶパフォーマンスになった。

親子ほどのジェネレーションを超越したバンドも、実は一流ミュージシャン揃い。大阪公演が4月に控えているのでお見逃しなきよう。


(取材・構成 / 金澤寿和)


いかがでしたでしょうか? 3回に渡る未唯mieロングインタビュー。ピンク・レディー時代から変わらぬ煌めきを発しながら常に新しいことにトライする彼女のフロンティア精神をたっぷりと感じ取れたと思います。今後の展開が楽しみですね。貴重なインタビューをありがとうございました。

特集! ピンク・レディー伝説

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2023.03.06
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