「石毛礼子って知ってる?」または「旅の手帖って曲知ってる?」と訊いて「Yes」と答えた人に出会ったことが今のところない。アイドル不毛の年と言われる1981年に日本フォノグラムよりこの「旅の手帖」でデビューした石毛礼子さんは、ヤマハヴォーカルコースを経てオーディションに合格したらしく、とても美しい声で歌ってくれる。
「知らない」と答えた人に聴かせるとほぼ全ての人が「いい曲だね~」とか「歌上手いね~」という感想を漏らす。懐かし音源を収集している俺にとっては優越感を感じることを禁じ得ない瞬間でもある。この曲がリリースされた頃、俺はバイクでのツーリングに憧れる年頃の高校生だった。とある土曜日の夕方にヤマハ提供の「コッキーポップ」を観ていたら、
♪ピース・サインを投げるバイクに 今、振り向いた夏色の道♪
という歌詞が、美しくて可憐な歌声とニューミュージックっぽいメロディーとともに耳と心に入ってきた。それ以来、この曲を聴くと何故か軽井沢か清里あたりの初夏の景色を思い出して旅心というかツーリング心が刺激されてしまうようになった。かなり後で知ったのだが、彼の齋藤孝教授に"日本語の鍼灸師"と言わせしめた松本隆が作詞しているということで・・・絶妙なツボを突かれてしまったのである。
この曲には他にも堪らない歌詞が美しい歌声で歌い上げられている。誰かのブログで「1970年代の歌謡曲とニューミュージックを1980年代の解釈で融合させたような作風で、聴き終わると「質の良い音楽を聴いた」と満足感が得られる貴重な1曲です。」と書かれていたが本当にそう思う。
現在みたいに様々なジャンルがなかった時代にシンプルな融合というかシナジーと日本語の持つ美しさでもって生まれた曲は今の曲にはない心地良さを俺には感じさせてくれる。もしもカラオケで美しい女性が美しい声で歌ってくれたら泣かせるだろうな~。
旅の手帖 / 石毛礼子
作詞:松本隆
作曲:網倉一也
編曲:船山基紀
発売:1981年(昭和56年)6月25日
2016.05.24
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