SMAP一の逸材、森且行がSMAPから脱退
「森くん、SMAP抜けるってよ」そう聞いたとき、「あぁ、破竹の勢いのSMAPもここまでか…」と、思ってしまったのは私だけではないはずだ。
6人の中で、スター性、タレント性という意味では森且行がピカ一…… というように私には見えた。整った顔立ちに、小顔で長身のモデル体型。初期SMAP曲でほとんどの歌い出しを任されていた、安定した歌唱力。長い手足を活かした、しなやかなダンス。森くんこそSMAPの中の王子様という印象だった。
さらに、彼らの冠番組『SMAP×SMAP』で気がついた。森くん、料理上手で手先が器用なのだ。もともと「ビストロSMAP」は、森くんのためにつくられたコーナーだと聞いたことがある。初期のコーナー「涙のSMAP」でも、だいたい彼がWinnerだった。誰よりも早く涙を流せるのは、役者としても有望だったということでは。
もちろん、木村拓哉も目立ってはいたが、ドラマ『あすなろ白書』の印象のせいか、彼は二番手のポジションでこそ光るタイプに見えた。戦隊ヒーローものに例えるなら、アカレンジャーが森くんで、アオレンジャーがキムタク、といったところだろうか。
5人体制SMAPの一発目、リアルな嫉妬の感情を歌った「青いイナズマ」
さて、気になるのが、5人体制となったSMAPのリリース曲だ。一発目にどんな曲を持ってくるのか。森くん脱退の寂しさを忘れさせるような、やたら前向きでノリノリな曲か、しんみりしたバラード曲か、そんなとこだろう。と思っていたら、私の予想は大外れ。そう、「青いイナズマ」だ。
♪パーリュパリュウォーウォーウォー
―― というノリのいいイントロから始まるが、ここで歌われるのは生々しい “男の嫉妬”。いや、男女関係なく、恋人の心変わりを疑ったことがある人なら思い当たることがありすぎる、リアルな嫉妬の感情。特にうなってしまったのが、2番だ。
昼は冷静な顔でも
夜は胸を搔き毟るよ
君の電話が留守にかわれば
眠れなくて…
僕はジェラシーの渦の中
君のあらぬ姿思う
違う誰かを意識しながら
媚びて微笑うのさ
見苦しいほどに 問いただせたら
悲痛な気持ちも 楽になれるけど
わかるよ、わかりすぎるよ。嫉妬にかられるときって妄想が止まらないし、問いただしたいけど、問いただせないんだよね。そんなことしたら、絶対終わっちゃうからさ。
トップアイドルが “普通の男” の嫉妬を歌うって、なかなかの衝撃だった。やるなぁSMAP、しかもこのタイミングでこれをリリースか…… と感心してしまった(デビュー前のKinKi KidsがSMAPより先にこの曲をカバーしていたことは後で知りました)。
正統派アイドルにはない、ストリートのにおいがするアイドル
それまでのジャニーズ事務所のセオリーとはまったく異なるカタチでトップアイドルとなったSMAP。そういえば、近田春夫氏が週刊文春で連載していた「考えるヒット」でSMAPのことを「ジャニーさんの手の平から、こぼれ落ちた星屑のように見えた」と表現していた。
サンプリングを多用した楽曲に、ストリート感のあるダンス。ブロードウェイミュージカルをもとにした、それまでのジャニーズ流とは明らかに違う。正統派アイドルにはない、ストリートのにおいがするアイドル、それがSMAPだった。
『SMAP×SMAP』で木村拓哉が「俺たちダンスバラバラでヤバい、全然揃ってないよ」と笑いながら喋っていたのを覚えている(中居くんだったかもしれない)。いやいや、あなたたち、揃えようとすれば揃えられるのに、あえてそうしないんでしょ、とテレビ画面にツッコんでしまった。
“The Boy Next Door”。トップアイドルなのに、街角にいそうなお兄ちゃん。それがSMAPの魅力だったのではないだろうか。だから、「仕事たいへんだよ」「彼女浮気してるみたいよ」という“普通の男”のリアルをテーマにした曲がハマる。
森くんが抜けたのは残念だが、それゆえに彼らのストリート性がより際立ち、5人それぞれの魅力が鮮明になっていったように感じた。まさにピンチはチャンスである。その後の彼らのまばゆいばかりの活躍は言わずもがな。日本史上ナンバーワンのアイドルグループだったといっても過言ではないだろう。
いまだに月曜日になると、「今日『SMAP×SMAP』の放送日だなぁ」なんて、ふと思ってしまう。SMAPが解散してもう6年も経つのに、いまだにSMAPのいない世界に慣れていないのだな。
▶ SMAPに関連するコラム一覧はこちら!
2022.12.28