地獄からの使者!ジーン・シモンズの悪魔メイクとパフォーマンス
少し前に女性芸能人がブログやSNSですっぴんを公開するというのが流行った。
すっぴんといっても、まつエクだし、撮り方計算してるし、画像加工してるし…… ってわかっていながら、世間はそれなりに話題にする。
ついつい見たくなる、それがすっぴん。そこでふと思いだしたのが、キッスだ。
1970年代、キッスといえば、白塗りメイクと鋲打ちの黒皮革コスチューム。アルバムの邦題には “地獄の” がつくのがお約束だった。
特に印象的だったのが、ジーン・シモンズの悪魔メイク。ステージ上での火吹きや血を吐くパフォーマンス、長い舌と相まって、まさに地獄からの使者に思えた。
飛び込んできた大ニュース、キッスが素顔で登場する!
だが、1983年夏、キッスがメイクを落として、素顔で登場するというニュースが飛び込んできた。同級生の男子は、「なんだよ、ずっとあれでいくんじゃなかったのか」とがっかりしていたが、女子はちょっとワクワク。「いったいどんな素顔なの?見たい!」という声が多かったように思う。
中でも楽しみだったのが、★メイクのポール・スタンレー。あの仮面の下にはとんでもなく美しい顔があるに違いない! なんて、大きな期待を抱いた。
キッス側、というより日本のレコード会社も素顔公開をもったいぶる。素顔のメンバーが写るアルバム『地獄の回想(Lick It Up)』のジャケットには、わざわざメイク写真のカバーをかぶせていた。アルバムと同名のシングル曲MV、日本初オンエアーのときも鳴り物入りだった気がする。
たかがすっぴん、されどすっぴん。見せるときにはもったいぶっちゃだめ!
だが、いざMVが公開されると、なんか拍子抜け。あれれ、なんか普通のおじさん。ポールもそこそこ程度の美形……。
そりゃそうなのだ。メイクをとって、あっ! と驚く顔なんて、そうそうありゃしない。このアルバム、あまり売れなかったと思っていたのだが、アメリカではそれなりにヒットしたということを最近知った。
でも、やっぱり思う。あれはもったいぶりすぎたと。
日常から仮面をする女には、好きな男にすっぴんを見せなきゃならないときが来る。たかがすっぴん、されどすっぴん。見せるときにはもったいぶっちゃだめ、余計なハードルを上げるから。なんてことを、私はキッスから学んだ。(かもしれない)
※2017年7月4日に掲載された記事をアップデート
2020.09.18